2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26293388
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
平出 敦 近畿大学, 医学部, 教授 (20199037)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪田 愛恵 近畿大学, 医学部, 助手 (50447942)
西内 辰也 近畿大学, 医学部, 准教授 (60588804)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 救急蘇生 / ワークフォース / トリアージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には、日本救急医学会に所属する救急医に対して勤務状況を直接、アンケート調査した。調査は、救急に携わる多忙な医師が答えやすいように、簡単にメモして返信できるように、はがきを使用した。回答者は131人であった。回答者が勤務する医療機関では、救急専属の医師数は7.6±7.1人であり、学会の主要な救急医療機関に所属する医師に問い合わせていることから、比較的専従医の数が充実した医療機関の医師からの回答になった。1週間の勤務時間は、59±22時間であり、およそ60時間と見なせた。ただし、当直後、通常の勤務をしている医師は66人であり、およそ半数の医師が当直後、通常の勤務をしていることが明らかであった。また、通常の日勤業務を行ってから当直していると回答した医師は、88人にもおよび、いいえと回答した医師36人の2倍にもおよんだ。通常の日勤勤務をしてから、当直を行い、そのまま通常勤務に至る医師も少なくなく、労働環境としては問題であることがあきらかであった。これに対し調査中の疲労との自己評価は10段階で5.8±2.4であったが、8以上を選択した医師も少なくなかった。社会の高齢化にともない救急搬送件数が増加している中で、救急医療の人的資源、特に救急を担う医師の不足は大きな問題である。今回の調査では、日本救急医学会を通じて実施した調査であり、比較的、救急医療体制が充実した医療機関に勤務する救急医からの回答であったが、そのような医療機関に勤務する医師であっても、過酷な勤務実態が明示されるという結果になった。今年度にはワークフォースに加えて経済的な資料資源と、医療のアウトカムに関しても検討した。また、救急救命士の人的資源の救急医療機関での活用について調査内容を論文化し、薬剤師の人的資源の救急における活用に関して検討を行い、人材養成のためのテキストを作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に病院に対して調査を実施したが、平成28年度には、救急医に直接調査を実施することができ、実情を反映する回答が得られた。その結果は、明らかに現状の問題を提示しており、この調査研究はおおむね順調に進展しているということができる。また、ワークフォースに関する検討から広げて、さらに資源の経済的な点まで検討でき、成果を公表した。救急救命士を救急医療機関で活用する調査については、論文として発表した。さらに、薬剤師の人材養成に関しては、救急医療で活躍できる人材養成のためのテキストを発刊できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
病院に対する調査結果、および学会に所属する救急医に対する調査結果の概要が、現時点で得られた。その結果に関しては、特に後者で問題を浮き彫りにできて、成果が得られた。今後、そのデータをさらに解析する必要がある。たとえば、当直する前に、通常の日勤業務をしており、さらに当直後、通常業務をする医師で、疲労度の自己評価が高いかどうかといったきめ細かい解析が求められる。こうしたクロス解析を行い、さらに問題点を明らかにするともに、解決への糸口を提示できることをめざす。
|
Causes of Carryover |
平成27年度の病院に対する実態調査において、回収率が低く、十分な返答が得られなかったことから、平成28年度においては、各地の病院を訪ねて歩く目的で、旅費を多く計上した。しかし、そのプロセスの中で、実際問題として各病院にとっては、救急医療は一つの部門に過ぎないことを強く理解することとなった。いたずらに病院全体に調査を強いるより、当事者である救急医そのものに問いかけをした方が効率的だという結論をえて、郵送の手段を用いて救急医に直接問いかけをする戦略に変更することにより研究を進めることができた。また、ハーバード大学との共同研究では、メールを多用して成果をまとめることができ、打ち合わせに必要な旅費を節約することができた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
戦略を再検討した結果、旅費を節約して、調査を進めることができたが、調査結果は内容的に大きいため、調査内容の整理と分析のために、多大な労力が求められている。調査結果に、各医療機関の情報が含まれていることから、秘密保持の点で信頼でき、さらに、質の高い分析や統計解析ができる人材を必要とする。そこで、使用計画として調査内容の整理と分析に、主として人件費・謝金に使用する計画である。
|