2016 Fiscal Year Annual Research Report
レジリエンス・エンジニアリング理論の医療の質・安全における実用化に関する研究
Project/Area Number |
26293157
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中島 和江 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (00324781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 京太 横浜市立大学, 大学病院, 准教授 (00287731)
南 正人 大阪大学, 医学部附属病院, 准教授 (10240847)
芳賀 繁 立教大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10281544)
五福 明夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20170475)
原田 賢治 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30376462)
橋本 重厚 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40221494)
藤野 裕士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50252672)
北村 温美 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (60570356)
田中 宏明 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (60581113)
綾部 貴典 宮崎大学, 医学部, 講師 (70295202)
小松原 明哲 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80178368)
中島 伸 独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (80501402)
上間 あおい 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (90728007)
徳永 あゆみ 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (60776409)
田中 晃司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70621019)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レジリエンス・エンジニアリング / 医療の質・安全 / 産業安全 / 複雑適応系 / 先行的対応 / 変動 / 調整 / 創発 |
Outline of Annual Research Achievements |
複雑適応系では、システムを構成する個々の要素が相互関係に関する比較的単純なルールに基づいて行動し、その結果システムの挙動にある種のパターンが創発し、そのような複雑さがシステムの柔軟性や適応力の源となっていることが知られている。今年度は、医療者の高濃度塩化カリウム注射液の投与方法、医師の外来患者に対する投薬行動、専門医の糖尿病患者に対する指導に着目し、各システムの挙動に見られるパターンを同定し、それらを形成する個々の医療者の行動ルールを明らかにした。 各システムの挙動に見られたパターンは、プレフィルドシリンジ型高濃度塩化カリウム注射製剤の変則的取扱い、ポリファーマシー、HbA1c値を中心とした患者指導であった。これらに共通に見られた行動ルールは、「患者を治療する」「効率的に行う」「裁量や権限の範囲内で対応する」の3つであった。各システムの有する裁量や権限を超えるような方策(例えば、医薬品投与システムのイノベーション、処方内容を患者・家族、薬局、診察医が把握できる仕組み、患者の生活環境を踏まえた疾病管理支援体制)を導入することにより、医療の質・安全に関する創発的課題を解消できると考えられた。 また、医薬品投与プロセスに関するシステミック分析を行い、システムを安定的に制御するためには、外的・内的変動を吸収するような機構が必要であることを明らかにした。特に、薬剤部では、薬剤師の安定動作マージンの確保対策や調剤鑑査のような重要機能のバイパス防止が不可欠と考えられた。 さらに、レジリエンス・エンジニアリングを実践導入するためのフィールドガイドの作成にも着手した。データ収集方法の合理性、データソースの選択方法、データ収集方法、データ分析方法、分析結果の解釈と提言の5のフレームワークを明確化することが、現状分析やシステム解析に有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に予定していた「①個の行動におけるシンプルルールとシステムの挙動におけるパターン創発の同定」、「②医薬品投与プロセスのシステミック分析」、「③レジリエンス・エンジニアリングのフィールドガイドのプロトタイプ作成」については、ほとんど計画どおりに実施した。これらの成果は、Resilient Health Care Workshop 2016(デンマーク)で発表するとともに、医療、工学、心理学、産業安全等の学会でも報告した。また、国内外の多領域の学会の招待講演においても研究で得られた知見を発表し、またテレビ番組(NHK)でもレジリエンス・エンジニアリング理論の解説を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度(平成29年度)は本研究の最終年度となるため、レジリエンス・エンジアニアリング理論を用いた医療における安全マネジメントのモデルケースをまとめる。また、国内外での学会発表や論文発表等を通じてピアレビューを受ける。さらに、同理論の専門家を海外から招聘して公開総合シンポジウムを開催し、成果発表を行うとともに研究成果の有用性等について検討を行う。
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Causes of Carryover |
今年度の研究計画の一部であった「手術チームの会話分析」の一環として、術者等の脳波をパッチ式脳波センサーで測定することを計画していたが、本センサーは開発されて間もないこともあり、その生産・納品が遅れたため、本センサーに関係した部分の研究の進捗が遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に繰り越して実施する。
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Remarks |
・中島和江. 私見卓見「成功から学ぶ医療安全」. 日本経済新聞. 2016年7月21日朝刊.
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