2015 Fiscal Year Annual Research Report
ケロイドの免疫細胞治療を目指して!~制御性T細胞は炎症&線維化を抑制する~
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26293379
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村尾 尚規 北海道大学, 大学病院, 助教 (90706558)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟山 恵美 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10533630)
山本 有平 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70271674)
小山 明彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374486)
七戸 龍司 北海道大学, 大学病院, 医員 (30640346)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ケロイド / 免疫 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ケロイド組織における免疫バランスの破綻の原因等について検証した。 (1)ケロイド患者/非ケロイド患者において、CD4陽性T細胞に含まれる制御性T細胞(Treg)の血液学的なポテンシャルの差を検討した。凍結保存した単核球から分離したCD4陽性T細胞を通常の方法で刺激し活性化した後、フローサイトメトリーでCD4陽性T細胞に占めるTregの割合(FOXP3陽性、CD127陰性細胞)を解析した。ケロイド患者と非ケロイド患者の両者間で、Tregの割合に差は認めなかった。 (2)①正常線維芽細胞、②ケロイド線維芽細胞をそれぞれ培養した培養上清を回収した。培養上清中のTGF-β、IL-6の濃度はケロイド線維芽細胞が正常線維芽細胞より高値を示した。健常人由来の単核球から分離したCD4陽性T細胞をこれらの培養上清中で刺激した。刺激後のCD4陽性T細胞に占めるTregの割合をフローサイトメトリーにて解析し、培養上清間での差について解析を行った。現在、培養条件を検討し、解析を継続している。 (3)線維芽細胞-T細胞共培養モデルを用いて、CD4陽性T細胞との共培養後のケロイド線維芽細胞の変化について検証した。共培養後のケロイド線維芽細胞ではI型コラーゲン mRNA、TGF-β mRNAの発現の低下が認められた。この結果よりCD4陽性T細胞のサブユニットの一部がケロイド線維芽細胞に対して抗線維化作用を有することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標である、ケロイド患者と非ケロイド患者の血液学的ポテンシャル、Treg誘導ポテンシャル等の差について検討した。単核球より分離し刺激したCD4陽性T細胞に占める活性化したTregの割合に差は認めなかった。免疫バランスの破綻が局所で生じることを支持する結果であった。 また、線維芽細胞-T細胞共培養モデルを用いて、共培養後のケロイド線維芽細胞の変化について検証した。共培養後のケロイド線維芽細胞のI型コラーゲン、TGF-βのmRNAレベルでの低下が認められたことから、CD4陽性T細胞のサブユニットの一部によるケロイド線維芽細胞に対する抗線維化作用を示すことができた。免疫バランスの破綻によるCD4陽性T細胞のサブユニットの割合の変化がケロイド線維芽細胞のコラーゲン産生に影響を及ぼし得ることを示唆する結果であった。 ケロイド線維芽細胞によるTregの誘導抑制についても検討を開始しており、平成27年度の達成度としておおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
ケロイド組織においてTregが抗炎症作用、抗線維化作用を有することを証明し、ケロイドの細胞治療の可能性を探る。 (1)Tregの抗炎症作用や抗線維化作用について、線維芽細胞とCD4陽性T細胞との共培養モデルやin vitroサイトカイン刺激試験にて検証する。作用機序として、Tregより分泌され、免疫抑制性にはたらくIL-10がエフェクターT細胞(Teff)に対して抑制効果を示すかついても検証する。①:ケロイド/ 非ケロイド患者の線維芽細胞およびCD4陽性T細胞において、それぞれIL-10で刺激後に、FOXP3や、TGF-β、IL-6、IL-17、I型コラーゲン、α-SMA等のmRNA発現をreal time PCRにて定量化し、解析する。また、IL-10がTeffに対して抑制効果をもつか、Tregへの分化促進やTh17分化への抑制効果の有無についてフローサイトメトリーで解析する。②:上記①の結果をふまえ、ケロイド線維芽細胞とケロイド患者由来のCD4陽性T細胞または活性化したTregの比率を高めたCD4陽性T細胞との共培養、正常線維芽細胞と非ケロイド患者由来のCD4陽性T細胞等で共培養を行う。共培養下にIL-10や抗IL-10抗体を添加し、共培養後の線維芽細胞、CD4陽性T細胞をそれぞれ回収し、①同様にreal time PCRにてmRNA発現を解析し、Tregの抗線維化作用や抗炎症作用を検証する。 (2)Tregの誘導方法を検討し、Tregによる細胞治療の可能性について探る。誘導方法として、末梢血からTGF-βで誘導する方法、免疫抑制剤で誘導する方法、組織から抽出し増殖させる方法をそれぞれ検証し、Tregの最も効率的かつ、効果的と思われるTregの誘導方法を検討する。 上記で得られた結果については統計学的解析を行った後、関連学会にて発表し、論文の作成、投稿などを行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進展し、予算と支出にほぼ差は生じなかったが、今年度に使用を予定していた抗体、試薬などが次年度以降に必要となったため、53,067円の次年度繰り越し使用額が発生した。次年度の予算と合わせて調整し、購入することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞培養のための培地、生化学試薬、real time PCRの試薬、フローサイトメトリーの抗体と試薬、その他のシャーレ、ピペットなどの実験機材の各種物品などの購入に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)