2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26292124
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大内 雅利 明治大学, 農学部, 教授 (60147915)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真弓 明治大学, 農学部, 助教 (00445850)
大江 徹男 明治大学, 農学部, 教授 (60409498)
川手 督也 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (80355263)
粕谷 美砂子 昭和女子大学, その他の研究科, 准教授 (80369446)
藤井 和佐 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (90324954)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 農村女性 / 女性政策 / 都道府県農政 / 農村女性起業 / 農村女性の社会参画 / 家族経営協定 / 農業女子プロジェクト |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究実施計画で課題とした次の4点について、項目ごとに実績概要を記す。 第1に、全体関連図の作成については、農林水産省・都道府県・市町村・地域社会・農家女性の各レベルで、サーベイ的な面接調査と資料収集を行った。農林水産省では経営局女性就農課の担当者から農業女子プロジェクト事業の説明を受けた。それは若い後継世代の農村女性を対象とし、これまでの農村女性政策とは異なることを得た。 第2に、都道府県農政については、山口県、長野県、長崎県、福岡県、北海道、鹿児島県の担当部局を対象に面接調査と資料収集を行った。都道府県は従来のように全国で一律の政策を進めておらず、自らの農政方針に従った女性政策を実施していた。ただし女性政策の対象としての親世代と子世代(後継世代)の間のギャップは大きく、政策の転換については各都道府県で模索していた。 第3に、農村女性政策の個別政策については、特に①女性起業と6次産業化の関連、②女性農業委員を検討した。①6次産業化は女性起業からの展開という側面があるとともに、女性起業とは別の新しい要因がみられた。②女性農業委員については、農業委員に就任するルートとして選挙と推薦があり、就任ルートの相違がその後の活動に違いをもたらしていた。 第4に、農家女性の基本データの整理については、都道府県を単位とした全国レベルのデータを収集し、その分析を行った。その結果によれば、女性起業・女性農業委員・家族経営協定の3項目間の相関は少なく、都道府県によって女性政策の重点項目が異なること、またそれらが組み合わされて系統的・総合的にに女性政策が行われているわけではないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は準備段階として、既存研究の整理と予備調査の実施を行った。計画に予定されていた4点について、項目ごとに達成度を説明する。第1に、全体関連図の作成については、農林水産省・都道府県・市町村・地域社会・農家女性の各レベルで、それぞれ概要的なインタビューを行い、当初の研究内容を確認できた。ただし今後は農業女子プロジェクト事業のように、親世代と若い後継世代のギャップにはさらに注意して、全体関連を再編する必要がある。 第2に、都道府県農政については、山口県、長野県、長崎県、福岡県、北海道、鹿児島県の1道5県のインタビュー調査を行った。都道府県ごとの女性政策の相違は大きく、農村女性政策のカギを握る重要な主体であることを確認した。今後はさらに新しい都道府県を対象に調査を進め、女性政策の類型化とその要因を探求する必要がある。 第3に、農村女性政策の個別政策については、女性起業と6次産業化の関連、女性農業委員を検討した。家族経営協定については達成度としては不十分であった。また女性政策の新しい方向性として農業女子が登場し、これについては今後さらに追及する必要がある。 第4に、農家女性の基本データの整理については、都道府県を単位とした全国レベルのデータを収集したが、今なお十分とは言えない。また長野県の市町村データについても、来年度はさらに精力的に整理していかなければならない。 以上のように、全体としてみれば、調査の基本的な枠組については、おおむね妥当であることを確認した。来年度からは、本年度に得た知見を加えて、全体関連図を再整理し、実態調査に入る。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しているので、研究計画の基本的な変更はない。今後の推進方策は計画通りである。変更があるとすれば、全体関連図における、重心のおき方である。平成26年度の予備的な研究調査によれば、都道府県農政の役割の重要性と農村女性の世代間の相違という2点については、重要な焦点として計画当初以上に解明する必要がある。 第1に、都道府県農政における女性政策については、都道府県間の比較をさらに推し進める。これは都道府県を単位とした全国レベルのデータによる統計的な分析と、インタビューによる事例調査の両者によって進める。農村女性政策の類型化とその要因の解明がここでの課題である。 第2に、長野県を対象に、市町村レベルでの実態調査を進める。ここでは市町村行政と県行政が行う農村女性政策と、政策の対象となる農村女性の実態、そして政策と女性の関係という、3点が研究推進の方向となる。同じ長野県内においても、例えば女性の社会参画が進む地域と進まない地域があり、それは地域農業のあり方によって大きく左右される。そのため市町村農政と地域農業が女性政策にどのように関係するのかは、今後の重要な課題である。 第3に、農家女性の実態調査がある。特に親世代と後継世代とでは、農家女性のライフコース、ライフスタイル、農業経営との関わり、農家家族での位置付、など多くの点で異なる。これらは農村女性の政策を立案するときに、大きく影響する。政策の内容・方向ばかりでなく、政策の実施過程(その一つとして女性の組織化)においても、きわめて重要である。 第4に、以上を踏まえ今後の農村女性政策の方向性を提案する。
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Causes of Carryover |
平成24年度の研究計画において予定していた現地調査が、参加者と現地の双方において、都合がつかなかったためである。 長野県の現地調査は3回を予定していたが、研究代表者と研究分担者の日程調整が不備に終わったためである。本研究はそれぞれ得意分野を有する分担者による共同研究であり、現地調査に全員が参加することによって、より実りある成果を得ることができる。 都道府県調査については、都道府県の日程が重なることが多かったためである。議会の開会など、ほぼ同じ日程で都道府県行政が動いているため、希望通りに多くの都道府県を調査することが出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画としては、アンケート調査の実施を希望している。本年度の調査によれば、次年度は農村女性の実態調査が不可欠である。またその実施について県の担当者と相談した結果、アンケート調査の可能性が指摘された。アンケート調査は費用にもよるが、可能な範囲で実施を検討したい。
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