2015 Fiscal Year Annual Research Report
MODYにおける膵ベータ細胞の代償性インスリン分泌の惹起経路の解明
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26293246
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
武田 純 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40270855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 幸男 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (10323370)
飯塚 勝美 岐阜大学, 医学部附属病院, 講師 (40431712)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 遺伝 / 若年 / インスリン分泌 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
若年MODY を生じるHNF 転写因子や成人2型糖尿病に関するSHP は下流のインスリン分泌を複雑に制御するので、逆に上流の高インスリン関連分子群を濃縮するために、LRH-1 経路からHNF-SHP下流全域を比較解析してキー分子を同定することを目的とした。LRH-1欠失マウスとSHP欠失マウスの表現型を解析して、発現変化分子をスクリーニングする戦略を取ってきた。まず、26年度の結果から、LRH-1 欠失マウスが耐糖能異常を示さず軽度肥満を呈したことから、遺伝子変異や多型がヒトの病態に同様の影響を及ぼすかを検証した。その結果、プロモーター領域に認めた多型が、2型糖尿病の発症と境界有意を示した。レポーターアッセイとゲルシフトアッセイの結果から、トランス転写因子の結合の有無が転写レベルの変化に関与することが判明した。一方、ヒトでは同変異は体重と関連を認めなかったことから、マウスとヒトでは異なる結果となった。一方、LRH-1で遺伝子発現が制御されるSHPの欠失マウスを作成して同様に表現型の解析を試みた。ヒトでは、胎生期インスリン過分泌を介して若年肥満の原因となり、成人以降の2型リスクを増大させることを既に報告しているが、マウスでは、驚くことに、機能欠失では高脂肪食負荷で対照群に比して肥満抵抗性となった。耐糖能には変化を認めなかったので、LRH-1欠失マウスと同様にSHP欠失マウスもヒトとは異なる結果となった。大規模ISHによる膵島特異的な発現を示すmRNA群の集積は一段落しており、5,066個の遺伝子のうち、膵島特異的な11個をSNPスクリーニングの対象とした。発現が顕著な47遺伝子について562エクソンを解析した結果、605個のSNPを同定した。347個は新規であり、112個はミスセンス変異であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MODYの原因遺伝子がコードする一連のHNF転写因子のヘテロ欠失マウスは、ヒトのように糖尿病を発症しないので、何らかの代償機構があるとの仮説が本研究の出発点であった。LRH-1ヘテロ欠失マウスは軽度肥満と高インスリンを呈したので、本経路を中心にキー分子や経路の探索を行ってきた。一方、ヒトにおけるLRH-1遺伝子の解析では、プロモーター領域の多型が2型糖尿病の発症と有意に関連したが、種々の摂餌負荷を行ってもマウスでは耐糖能異常は認められなかった。更に、ヒトの症例ではSHP異常は軽度肥満と高インスリンを生じるが、疾患モデルとしてヘテロ欠失マウスを作成したところ、ヒトの病態とは逆に肥満抵抗性の表現型が得られた。従って、特定の分子や経路によるインスリン分泌の代償性だけではなく、種差や他の代謝能が相当関与している可能性が示唆された。当初の仮説にそぐわない成績が得られているので、仮説の再点検と問題点の抽出を行いながら研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
MODY遺伝子の欠失マウスに加えて、LRH-1とSHPの欠失マウスもヒトで見られる病態を表すことはできなかった。この結果について、2つの可能性が考えられる。第一に、ヒトとマウスの種差が想定以上に大きかったこと、第二に、耐糖能異常を発症しなかったのは、インスリン分泌能の代償性だけでなく、末梢組織のインスリン感受性や肝臓の糖放出能が関与した可能性がある。28年度は主として後者の可能性を追求する。一連のMODYの原因遺伝子がコードするHNF転写因子は肝臓で胆汁酸受容体の発現制御など脂質代謝において重要な役割を果たしている。LRH-1もSHPと共にコレステロール代謝においてCYP7A1を制御しているが、LRH-1は転写調節のヒエラルキーにおいて最上位に位置することから関与経路は無数にあると考えられる。そこで、肝臓の糖脂質代謝の関与を解析するためには、ヒエラルキーの下流に位置するSHPに焦点を当てると効率的と思われる。
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Research Products
(10 results)