2015 Fiscal Year Annual Research Report
新しい口腔粘膜脈管系炎症評価法と粘膜マッピング法による口腔粘膜炎発症予防法の開発
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26293440
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小関 健由 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80291128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丹田 奈緒子 東北大学, 大学病院, 助教 (00422121)
末永 華子 東北大学, 大学病院, 助教 (00508939)
細川 亮一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40547254)
菅崎 将樹 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50444013)
飯嶋 若菜 東北大学, 大学病院, 医員 (50725207)
高橋 信博 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60183852)
鈴木 治 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60374948)
伊藤 恵美 東北大学, 歯学研究科(研究院), 技術専門職員 (80596817)
佐久間 陽子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (90735531)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 口腔粘膜 / 炎症 / 毛細血管 / 治癒過程 / 周術期口腔機能管理 / マッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、口腔乾燥症で悩む高齢者や周術期口腔機能管理の必要な患者の口腔粘膜の傷害を予防して、本来の治療の達成と日々のQOLの向上を目指すために、口腔粘膜傷害の予防法を、粘膜マッピング法と共に全く新しい口腔粘膜評価法にて構築する事にある。則ち、狭帯域光観察の技術を用いた口腔粘膜脈管系炎症評価法による局所炎症評価法と、狭帯域光観察像からの粘膜マッピング法を考案して再現性のある口腔粘膜の位置座標を決定する。狭帯域光観察は、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された2つの波長の光を照射することにより、粘膜表層の毛細血管、粘膜微細模様の強調表示を実現する粘膜観察システムで、毛細血管の状態と細血管の位置情報を同時に得ることができ、それぞれ色分けされて明示される。本システムは、下咽頭、食道、大腸、胃などの粘膜の構造異常や早期がんの検出が可能として、臨床で大きな注目を浴び消化器の医療に大きく活用されている。この技術を活用することにより、口腔粘膜の炎症状態と位置を適確に把握する手法の開発が可能となる。この技術を活用することにより、口腔粘膜炎の潰瘍化のメカニズムが解明されるならば、抗がん剤や放射線治療の副作用である口腔粘膜炎を制御する手法の開発や口腔乾燥症によって悪化する口腔内の問題を解決する糸口となる。この開発によって、総合口腔粘膜炎症評価法を創設し、口腔粘膜脈管系炎症評価法による口腔粘膜潰瘍化発症のメカニズムの解明とそれの修飾因子の影響の検索していくのが本研究である。平成27年度は2年目の研究年度であり、臨床的な多くの技術的課題を抱えながらも、本研究で制作した口腔粘膜全域をカバーする口腔粘膜チャートを活用しながら、粘膜病変部位の正確な位置を確認するための粘膜マッピング法の構築と歯肉の炎症の特徴の抽出の実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度には、粘膜病変部位の正確な位置を確認するための粘膜マッピング法の構築を行った。粘膜下の脈管系の走行が多種多様で、位置決めには精密な脈管系の走行の観察が必要である事から、一見同様な構造であるが幾何学的な特徴を検出する方法を検索したが、コンピュータプログラムのアルゴリズムを構築する手法は困難で有り、ある程度の目視による確認が必須であると判断した。さらに、微細な特徴を追っていくと口腔粘膜全体の中での位置が把握しにくくなり、近赤外線カメラを用いたマッピングを目的とした観察等も実施するも十分な観察を行うに至らなかったことから、粘膜面全域を把握する鳥瞰図的な観察を含んだ口腔粘膜チャート上でのマッピング法を考案した。 さらに歯肉炎炎症局所の狭帯域光観察を実施し、得られた画像から特徴を抽出した。皮膚と違って錯角化の状態にある歯肉上皮は、炎症部位では毛細血管が拡張し透過性が高くなっていた。同時に、保湿剤や臨床で使用する薬剤等が毛細血管観察に及ぼす影響を検索し、特に大きな影響が無かったことから、抗がん治療患者の術前・術中の変化・高齢健常者・口腔乾燥症患者に関する口腔粘膜の炎症状態の観察を行う統合的な観察環境が構築された。これらの研究は、申請当初の計画から口腔粘膜チャートの開発の必要性等を行わなければならなかった事から、実験的歯肉炎による歯肉炎症の観察等の実験に関して遅延気味であるが、平成27年度申請時に計画の修正を行い、歯肉炎の観察を実施したことから研究結果の読み替えが可能で有り、研究計画を概ね踏襲している。
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Strategy for Future Research Activity |
東北大学病院で化学療法、もしくは頭頚部の放射線照射療法を実施するがん治療患者を対象として、継続した口腔管理の処置の中で、粘膜マッピング法で位置決めしながら定位置の狭帯域光観察を実施する。口腔粘膜炎の発症のリスクの極めて高い患者であるので、通常の診療を妨げずに、患者の負担にならないように細心の注意が必要となる。本手法は、口腔粘膜の光学的観察であるので、為害性や侵襲性は全くなく、特に口腔粘膜炎の発症・潰瘍化する過程に特徴的な所見を注意深く検討しながら、処置前後の経過の定点の詳細な画像情報と臨床所見を記録する。同時に、口腔粘膜の病的変化のある部位があれば、その特徴を中心に、口腔内哀訴や口腔内の違和感や疼痛のある部分(アフタ・歯ブラシ等による擦過傷・咬傷・白板症等)、さらに口腔粘膜に紅斑や白斑の病変部位の処置前後の経過の詳細な画像情報と臨床所見等を記録する。 また、これらの治療を実施する際は、口腔粘膜傷害に対する口腔粘膜保護の対策が最重要課題となる。通常は微細な擦過傷予防には保湿と唾液やその代替品による機械的刺激の低減を目指すので、その処置法や保湿剤の評価を健常高齢者・口腔乾燥症患者で検証する。特に、口腔保湿剤・人口唾液等の使用薬剤等の種類と用法、咀嚼刺激による唾液流出や唾液腺マッサージなどによる機能的保湿法の効果、口腔の保清による口腔環境の改善効果等を中心に、現在外来で実施している治療法の有効性について検索する。 これらの結果を基に、口腔粘膜脈管系炎症評価法と粘膜マッピング法を組み合わせた総合口腔粘膜炎症評価法にて口腔粘膜炎の増悪に関する臨床及び基礎実験を総括して、総合的な口腔粘膜傷害に対する診療指針を考察し、学会発表などや研究成果の開示事業などで情報の開示に務める。
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Causes of Carryover |
平成27年度実施予定の実験的歯肉炎の狭帯域光観察であるが、前述のように健常者を中心とした現存のプラーク性歯肉炎(単純性歯肉炎)の観察を実施したために、同じ手法を用いて実施するために、使用する物品の種類に変化は無かったが、その使用数が減少した。則ち、臨床観察時に使用する機材や記録メディア、観察のための口腔用鏡等の物品な数である。これらの資材は、患者を対象とした臨床研究で使用する物品と同一で有り、症例数を制限して本年度に実施する、腔粘膜脈管系炎症評価法と粘膜マッピング法を組み合わせた総合口腔粘膜炎症評価法の実験の、元々少ないと考えていた様々な口腔内炎症の検証実験の数を増加させる機会となり、全体の研究により多くの結果をもたらす事になると考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
東北大学病院で化学療法、もしくは頭頚部の放射線照射療法を実施するがん治療患者を対象として、継続した口腔管理の処置の中で、粘膜マッピング法で位置決めしながら定位置の狭帯域光観察を実施する際に、より注意深く観察部位を複数設定すること、さらには、口腔粘膜炎の発症・潰瘍化する過程に特徴的な所見を注意深く求めているので、口腔粘膜の病的変化のある部位があれば、その特徴を中心に、口腔内哀訴や口腔内の違和感や疼痛のある部分(アフタ・歯ブラシ等による擦過傷・咬傷・白板症等)、さらに口腔粘膜に紅斑や白斑の病変部位の処置前後の経過の詳細な画像情報と臨床所見等を記録する数を増加させる。このことによって、実験計画を大きく変えること無く、詳細な記録が可能となった。
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[Presentation] The effect of mutual relationship between medical and dental team in Tohoku University HospitalL2015
Author(s)
Tsubasa Kato, Ryoichi Hosokawa, Toru Tamahara, Masaki Sugazaki, Hanako Suenaga, Yoko Sakuma, Naoko Tanda, Mizuho Ono, Mina Dodo, Emi Ito, Fumie Teshirogi, Takeyoshi Koseki
Organizer
/MASCC/ISOO 2015 Cancer Care Meeting
Place of Presentation
Copenhagen, Denmark
Year and Date
2015-06-25 – 2015-06-27
Int'l Joint Research
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