2015 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン構造制御によるヘルパー/キラー系列決定機構の解明
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26293109
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
谷内 一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, グループディレクター (20284573)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クロマチン構造 / T細胞分化 / 転写因子 / 系列決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
胸腺内でのヘルパー/キラー系列機構は外部環境信号(ここではTCR信号)を細胞内運命決定に変換する制御機構を理解する為の優れたモデルと捉えられる。本研究課題では、Thpok遺伝子の発現の有無がヘルパー/キラー系列の中心的な制御であることに着目し、Thpok遺伝子座上のシス制御領域の機能が3次元的なクロマチン構造変化により制御される分子メカニズムを解明することを目的とする。これまでに新規技術であるinsertion ChIP(iChiP)法により10kbという至近距離でのゲノム領域相互作用の計測を行ってきたが、本年度の成果としてThpok遺伝子座はCD4ヘルパー系列特異的に制御領域間が近接した位置に配置される高次クロマチン構造をとることを確定した。また種々のBcl11b変異マウスの作製と解析により、Bcl11b転写因子のC末端Znフィンガー構造を介して、胸腺細胞分化初期過程にThpok遺伝子のクロマチン構造をT細胞型にprimingされることが重要であることを見出した。また遺伝子改変マウスの表現型解析、ChIP-seq等の解析により、ゲノムオーガナイザーとして知られるSATB1が正の選択後の胸腺細胞の系列決定に重要なThpok、Runx3、FoxP3、CD4、CD8遺伝子の発現制御に必須であることを見出した。またCd4遺伝子座をモデルとした解析から、3次元的なクロマチン構造を介した制御機構のみならず、各シス制御領域上での特異的な制御が行われていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Thpok遺伝子座でのクロマチン構造変化についてCD4ヘルパー系列特異的に制御領域間が近接した位置に配置されるクロマチン構造変化が起こること、その変化には胸腺細胞分化初期過程でのBcl11b転写因子によるprimingが必須であることを見出した。この成果は胸腺細胞分化を特徴づけるTCR信号を介した選択機構に備えるために、T細胞系列決定因子であるBcl11bを介した事前準備が必要でるという新たな概念を提起する成果と評価する。またSATB1がThpok、Runx3、Foxp3、CD4、CD8といった正の選択後の胸腺細胞の系列決定に重要な遺伝子座内の制御領域の活性化を介し胸腺内でのT細胞プールの形成の中心的な分子であることを見出したことも重要な成果である。TCR信号下でThpok遺伝子発現のスイッチとして働く機構を同定するために、iChiP法によりCD4細胞、CD8細胞特異的にThpok遺伝子制御領域に会合する分子の同定を進めつつある現状も加味すると、本研究課題は概ね順調に進んでいると考える
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Strategy for Future Research Activity |
Bcl11b転写因子のC末端Znフィンガー構造を介した制御機構が重要であることは明らかにしたこれまでの成果より、この制御機構の実体を明らかにしていく。具体的には生体内で野生型及び変異型Bcl11bをビオチン化出来るマウスを作製済みであることから、生化学的な精製、免疫沈降等によりBcl11bに会合する分子を同定していく。また2つのThpok遺伝子座内のサイレンサーとエンハンサーという2つの制御領域を起点とするiChiP法を行うことでCD4細胞、CD8細胞特異的に両領域に会合する生体分子を同定していく。既に機能性非コードRNAを含んだ各制御領域会合分子の候補を幾つか選定している。 SATB1に関してもGFP融合SATB1タンパク、生体内ビオチン化SATB1タンパクを発現するマウスの作製により、SATB1の核内局在、会合分子の同定を行なっていく。また3C/4C、Hi-C, FISH法等の解析法を取り入れ、SATB1変異マウスではクロマチン構造変化にどのような異常が生じているのか明らかにする。
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Causes of Carryover |
これまでの成果からBcl11b転写因子のC末端領域を介した制御が重要であることが判明し、本研究課題の成否はこの制御機構の解明に大きく依存する状況となった。その為にはBcl11b転写因子のC末端領域と会合する分子の同定が必須であり、平成27年度の研究により生体内で野生型及び変異型Bcl11bをビオチン化出来るマウスは作製したことから、平成28年度はBcl11b転写因子のC末端領域と会合するタンパク質、RNAの網羅的な検索を行う為にプロテオミクス解析。次世代シークエンス解析の予算を確保していく必要が生じた。 またSATB1に対しても新たなGFP融合SATB1タンパクを発現するマウス系統の維持と繁殖、SATB1変異マウスを含む遺伝学的資源を活用した網羅的解析を順調に行うたねの予算を確保するためには、平成27年度の予算を繰り越すことが賢明であると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した予算は主に以下の2項目に使用する計画である。 1. Bcl11b転写因子のC末端領域と会合する分子同定の為のプロテオミクス解析、次世代シークエンス解析の実施費用に充てる。 2. GFP融合SATB1タンパクを発現するマウス系統の維持と繁殖、ATB1変異マウスを含むこれら遺伝学的資源を用いた網羅的解析(ChiP-seq、4C, iChIP-seq)及びその結果を確認するFISH法を実施の費用に充てる。
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] Central Role of Core Binding Factor β2 in Mucosa-Associated Lymphoid Tissue Organogenesis in Mouse.2015
Author(s)
Nagatake T, Fukuyama S, Sato S, Okura H, Tachibana M, Taniuchi I, Ito K, Shimojou M, Matsumoto N, Suzuki H, Kunisawa J, Kiyono H.
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Journal Title
PLoS One.
Volume: 10
Pages: e0127460.
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Identification of a novel lymphoid population in the murine epidermis.2015
Author(s)
Almeida FF, Tenno M, Brzostek J, Li JL, Allies G, Hoeffel G, See P, Ng LG, Fehling HJ, Gascoigne NR, Taniuchi I, Ginhoux F.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 5
Pages: 12554
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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