2016 Fiscal Year Annual Research Report
アンプリコンシークエンス解析を用いた樹木集団進化に関する集団遺伝学的研究
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26291082
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舘田 英典 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70216985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 義彦 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (20353774) [Withdrawn]
手島 康介 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20447593)
楠見 淳子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (20510522)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 集団遺伝学 / 集団構造 / 自然淘汰 / 樹木集団 / アンプリコンシークエンシング / イスノキ / スギ / ヌマスギ |
Outline of Annual Research Achievements |
スギ4集団からサンプルした96個体の142核遺伝子座での塩基配列データについて、重複遺伝子座のデータを除きさらに詳しい解析を行った。ヌマスギ配列を外群とし、集団間の移住も考慮するソフトウエアTreeMixを使って分岐順序を調べたところ、屋久島集団がまず分岐し、その後にオモテスギ(静岡)が分かれ、さらにウラスギの富山と青森集団が分岐したことがわかった。興味深いことに青森集団から静岡集団への移住があったことが示唆された。また同義サイトでの塩基多様度は0.47%となり、サンガー法によって得られた藤本らの推定値0.44%と非常に近い値となった。ベイズ法に基づくBayesScanを使って地域適応淘汰候補遺伝子を探索したが、有意な候補遺伝子は見つからなかった。イスノキとシマイスノキについては、合計8集団96個体135核遺伝子座の配列データを使って主成分分析を行った。その結果これらの集団は、シマイスノキの母島、父島とイスノキの3グループに分かれることがわかった。集団の分化の程度を表す固定指数値はイスノキとシマイスノキの間で0.3、母島と父島間で0.14であった。塩基多様度の推定値は、イスノキ集団で0.48%、シマイスノキの父島、母島集団ではそれぞれ0.30%、0.28%だった。ヌマスギについては、旱魃を経験したテキサス集団の96個体を使って141核遺伝子座の塩基配列を決定し、枯損状況と塩基配列間の関連解析を行ったが、有意な関連を示す遺伝子座は見つからなかった。理論的研究では、中立遺伝子座を仮定し、Tajima’s Dと過去の集団サイズの変動との関係や、様々な固定指数の推定値が過去の集団構造や遺伝マーカーの性質によってどのように影響を受けるかを調べた。また複数集団を仮定し自然淘汰を受けるサイトに連鎖した中立サイトの遺伝子系図をシミュレートするプログラムの作成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
次世代シークエンサーを使ったスギ、イスノキ、ヌマスギの配列データはすべて得たが、その解析法に関して幾つかの問題点が生じた。その解決に時間がかかったことと、前年度のキャンパス移転により遅れが生じた。主な問題点は出力されたリードのエラーをいかに検出し除去するかと、複数遺伝子座の配列を含むリードをいかに除くか、の二点である。これらの点についてはほぼ解決法を見出したが、サンガーシークエンス法によるエラーの除去と、クリーニングされたデータを使った過去の集団構造推定解析を終了していない。このためまだ論文の投稿に至っていない。また地域分化を引き起こす自然淘汰推定に必要な2集団での淘汰サイトを含んだ系図シミュレーションプログラムの開発に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
サンガー法を使ってイスノキ・シマイスノキで少数の遺伝子配列を決定し、次世代シークエンサーデータと較べてエラー率を推定してデータクリーニングを行う。その後同義・非同義サイトに分けて塩基多様度を推定し、また地域適応遺伝子の探索を行う。更にスギ、イスノキ・シマイスノキで過去の集団構造の推定を行い論文を投稿する。理論的研究については、分岐後に移住のない集団での淘汰サイトを含んだ系図シミュレーションプログラムはできているので、移住を組み込み完成させるとともに、論文を投稿する。
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Causes of Carryover |
研究期間中にキャンパスの移転があったこと及び次世代シークエンスデータのクリーニング(シークエンシングエラーと重複遺伝子のリードの除去など)に試行錯誤があり時間がかかったため、計画遂行の遅延が生じた。このため補足実験及びデータ解析を行って論文を発表するために、次年度使用額が必要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
サンガー法による配列決定などを使った補足実験を行うための物品費、実験とデータ解析を行うための人件費、及び論文投稿費として使用する。
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Research Products
(6 results)