2014 Fiscal Year Annual Research Report
革新的細胞チップ技術を用いた感染症に対する個の免疫医療の創成
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26293237
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
村口 篤 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (20174287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 裕幸 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 准教授 (60186210)
小澤 龍彦 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10432105)
小林 栄治 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (70459733) [Withdrawn]
浜名 洋 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (90551549)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リンパ球チップ / Tリンパ球 / T細胞受容体 / 免疫治療 / 個の免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我々が独自に開発した「リンパ球チップ」という革新的なリンパ球単離技術を基盤として、抗体およびT細胞受容体(TCR)cDNAを迅速に単離し、感染症に対する「個の免疫医療システム」を確立することを目的としている。平成26年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 1)リンパ球チップ法のための、新規マイクロウエルチップの開発を目的として、磁気盤をチップに配置した磁気チップに、磁気ビーズをコートした細胞を播種する方法で、細胞導入率を飛躍的に上げることができた。本年度は、1個1個の細胞の回収率の向上に挑戦した。具体的には、富山県工業技術センターと連携し、各ウエルから細胞を下面に吸引する方法、あるいは上方から磁気を利用して吸い上げる方法の両者について検討した。下面から細胞を吸引する方法については、技術上ハードルが高いが、上方から細胞を吸引する方法に進展が見られた。 2)抗原特異的T細胞の単一細胞の検出法(T-ISAAC)の確立を目的として、直径10μm のウェルに1個づつT細胞を播種し、チップ上で細胞をPMA/ionomycinで刺激し、23万個のT細胞のサイトカイン産生を単一細胞レベルで検出できる方法を確立している。今回、サイトカイン産生T 細胞を、各ウエルから細胞を1個づつ回収し、遺伝子解析を行った結果、α鎖、β鎖の遺伝子配列を効率良く決定することができた。 3)次に、抗原特異的CD8+T細胞をT-ISAACで検出するために、MHC クラスⅠ分子を発現したミセルを作製し、チップ内で抗原刺激をしたが、バックグランドが高く、再現性が取れなかった。ミセルの作成法にも問題があった。そこで、CD8+ T 細胞自身のMHC クラスⅠ分子に抗原ペプチドを負荷し、チップ内で刺激したところ、抗原(ペプチド)特異的にサイトカイン産生細胞を検出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、我々が独自に開発した「リンパ球チップ」という革新的なリンパ球単離技術を基盤として、病原菌特異的ヒトBリンパ球とTリンパ球を効率良く同定し、抗体およびT細胞受容体(TCR)cDNAを迅速に単離して、「個の免疫医療システム」を確立することである。平成26年度の研究成果としては、まず、新規マイクロウエルチップの開発を目的として、磁気盤をチップに配置した磁気チップに磁気ビーズをコートした細胞を播種する方法で、細胞導入率を飛躍的に上げることができている。次に、1個1個の細胞の回収率の向上に挑戦し、富山県工業技術センターと連携して、各ウエルから細胞を下面に吸引する方法、あるいは上方から磁気を利用して吸い上げる方法の両者について検討し、上方から吸引する方法に進展が見られている。以上の理由により、達成度は概ね順調に進展していると言える。 次に、抗原特異的T細胞の単一細胞の検出法(T-ISAAC)の確立を目的として、各ウェルに1個づつT細胞を播種し、チップ上で細胞をPMA/ionomycinで刺激し、23万個のT 細胞のサイトカイン産生を単一細胞レベルで検出できる方法を確立している。今回、サイトカイン産生T細胞を、各ウエルから細胞を1個づつ回収し、遺伝子解析を行った結果、α鎖、β鎖の遺伝子配列を効率良く決定することができている。また、抗原特異的CD8+T細胞をT-ISAACで検出するために、CD8+ T 細胞自身のMHC クラスⅠ分子に抗原ペプチドを負荷し、チップ内で刺激したところ、抗原特異的にサイトカイン産生細胞を検出することができている。以上の理由により、達成度は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】取得TCRの機能解析法の改良を行う。これまでは、取得したTCRの機能解析は、発現ベクターに組み込んだTCR遺伝子を、レトロウイルスベクターを用いてTCR欠損、CD4あるいはCD8遺伝子を導入したT細胞株(TG40)に遺伝子導入し、TCR/CD3分子を膜に発現させて、ペプチドを発現させた抗原提示細胞あるいはMHC/ペプチドで刺激し、活性化マーカーCD69の発現あるいはIL-2産生をFACSで測定していた。本研究ではTG40細胞以外の細胞株(Jurkat等)に外来性TCRを発現させて、細胞株が直接、細胞を傷害する実験系を確立し、機能解析のさらなる短縮と向上を目指す。
【2】可溶化TCR作製法の確立を行う。TCRは抗体と同様に抗原に特異的に反応するが、抗体と異なり膜型蛋白であるために、T細胞に発現させる形でしか扱うことができない。それを可溶化型にすることでモノクローナル抗体と同様に病変部位の検出や治療に応用できる可能性がある。また、TCRの親和性は抗体に比して100倍以上低いため、標的細胞に結合させる場合には、TCRをマルチマー化する必要がある。そこで、安定で高機能、高親和性の可溶化TCRの開発を行う。具体的には、sTCR(V領域とC領域を含む2量体)とscFv-TCR(単鎖可変領域からなる1量体)の2種類のTCR遺伝子を構築する。この遺伝子を大腸菌あるいはCHO細胞などに発現させ、可溶化TCRを得る。
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Causes of Carryover |
リンパ球チップの改良が予定以上に進んだため、チップや試薬の購入が予定よりも少なく済んだ。また、成果発表を予定していた国際学会に日程の都合で参加できなかったため、外国旅費を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
改良されたチップでT-ISAACの研究がこれまで以上に迅速に進むことが予想され、チップや試薬を予定より多めに購入する。また、学会等に積極的に参加し、研究成果を発表する。
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Research Products
(13 results)