2015 Fiscal Year Annual Research Report
標的タンパク質の機能とダイナミズムの制御に基づく難病多重薬理療法の構築
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26293025
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橋本 祐一 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (90164798)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生理活性物質 / 核内受容体 / ケイ素 / プロテインノックダウン / 構造展開 / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度も平成26年度に引き続き、本研究課題の中核たる多重薬理化合物創製に向けて、[I]シーズ化合物創製研究(本研究課題において構造または活性的に新規な化合物の探索、多様性の拡充)、ならびに[II]プロテインノックダウン法の高度化、に関わる研究を中心に展開した。 [I]については、(1)アデニン骨格型新規ブロモドメイン阻害剤の創出、(2)ケイ素含有ROR(核内レチノイン酸受容体関連オーファン受容体)インバースアゴニストの創出、(3)トランスアクチべーション/トランスリプレッション作用を併せ持つLXR(核内肝臓X受容体)リガンドの創出、に成功した。(3)については両活性の分離とそれに関わる構造活性相関に対してある程度の解答を得ることもできた。 [II]については、本研究課題で開発しているSNIPER分子を用いるプロテインノックダウン法の適応範囲を大幅に拡充すべく、同法を、生理的・薬理的リガンドを持たない標的タンパク質に応用展開すべく鋭意、研究を遂行した。具体的には、ハロタグ(HaloTag)を導入した人工ハイブリッド蛋白に対する応用、ならびに、凝集型タンパク質のプロテインノックダウンを念頭に置いたβ-シート親和性色素を応用したSNIPER分子の創製である。特に後者は、ハンチントン病患者由来細胞中において、当該疾病の原因とされる、凝集性変異ハンチンチンのプロテインノックダウンに成功していることを示す初期データを得ており、当該疾病の治療戦略の提案に発展しうると考えている。 なお、平成26年度に計画的に繰り越した経費につき、平成26年度実績報告書の該当項ならびに平成27年度交付申請書に記載したとおり、平成26年度の研究成果を中心に、平成27年4月15-17日にスペイン/グラナダで開催のIWBBIO2015にて連携研究者が発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生理活性シーズ化合物の探索創製研究については、新規ブロモドメイン阻害剤の創製並びに構造活性相関研究の進展など、大旨、当初の予想どおりの進展と考えている。また、プロテインノックダウン法の応用適応拡大研究についても、ハロタグ(HaloTag)蛋白への応用は論理的であり、かつ、予想に範囲である。 しかし、プロテインノックダウン法の凝集性タンパク質への応用に関しては、かなり挑戦的で、従来の様々な領域における情報(ユビキチン化自体の異常の指摘、等)を総合すると、その成果についてはかなり悲観的・否定的な予想であった。今回、ハンチンチンのみの例ではあるが、「凝集性変異ハンチンチンのプロテインノックダウンが、ハンチントン病患者由来細胞内で進行」出来ている可能性を示すデータが得られたことは、当初の計画以上の成果である、と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
生理活性シーズ化合物の探索創製研究、プロテインノックダウン法、多重薬理化合物創製研究すべてについて、交付申請書に記載した計画に変更を加えることなく遂行する。 化合物の構造展開においては、ケイ素以外の元素(リンやセレンなど)の利用も計画に加えたい。 加えて、特に上記項目で「当初の計画以上に進展している」とした根拠である、「凝集性蛋白」のプロテインノックダウンについては、(1)ハンチンチンについて、そのプロテインノックダウンの確定、メカニズム解析を経た後、(2)他の病原性凝集性タンパク質への適応拡大、を新たな研究計画に追加し、鋭意進めたい。 研究テーマが拡充・拡散する傾向にあるが、その一方で、実際の実験を担う大学院生は減少傾向にあるので、テーマ内各項目を厳選しつつ、効率的に研究を進めたい。
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Research Products
(23 results)