2015 Fiscal Year Annual Research Report
樹木精油の香気成分による健康増進を切り口とする森林医薬アロマセラピーへの応用
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26292093
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
光永 徹 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (20219679)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交感神経 / ノルアドレナリン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度の研究実績を以下に示す。 1.動物を用いた体内時計調節効果評価では既に、CBA/Nマウスを用いて回転輪型活動記録装置により睡眠-覚醒サイクルを測定する評価系に従った。吸入方法については、密閉されたボックス内で、マウスを飼育し、一定濃度のスギ精油香気成分を、ボックス内に導入する方法にて行う。本検討にて、精油吸入による体内時計にどのような影響を与えるかを調べた。その結果、ほとんどすべての精油において睡眠が優位に働くことが示された。 2.カテコールアミン類の定量は精油香気成分を吸入したマウス血清中および肝臓中の総コレステロール、トリグリセライドを定量し、脂質代謝に及ぼす効果とノルアドレナリンを含むカテコールアミン類を電気化学検出器を備えたHPLCで定量し、自律神経活動との相関性を調べた。しかしながら電気化学検出器によるノルアドレナリンの検出感度が低く定量には至らなかった。 3.交感神経活動の測定においては、体重約300gのWistar系雄ラットをウレタン麻酔下で開腹し、交感神経を露出する。活動測定する交感神経は精巣周辺の白色脂肪支配のものと肩胛骨周辺の褐色脂肪支配の2種類について行い、神経枝を切断し中枢側から神経フィラメントを分離して電極にセット、遠心性神経活動を磁気テープに記録した。さらにパワーラボシステムを用いて、5秒ごとのスパイク数を連続カウントし、経時変化を記録した。樹木精油画分を100倍、1000倍、10000倍に蒸留水で希釈撹拌し、サスペンジョンの入ったビーカーにラットの鼻を近づけ匂い刺激を10分間行った後の神経活動を計測した。その結果、ほとんどの精油で交感神経活動が低下し、副交感神経の亢進が観察された。特にスギ葉精油の効果が顕著であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの血清および肝臓中のノルアドレナリンの定量が出来ていないが、検出器を変更することで改善可能と考える。それ以外はほぼ順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
スギ葉精油で交感神経を顕著に抑制することが判明したため、今後はスギ葉精油に含まれるテルペノイド成分のうちどの精油が交感神経活動抑制に寄与するか、また副交感神経の亢進に寄与するかを調べる。成分分画にはシリカゲルカラムクロマトグラフィーや分取HPLC等を駆使して、出来るだけ単一成分を単離する。また、各成分の混合組成や割合などを考慮して、複数分子の自律神経活動コントロールに関して考察する。 人の実験に関しては、動物実験で得た副交感神経活性化成分を用いて、その香気刺激による心拍・脳波・POMSによる精神評価を行うことにより、動物実験との関連性を調べ、総合的に樹木精油、特にスギ葉精油による人や動物の精神・生理に及ぼす効果の一考察を行う。
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Causes of Carryover |
27年度に計画した動物実験において、予測していた実験結果が、当初予定していた実験動物数の半数で出たために、動物実験経費が大幅に削減できた事が理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の計画で計上している、ラット交感神経および副交感神経活動の測定において、当初は神経活動測定のみを予定していたが、体温測定および褐色脂肪組織の温度変化測定が出来るセンサーを購入し、香り成分の吸入による脂質代謝関連因子の探索項目を増やす予定でありその経費に使用する。
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