2015 Fiscal Year Annual Research Report
潜在性感染症としての牛ウイルス性下痢ウイルス対策:牛群間伝播様式の解明と防疫法
Project/Area Number |
26292160
|
Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
田島 誉士 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (90202168)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 俊彦 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (40709771)
萩原 克郎 酪農学園大学, 獣医学群, 教授 (50295896)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 牛ウイルス性下痢ウイルス / BVDV / 持続感染 / PI / バルク乳検査 / 子宮内感染 / 入牧検診 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、北海道内の酪農地帯である複数箇所の地域において域内全域を対象とした網羅的なバルク乳検査を実施し、牛ウイルス性下痢ウイルス(BVDV)持続感染(PI)牛の摘発をした。道北地方および道東地方で新たな調査対象地域を加え調査範囲を拡大した。継続検査をしている地域では、BVDV清浄状態が確認され、新規に検査対象となった地域では摘発率が高かった。このことから、本症が潜在性感染症であることが改めて確認され、継続検査は有効な防疫対策法の貴重な情報となる可能性が示唆された。 バルク乳検査が利用できない牛群の汚染状況把握のために、非泌乳牛を受託放牧している公共牧野への入牧牛の検査を、前年度に引き続き実施した。これらの検査結果に基づき、摘発されたPI牛の出身牛群内に潜伏するPI牛の有無を調査して、BVDV汚染牛群を特定し、BVDV感染症が潜在性感染症として流行している危険性を啓蒙した。さらに、牛群内で流行しているBVDVのウイルス遺伝子の相同性を基に、PI牛のウイルス伝播様式を解析して侵入ルートを特定した。すなわち、BVDV主要蛋白であるE2の遺伝子をトレーサーとして、母牛の感染地と授精日をもとに感染源を検索した。一公共牧場内で1頭のPI牛を感染源とする流行が発生し、子宮内感染が生じた妊娠牛が下牧して出身農家でPI牛を産生し、農家内で新たな流行を起こすというBVDVの伝播循環様式の構図が明らかとなりつつある。感染経路の分析と、すでに子宮内に潜伏してしまったかもしれないBVDVの検索を同時進行で解析することは、PI胎子の予測を可能とすることができ、生産獣医療学的観点からも重要であると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、持続感染(PI)牛発生農家における同居牛の免疫状態の比較解析は、BVDVの流行拡散様式が明らかになるにつれ、その必要性に疑問が生じてきている。すなわち、PI牛産生頻度の多少は牛群の免疫状態というより感染機会が重要でありそうな様子が感じられた。前年度からの調査成績がかなり蓄積されてきており、さらに科学的根拠を肉付けしていく必要性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
バルク乳検査と公共牧野への入牧牛検査を引き続き継続し、BVDV汚染の拡大様式を牛の移動を基に検討する。前年度から特定されているBVDV汚染牛群のPI牛摘発検査の結果を踏まえてPI牛が摘発された時点における、同居妊娠牛の移動履歴および飼養状態、当該農家における外部導入牛の危険性などについての調査の精度を上げる。 さらに、牛群内で流行しているBVDVのウイルス遺伝子の相同性を基に、PI牛のウイルス伝播様式を解析して新入ルートの特定をめざす。すなわち、BVDV主要蛋白であるE2の遺伝子をトレーサーとして、母牛の感染地と授精日を基に感染源の検索を行う。感染源がPI牛との直接接触とは考えづらい場合も想定されるので、人や物の介在、授精や治療など獣医療行為による伝播、野生動物による媒介についても引き続き検討する。野生動物としては、近年北海道ではその増加が問題となっているエゾシカが、牛との食性が類似していることから主な検索対象とする。
|
Causes of Carryover |
発生農家牛群の、サイトカインやケモカインのプロファイルによる免疫学的な検討による、子宮内感染成立機序の解明のための分析について再検討し始めており、その経費の執行が停滞しているから。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度から引き続き、フィールドを対象としたBVDV検査に基づくPI牛の探索を実施しながら発生状況を把握し、BVDVの浸潤程度と伝播拡散様式を推定していくことから、検査用消耗品費の占める割合が高くなる。また感染源特定のために、分離ウイルス性状の解析に基づく遺伝子解析が必要になることが予想され、その分析費用の必要性も考えられる。試料収集、情報収集および交換、成果発表などのための旅費支出も想定されるため、研究分担者も含めて支出を予定している。
|
Research Products
(9 results)