2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26293136
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
栗原 俊一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60215069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 仁 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (80133099)
吉岡 正和 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 名誉教授 (50107463)
松本 浩 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器科学支援センター, シニアフェロー (90132688)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物理蒸着 / 照射損傷 / ブリスタリング / その場観察 / 分光 / 残留ガス分析 / 格子欠陥 / 中性子標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
BNCT(Boron Neutron Capture Therapy)は細胞レベルで癌を狙い撃ちできる治療として注目を集め、原子炉での治療実績を受け加速器ベースのBNCT開発が進んでおり、実際に治療の入り口に差し掛かっている。 研究の目的は加速器BNCTの標的開発に関するもので、大きい熱負荷と水素脆化という極限環境で使用される標的を残留放射能ゼロの物質で構成する究極の低放射化加速器BNCTに資することである。 標的に照射された陽子ビームは固体中の電子を捕獲し金属中では水素原子となる。結晶中に限界まで水素原子を固溶させ蓄積する方法と、物理蒸着等の方法で柱状構造を形成し、固体表面、あるいは粒界に水素を拡散させて固体内の格子欠陥等での水素分子の生成を防ぐ方法が考えられるが、本課題では、Be の構造そのものをその製造時に制御し、水素を拡散、放出し易いようにしようとするものである。このために、物理蒸着法(PVD)によりBeの膜を形成した試験片を作製入手した。あわせて、実機での観察を想定し、放射線の高い標的から5m程度離れても観察が行える陽子ビームによる照射損傷の評価方法を開発した。これはレーザー光を用いた独創的なものである。 研究を進めるうちに、固体中の水素原子の挙動に対する知見を得ることの重要性が認識され、照射中の試料からの脱ガス、ならびに照射中の試料表面からの発光の情報を取得することを考え、これらを可能とする観察装置を考案、設計し、主要検出部を入手した。 これらにより、当初2次元熱伝達係数測定装置の開発を検討していたが、これは別の方法により情報を得ることとし、前述の検出部を組み込んだ照射損傷の評価方法を開発した。 BNCT装置の開発はその加速器の建設が当初の計画の昨年夏に完成の予定から遅れているため、類似の実験が行える加速器(J-PARCのLinac開発用試験加速器)を用いることを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子標的の試験試料に関してはBe の構造そのものをその製造時に制御し、水素を拡散、放出し易いようにしようとするものを物理蒸着法により試験的に作成した。 試料の評価方法に関しては、特に標的試料中での水素挙動に対して研究を集中し、3つの方法、すなわち1)レーザー反射光を用いた照射損傷検出、2)標的試料表面からの脱ガス検出、3)標的試料表面からの発光の分光、で、中性子場でその場観察が出来る方法を検討、考案し、装置として開発した。 当初、偏光を用いた標的表面の観察を検討していたが、高放射線場である標的近傍に光学系を組むことが困難であることから、標的、検出部間を離さざるを得なかったが、通常のハロゲン光源では数m離れた場所では光量が不足して偏光での観察は困難であった。したがって、ブリスタリングの特徴と組み合わせてブリスター内部の反射を利用した反射光による検出法を検討し、光源としてHe-Neレーザーを用いることにより、長距離からのブリスタリングの観察を可能とした。 この装置を用いてJ-PARCのLinac開発用試験加速器、あるいはBNCT装置により陽子ビーム照射による照射損傷の検出を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子標的の試験試料に関して、物理蒸着による成膜の条件(基板下地温度等)の最適化を行う。目標とする要素としては、下地とBeとの付着強度、Beの柱状構造の大きさ、長さ、密度、および有効表面積である。これらは相互に温度との相関を持つと考えられるので、どのような試料の特性が得られるか期待されるが、最終的には下地とBeとの熱伝達係数が重要なパラメーターとなると予想される。最終的な判断はこれによると考えられる。 開発したレーザー反射光を用いた照射損傷検出装置を用いてJ-PARCのLinac開発用試験加速器、あるいはBNCT装置により陽子ビーム照射による照射損傷の検出を行う。 これらにより、中性子生成のために標的に照射された陽子ビームが最終的に中性子を生成するまでにどのような過程を経るか、その挙動を知ることを目標とする。
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Causes of Carryover |
当初開発を予定していた2次元熱伝達係数測定装置を取得する情報を別の方法で得ることとしたため、ならびに予定していた長距離偏光顕微鏡に対して構造を簡略化できたため、経費を節約できた。 標的試験試料作成は平成26年度行った試料作成ではあくまで試験的に作成するということで経費が発生しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
標的試料中での水素挙動に対して検出器を導入するため、真空装置の部品代を確保する。あわせて標的試験試料作成に用いる。当初の予定より試料作成のパラメーターを変えた試料を増やす可能性が出てきたため、それに対応する。
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Research Products
(7 results)