2015 Fiscal Year Annual Research Report
キク属植物におけるカロテノイド酸化開裂酵素遺伝子CCD4の多様性の解析
Project/Area Number |
26292014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴田 道夫 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80355718)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 園芸学 / 遺伝子 / カロテノイド / キク / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではキクの育種改良のための基礎的知見を得ることを目的として、キク属栽培種および野生種におけるCCD4遺伝子の多様性を解析した。栽培ギク58品種について、品種‘神馬’の6種類のCCD4ホモログにおいて保存されている領域をプライマーとしてCCD4の部分配列を単離し解析した。98%以上の類似性をもとにCCD4遺伝子ホモログを分類したところ37種類のホモログが得られ、うち‘神馬’の6種類を含めて多くの品種間で認められる主要なCCD4配列が8種類あることを明らかにできた。これら8種類のホモログの品種における構成について明確な品種間差が認められ、4つのタイプに分類できた。偽遺伝子を除く6種類を判別できるプライマーを設計し、満開時の花弁における発現を20品種で解析した結果、主要な発現ホモログは4種類であること、花弁で発現しているホモログについてもその構成について品種間差が認められた。 一方、無舌状花のキク属野生種イソギク32系統およびシオギク21系統のCCD4遺伝子の保有の有無について、Yoshiokaらの報告によるプライマーでは判別できなかったことから、プライマーを変えて解析したところ、予想外に全ての系統で部分断片が増幅された。さらにキク属野生種15種29系統について、品種‘神馬’の6種類のCCD4ホモログおいて保存されている領域をPCRのプライマーとしてCCD4の部分配列を単離し解析したところ、これまでの報告でCCD4ホモログを欠くとされてきた黄色の野生種においても部分配列が存在することが明らかとなった。98%以上の類似性をもとにCCD4遺伝子ホモログを分類したところ、供試した全ての野生種で‘神馬’のCCD4a-5に類似した配列の保有が認められた。さらに多くの野生種で認められる主要なCCD4配列が3種類見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画において、CCD4ホモログの配列解析については、園芸品種で毎年10品種以上、野生種で毎年10系統以上を目標としていたが、これまでの2年間で園芸品種で58品種、野生種で29系統についてと計画以上の解析ができた。加えて、園芸品種では主要なホモログが8種類あり、その構成により4つのタイプに分けることができること、野生種では主要なホモログがCCD4a-5タイプであることを明らかにできた。さらに園芸品種では花弁で実際に発現しているものが6種類あり、これについてもいくつかのタイプに分けられることができた。一方、無舌状花野生種におけるPCRによるCCD4遺伝子の保有の有無については、すべての無舌状花系統で部分配列が存在すること、加えてこれまでCCD4遺伝子配列が存在しないとされてきた黄色野生種においても部分配列が存在することが明らかとなったことから、当初計画されたPCRによる自生地等によるCCD4a遺伝子の有無の解析は困難と判断された。以上のように品種および野生種において主要なCCD4ホモログのタイプ分けがほぼ達成されるなどおおむね順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
キク品種およびキク属野生種のゲノムDNAから単離されたCCD4遺伝子ホモログは非常に多くの微小な変異を含みながらも全体としては90%を越える配列類似性を有していたことから、便宜上、98%以上の配列類似性をもとにした分類解析を行ったところ、品種および野生種系統で大まかなタイプ分けを行うことができた。また、品種では当初計画になかった花弁で発現しているホモログについても解析が進み、これについても品種の大まかなタイプ分けを行うことができた。しかし、これまでに易変性や白色度との関連については明確な傾向を見いだすことはできていない。28年度ではCCD4遺伝子が発現していない黄色の品種や野生種系統を加えて、これまでに明らかにできたCCD4遺伝子ホモログのタイプと花色との関連について解析を進める。野生種については無舌状花野生種における保有の解析に替えて、二倍性野生種におけるCCD4遺伝子ホモログと花色発現との関係を明らかにし、機能をもつCCD4遺伝子ホモログの解析を進める。
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Causes of Carryover |
当初計画していた無舌状花キク属植物の自生地における収集を見合わせたこと、CCD4遺伝子ホモログの配列解析に要する経費が当初予定より大きく軽減できたことおよび27年度後半において微量高速遠心機の不調で実験が若干滞ったことなどが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究室で保有している微量高速遠心機が昨年度末に故障がちになり実験が滞ったことから、28年度に更新購入する予定である。また、無舌状花キク属植物の自生地における収集に替えて、白色および黄色キク属二倍性野生種の全長CCD4ホモログの解析を行い、キク属野生種における花色発現のメカニズム解明に取り組む。以上の取り組みを行うことで未使用額は問題なく執行可能である。
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