2014 Fiscal Year Annual Research Report
赤城大沼の水圏生態系における放射性セシウムの動態解明
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26292100
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Research Institution | Gunma Prefectural Fisheries Experiment Station |
Principal Investigator |
久下 敏宏 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (20450380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薬袋 佳孝 武蔵大学, 人文学部, 教授 (10157563)
角田 欣一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (30175468)
野原 精一 独立行政法人国立環境研究所, その他部局等, 研究員 (60180767)
岡田 往子 東京都市大学, 工学部, 准教授 (60287860)
森 勝伸 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70400786)
鈴木 究真 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (80450386)
小野関 由美 群馬県水産試験場, その他部局等, 研究員 (40650916)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / 赤城大沼 / ワカサギ / プランクトン / 湖底質 / 湖水 / 化学形態別分析 / 移行量 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島第一原子力発電所事故に伴う放射能汚染が長期化の様相を呈している赤城大沼において、水圏生態系に注目した放射性セシウム(Cs)の動態を解明するとともに、初動およびモニタリングに資する環境調査手法の確立を目指すことを目的として、平成26年度は以下の研究を推進した。 漁業権魚種であるワカサギの出荷自粛が継続されていることから、湖水、セストン(主に動植物プランクトン)、水生植物、魚類、湖底質の放射性Cs濃度を定期的に測定し、放射能汚染の推移を経時的かつ空間的に把握した。湖水・湖底質間の放射性Csの分配係数は、表層で1.0×10^5(L/kg)と、霞ケ浦(茨城県)などの他の湖沼と同じレベルであった。2015年3月に湖24ヶ所で底泥コアを採取した。季節毎(春季循環期、夏季停滞期、秋季循環期、冬季停滞期)に湖心の表層、中層、底層で採水し、粒子態と溶存態に分別して放射性Csを測定したところ、夏季と冬季の湖水停滞期では、水温躍層よりも下部の底層において溶存態放射性Cs濃度が上昇していた。一方、春季と秋季の湖水循環期では、水温躍層は崩壊しており、濃度はほぼ一定であることが明らかとなった。特に全循環期の放射性Csの挙動を捉えるために、9月から10日おきに8回、深度別に20L×2試料を採水して放射性Csを定量するとともに、水温、pH、溶存酸素、懸濁物質も測定した。湖底質、プランクトン、魚類の放射性Csの化学形態別分析を行い、湖底質は難溶態が、湖内生物は可溶態が多く存在していることが分り、生物が可溶態の放射性Csを摂取している可能性が示唆された。さらに、湖底質や湖水を投入した70L容水槽でヒメダカを飼育し、放射性Csの移行量を算出した。また、5000L容水槽でニジマスを用いて放射性Cs含有配合飼料の給餌試験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤城大沼における放射能汚染の推移を経時的かつ空間的に把握するための、湖水、セストン(主に動植物プランクトン)、水生植物、魚類、湖底質の放射性Cs濃度データが当初の予定に沿って順調に集積できた。 各種調査や実験より、湖底質からの再溶出の可能性は極めて低いこと、一方、閉鎖性水域が生態間の放射性Csの移動に影響することから、研究目標の一つである湖底質からの放射性Csの再溶出の実態を把握することができた。採取し底泥コアの表層泥の放射性Cs濃度をゲルマニウム半導体検出器により測定中である。湖底質や湖水を投入した水槽(70 L)に加え、湖水中に隔離水界を設置し予備実験を行った。水深度別(0、8、15m)の水温、pH、溶存酸素、懸濁物質の時系列変化から、夏季に存在する水温躍層が秋季に崩壊し、物質の上下混合が確認されたことで全循環を特定するとともに、放射性Cs濃度の変化も観察できた。放射性Cs濃度に関して、ワカサギでは漸減傾向、植物プランクトンでは値が高いが減少傾向、動物プランクトンではほとんど減少していないことなどが明らかとなった。また、5000L容水槽でニジマスに放射性Csを含有した配合飼料を給餌し、放射性Csの魚体への蓄積および魚体からの排出状況を経時的に分析している。
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Strategy for Future Research Activity |
目的達成のため、これまでの成果を踏まえた上で各種調査や実験を実施する。 湖水・湖底質間の放射性Csの分配機構解明を目指して、湖底質の鉛直方向深さ、抽出時間、試料質量などの影響に関するより詳しい検討を行う。放射性Csの移行量を算出するため、前年度から継続して放射性Csの湖底質と生態系の化学形態別分析を行い、蓄積量と排出量の推定を試みる。底泥の放射性Csのインベントリーと濃度コンターマップを作成し、これまでの変化を明らかにする。さらに、鉛―210法による湖底の堆積速度を調査し、多角的に解析する。 湖水全循環期の物質移動と放射性Cs(粒子態と溶存態)の動態をより詳細に解明する。季節毎に湖心の表層、中層、底層で採水し、粒子態と溶存態に分別して測定する。また、豪雨時の流入出水も適宜測定する。湖水中に隔離水界を設置し、ゼオライトや栄養塩添加による環境影響を評価する。 各調査項目のモニタリングを継続するとともに、ワカサギの放射性Cs濃度が大幅に減少していない要因の一つとして考えられる餌料プランクトンについて、放射性Cs濃度の動態をより詳しく調査する。ニジマス以外の魚種に放射性Csを含有した配合飼料を給餌し、放射性Csの魚体への蓄積および魚体からの排出状況をニジマスと比較する。
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Causes of Carryover |
試料採取はおおむね順調に終了したが、その後の分析等が一部残っているため。また、予定していた打合せや学会がスケジュール調整上、また、現地調査が天候等により一部実施できなかっため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度の試料を優先的に分析するとともに未実施の打合せや調査等を補完し、今年度の研究を予定どおり推進して成果に結び付ける。
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Research Products
(11 results)