2014 Fiscal Year Annual Research Report
心臓リモデリングとその変容による心不全発症・進展の分子機構解明
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26293190
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
尾池 雄一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (90312321)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心不全 / Angptl2 / 生理的心肥大 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究成果として、ヒトおよびマウスの心臓組織におけるANGPTL2発現の局在解析で、心筋細胞および心臓組織の微小血管にANGPTL2が発現していることを明らかにした。脂肪細胞やマクロファージでANGPTL2を高発現するaP2-Angptl2 Tgマウスの心臓機能が、野生型マウスに比べ低下し、生化学的にも病的な心肥大を呈することを見出した。aP2は脂肪細胞やマクロファージに加え、心臓組織の微小血管において発現することが報告されており、実際に野生型マウスの心臓に比べTgマウスの心臓でANGPTL2が高発現していることを見出した。以上より、心臓組織におけるANGPTL2の高発現が心肥大・心不全の病態発症の原因となる可能性が示唆された。一方、Angptl2 KOマウスでは、野生型マウスに比べ心肥大が認められるものの心機能は良好で、生化学的所見も含めて、Angptl2 KOマウスの心臓が生理的な心肥大を示すことが明らかとなった。さらに、Angptl2 KOマウスを用いて圧負荷心肥大・心不全モデルを作製したところ、野生型マウスに比べて心機能低下が抑制され、心不全病態の増悪が軽減されることを見出した。また、野生型マウスに生理的心肥大を誘導するような適度な運動負荷を行うと、心臓組織におけるAngptl2の発現が減少することも見出した。以上より、心臓組織におけるANGPTL2発現減少が生理的な心肥大を引き起こし、逆にANGPTL2発現上昇が病的な心肥大を引き起こすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、心肥大・心不全の発症とANGPTL2発現との連関を明らかにした。また、心臓組織においてANGPTL2を発現する責任細胞が心筋細胞や心臓組織の微小血管であることも見出している。さらに、Angptl2 KOマウスの心臓が生理的な心肥大を示すことを見出し、その分子機構としてANGPTL2シグナルが心筋細胞のAktの安定性を制御している可能性を見出している。以上のように、本研究計画は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型マウスおよびAngptl2 KOマウスを用いて圧負荷心肥大・心不全モデルを作製し、術前、代償期、非代償期の各心臓サンプルを用いて ANGPTL2下流シグナルを網羅的に解析し、心肥大・心不全病態に関連するANGPTL2シグナルを同定する。我々は既にANGPTL2の下流でAktシグナルが心肥大・心不全病態において重要な役割を果たしていることを見出していることから、Aktシグナルを中心に解析を進める。また、心筋組織におけるANGPTL2の発現誘導機構を明らかにするため、ラット心筋培養系を用いてAngptl2発現誘導機構の解析を行う。平成26年度において作製した心臓特異的Angptl2 Tgマウスを用いて、圧負荷心肥大・心不全モデルを作製し、心臓におけるANGPTL2高発現が生理的応答としての心臓リモデリングとその変容による心不全の発症に及ぼす影響を解析する。また、圧負荷心肥大・心不全モデルでは、Angptl2 KOマウスが野生型マウスに比べて心不全病態の増悪が軽減されることから、心筋組織におけるAngptl2遺伝子ノックダウンが心不全の新規治療法となる可能性についても検討する。
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Research Products
(29 results)