2015 Fiscal Year Annual Research Report
食品中機能性成分の動態解明を目指した代謝物の高度利用
Project/Area Number |
26292072
|
Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
生城 真一 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50244679)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
室田 佳恵子 近畿大学, 理工学部, 准教授 (40294681)
榊 利之 富山県立大学, 工学部, 教授 (70293909)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ポリフェノール / 抱合代謝物 / 酵母 / UDP-グルクロン酸転移酵素 / 硫酸転移酵素 / メチル基転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請年度については昨年度に引き続き以下の二つの課題を並行して進め、相互における進捗状況に応じて協力体制を柔軟に運用した。 課題1:高度利用を目指した食品中機能性成分代謝物の新規製造法の確立:本申請年度においてはこれまでに遺伝子組み換え酵母を用いた代謝物製造の基盤技術に基づき、体内動態解明に寄与できる高度利用を目指した新規製造法の確立を目的とした。(1)イソフラボン代謝物であるエクオールのグルクロン酸抱合体の大量調製をおこない、数十ミリグラムの高純度代謝物を得ることに成功した。NMR測定による構造決定をおこない抱合化位置の同定を可能にした。(2)ケルセチン硫酸抱合体の位置特異的な合成法の確立をおこなった。(3)酵母発現系を用いてメチル化ケルセチン(5種)の抱合体について網羅的な代謝物生成パターンの解析をおこなった。 課題2:腸肝循環を模倣した食品中機能性成分の体内動態解析系の構築:今年度は主にリンパカニュレーションラットを用いたフラボノイド投与後の吸収代謝動態の解析を行った。昨年度の培養細胞を用いた実験において、ケルセチン>イソラムネチン>ヘスペレチンの順に代謝が起こり易いことが示唆されたため、動物レベルにおいての比較を行ったところ、いずれのフラボノイドもほとんどが代謝物として血中およびリンパ液中に出現し、代謝のされやすさには明確な違いが見られなかった。しかし、吸収のされやすさにおいては、ケルセチン>ヘスペレチン>イソラムネチンの順となった。また、Caco-2細胞にイソラムネチンを与えた場合には、基底膜側への輸送量はケルセチンと同程度であるものの、細胞層に留まる量はケルセチンよりも多い傾向がみられたことから、イソラムネチンは体内に取り込まれにくい可能性が示された。これらに加えて、フラバノン構造とフラボノール構造では吸収経路に違いがある可能性が示されており、引き続き検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1:高度利用を目指した食品中機能性成分代謝物の新規製造法の確立:これまでの発現系に加えて新規分子種の構築により、各種抱合体(グルクロン酸抱合、硫酸抱合、メチル化抱合)について当初の計画通り効率的な生産系を用いて、エクオールのグルクロン酸抱合体、ケルセチン硫酸抱合体を数十ミリグラムのスケールで合成することに成功した。また、これら発現系の組み合わせによるヘテロ修飾フラボノイド生成系により複数の部位が抱合代謝を受けた代謝物を得ることを確かめている。当初の目的のひとつであった安定同位体標識の代謝物については予備検討は実施したものの合成にはいたっておらず次年度の課題として残されている。
課題2:腸肝循環を模倣した食品中機能性成分の体内動態解析系の構築:今年度は主にリンパカニュレーションラットを用いたフラボノイド投与後の吸収代謝動態の解析をおこない、体内における代謝物の同定する系を確立した。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題1:高度利用を目指した食品中機能性成分代謝物の新規製造法の確立: 当初の計画通り、酵母菌体を用いた代謝物生産において、細胞外への抱合体の排出が律速となる場合が想定される。菌体内で生じた抱合体排出を促進するために、エネルギー依存的な能動輸送に関与するABCトランスポーター遺伝子を代謝酵素と同時に発現させた酵母株を構築する。前年度までに構築した代謝酵素発現株(CYP,UGT,SULT,COMT)を用いてマイクロウェルプレートでの反応系を構築することで、既知あるいは新規ポリフェノール類の代謝物解析をおこない網羅的な代謝プロファイルデータを作成する。また、13C-グルコースを用いた安定同位体標識代謝物についても小スケールでの合成条件を確立して精密分析に用いることを目指す。
課題2:腸肝循環を模倣した食品中機能性成分の体内動態解析系の構築:初年度の再構成培養系を用いた動態解析の成果をふまえ、長期摂取により体内に蓄積しやすい代謝物(腸肝循環により何度も体内に吸収されるため)を同定し、蓄積しやすい標的臓器を明らかにする。フラボノイドの作用機序の1つとして、標的部位における脱抱合があげられる(アグリコンの方が抱合代謝物よりも抗酸化性等が強いため)。そこで、蓄積臓器における脱抱合反応の起こる可能性やどのようなときに脱抱合が起こるのかを明らかにする。このとき、合成された抱合部位の異なる代謝物あるいは抱合基の異なる代謝物を臓器ホモジネートとインキュベートすることで、脱抱合に対する感受性を解析することにより詳細な反応機構を明らかにできる。さらに、臓器細胞における吸収、排泄に関わるトランスポーターと合成代謝物との親和性をin vitroで解析することで同じアグリコンであっても代謝修飾により動態が異なるケースが生じるかを検証する。
|
Causes of Carryover |
抱合体合成に必要な試薬が想定よりも少量で合成可能となったため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度合成予定である化合物の購入に使用予定ある。
|
Research Products
(11 results)
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Whole cell-dependent production of equol metabolites using genetically engineered budding yeast.2015
Author(s)
Ikushiro S, Kataoka M, Nishikawa M, Yasuda M, Hamada M, Nakajima N, Murota K, Uehara M, Kamakura M, Toshiyuki S
Organizer
ICoFF2015
Place of Presentation
Souel, Korea
Year and Date
2015-11-22 – 2015-11-25
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-