2014 Fiscal Year Annual Research Report
パーキンソン病におけるα-シヌクレインの構造及び機能解析
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26293210
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
望月 秀樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90230044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 悟 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10354888)
八木 寿梓 鳥取大学, その他部局等, 助教 (10432494)
八木 直人 公益財団法人高輝度光科学研究センター, その他部局等, 研究員 (80133940)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経内科学 / 神経変性疾患 / パーキンソン病 / 構造解析 / アミロイド線維 / 神経科学 / 生物物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はおおむね順調に進んでおり,現在までに以下のような実績をあげている. アルツハイマー患者剖検の老人斑やパーキンソン病患者剖検脳のレビー小体に対する構造解析は,当初試料調整がかなり難しいと考えられたが,改良を重ねることで,ほぼ予定通りに実施されている.BL43IRにおける顕微赤外分光による患者脳切片の測定法はほぼ確立し,現在レビー小体の2次構造解析についての論文を投稿中であるが,これは実際の脳のレビー小体に対する直接的な構造解析としては世界初の報告になるものと思われる.BL40XUにおけるマイクロビームによる回折実験では,脳切片の調整法に工夫が必要であり,現在も試行錯誤を重ねながら測定を行っている.ここまでの結果からは老人班やレビー小体はこれまで考えられていたアミロイド線維の塊とは少し様相が異なる可能性が示唆されている. 我々は大腸菌由来のリコンビナントのα-シヌクレインに加えて,pNATB complexを共発現させることでN末端がアセチル化されたα-シヌクレインを精製することに成功した.また,ヒト赤血球からの精製技術もさらに向上し,これら3種類のタンパクに対するX線小角散乱実験を行っており,これらの構造や凝集能の相違についての論文の投稿準備を進めている. 中性子散乱実験については,α-シヌクレインの単量体とアミロイド線維の構造の揺らぎについての測定を行い,現在論文投稿中である. また,超音波照射によるアミロイド線維形成促進反応を用いた凝集測定装置(商品名HANABI)を使用したα-シヌクレインの凝集阻害剤のスクリーニングもひとまず完了しており,いくつかの候補物質を特定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者剖検脳に対する顕微赤外分光やX線回折実験は当初試料調整がかなり難しいと考えられたが,改良を重ねることで,顕微赤外分光の測定法についてはほぼ確立し,顕微赤外分光によるレビー小体の2次構造解析についての論文を投稿中である. 小角散乱実験には大量のタンパクを必要とするが,α-シヌクレインのWildtypeに加えて,N末端がアセチル化されたα-シヌクレインやヒト赤血球から取り出したα-シヌクレインの精製法も確立しており,予定よりも早いペースでこれらに対する小角散乱実験を行っている. 中性子散乱実験もJ-PARCにおける予定外の停止期間などの問題も生じたが,代わりに海外で実験を行うなどして,ほぼ予定通りに進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
老人斑やレビー小体といった脳内凝集体に対する顕微赤外分光の手法はほぼ確立したことから,今後は脳幹型レビー小体と皮質型レビー小体の比較や複数症例の観察を行いながら,神経病理学分野における構造解析のツールとしての確立も目指していく. 小角散乱実験については,α-シヌクレインが非特異的な会合体を形成している可能性を排除するため,限外ろ過カラムを通した直後の測定を行えるシステムを構成していく予定である.また,臨床医学の観点から家族性パーキンソン病のα-シヌクレインの変異のひとつであるG51D変異タンパクについての測定を行うことで発症機序解明の手がかりとしたい考えである. 全体的にはほぼ順調に研究は進んでおり,大部分についてはこのまま推進していく.ただし,当初計画していた内容で,少しずつ得られてきている結果から今後不要と思われるものについては中止も含めて再検討し,軌道修正した上で最終年度につなげていきたい考えである.
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Causes of Carryover |
SPring-8やJ-PARCなどの大規模実験施設を利用した研究は,概ね順調に進んでいるが,同施設での実験の機会はそれぞれのビームラインで年に数回程度と限られており,26年度の実験で得られた成果をまとめ上げるためには,27年度においても同施設での実験を継続する必要があるから.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
必要経費は主に大量に必要とされるタンパクの精製や脳切片の特殊な試料調整に必要な抗体,試薬,カラムなどの消耗品を購入およびSPring-8の施設使用にかかる自己負担金(成果非占有のためビームライン使用量はなく,共用の消耗品費の負担のみ)である.一方,現在SPring-8のBL40B2において,限外ろ過カラムを通しながらX線小角散乱測定行うシステムを開発中であり,これに必要な備品の購入に経費の一部を使用したい. また,27年度はこれまでの成果を学会などで積極的に発表していく必要があると考えており,研究費の一部をこれらにかかる旅費として計上したい.
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Research Products
(1 results)