2014 Fiscal Year Annual Research Report
標的タンパク質の機能とダイナミズムの制御に基づく難病多重薬理療法の構築
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26293025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 祐一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (90164798)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多重薬理 / ケイ素 / 核内受容体 / 薬理シャペロン / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の中核である多重薬理活性化合物創製に向けて、シーズ化合物の創製研究を鋭意進め、その多様性の拡充、各項目における高活性化、項目同士の結合とそれに関わる構造要因ないし構造活性相関の解析(多重薬理分子プロファイリング)を行ってきた。 構造的側面からは、分子内にケイ素原子を導入した各種生理活性分子の創製に成功し、従来汎用してきたマルチテンプレートであるジフェニルメタン骨格に多様性と特徴を付与することが出来た。炭素ホモログ体との生物活性ならびに物理化学的ないし計算科学的比較により、ある程度の分子プロファイリング情報も獲得できた。多重薬理分子プロファイリングについては、特にフェナンスリジノン誘導体について、各種核内受容体ならびにグルコシダーゼや抗C型肝炎ウイルス活性まで幅広い生物活性について解析を行い、一定の解答を得た。 活性的側面からは、これまでのファーマコロジカルシャペロン(PC)活性ならびにプロテインノックダウン活性に加えて、酵素活性促進化活性を新たに計画しつつある。PC活性に関しては,特定の脂質トランスポーターについて人為的二重変異体の作製により新規な抗脂質異常症活性化合物のスクリーニング系を確立し,これに基づきいくつかのシーズ化合物が得られた。さらに、エピジェネティクスに関わるSIRT等の酵素に対しても、良好な新規阻害剤の開発に成功した。 上記の構造的ならびに活性的側面からの研究同士を融合した成果の一例として、ジフェニルケイ素型の抗エストロゲン様活性化合物の創製が挙げられる。主作用はエストロゲン生合成に関わるステロイド硫酸エステル加水分解酵素阻害であるが、従来の阻害剤では,阻害に伴う酵素反応産物がエストロゲン活性を示す欠点を有していた。ケイ素の導入により、酵素反応産物が抗エストロゲン活性を示す分子設計に成功し、本活性化合物の多重薬理化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造的側面、活性的側面の双方において、その多様性の拡充研究においては当初の計画を凌駕している。具体例としては、(1) ケイ素誘導体の創製成功例として新規なレチノイン酸受容体関連オーファン受容体リガンドや多重薬理型抗エストロゲン様活性化合物、チュブリン重合阻害剤の創製が、(2) 標的分子の多様性拡充についてはSIRT阻害剤やBRD阻害剤の創製成功例があげられ、当初の計画以上の成果であると評価している。 標的分子阻害の組み合わせによる多重薬理分子の創製についても、上述の多重薬理型抗エストロゲン様活性化合物の創製に代表されるように、順調に研究成果を挙げていると評価している。薬理シャペロンについても、同様である。 一方で、当初計画したプロテインノックダウン活性を組み込んだ多重薬理活性化合物については、標的分子の選択が難しく、進捗の度合いがやや低い。また、本課題申請時では具体的な計画の記述に至っていなかったが、酵素の活性促進化活性を組み込んだ多重薬理活性化合物の創製研究にも取り組んだ。このサブテーマは残念ながら、酵素活性促進課活性化にかかわる構造要求性がかなり厳密なようで多重薬理化に成功していない。 以上から、全体としての自己点検評価を「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の自己点検評価中、成功裏に進捗している項目はそのまま継続・拡張する。 上記の自己点検評価中、進捗の度合いが低い、あるいは成功していないとした項目については以下のように進める。 (1)酵素活性促進化活性の対象としてAMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)を選択し、AMPK活性化・アセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)阻害二重薬理活性化合物の創製を計画したが、前者の活性の構造要求性が高いため、(a) 単純にAMPK活性株とACC阻害部を連結されるハイブリッド分子設計、ならびに、(b) メタボリックシンドロームを念頭に、活性的な到達目標を同一にする、パーオキシゾーム増殖活性化剤受容体(PPAR)活性化・ACC阻害二重薬理活性化合物に分子設計をシフトさせ、同じコンセプトで研究を進める。 (2)プロテインノックダウンの組み込みについては、HaloTagを導入した系を構築し、HaloTag融合タンパク質のプロテインノックダウンを細胞レベルで検証し、多重薬理化の制限となる基本情報の獲得に努める。同時に、既にプロテインノックダウンに成功している化合物について、そのリガンド部分をアンタゴニスト化する、確度の高い分子設計によって多重薬理分子を創製し、その効果を検証する。
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Causes of Carryover |
3月末日開催の薬学会の旅費額が不明確であったことと、平成26年度中に発表を予定していた国際学会について、その開催時期が成27年度4月開催のものがより相応しく、そちらを選択したことが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記補填と外国旅費、ならびに物品費に当てたい。
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[Journal Article] Design, synthesis and structure-activity relationship studies of novel sirtuin 2 (SIRT2) inhibitors with a benzamide skeleton2015
Author(s)
Sakai, T., Matsumoto, Y., Ishikawa, M., Sugita, K., Hashimoto, Y., Wakai, N., Kitao, A., Morishita, E., Toyoshima, C., Hayashi, T., Akiyama, T.
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Journal Title
Bioorganic & Medicinal Chemistry
Volume: 23
Pages: 328-339
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Structure-activity relationship study of non-steroidal NPC1L1 ligands identified through cell-based assay using pharmacological chaperone effect as a readout2014
Author(s)
Karaki, F., Ohgane, K., Fukuda, H., Nakamura, M., Dodo, K., Hashimoto, Y.
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Journal Title
Bioorganic & Medicinal Chemistry
Volume: 22
Pages: 3587-3609
DOI
Peer Reviewed
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