2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the Tantric Buddhism Art and Craft in the South side of the Himalayan curtulal circle
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26300017
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
服部 等作 広島市立大学, 芸術学部, 名誉教授 (50218509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 照男 成城大学, 文芸学部, その他 (20124191)
奥山 直司 高野山大学, 文学部, 教授 (50177193)
森 雅秀 金沢大学, 人間科学系, 教授 (90230078)
柴田 隆史 東京福祉大学, 教育学部, 准教授 (90367136)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 仏教美術 / 工芸美術 / ヒマラヤ / 密教 / シルクロード / チベット / カシミール / 芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績(平成28年4月から29年3月末): 平成28年の調査は、森と服部二名が28年の2/20から3/1にかけてインド・ヒマルチュリプラディシュ州クルー、カングラ渓谷の仏教、密教からヒンドゥー遺跡および出土品をもつ博物館を調査し、ニューデリ博物館では情報交換をすすめた。調査内容を以下に示す。 1)仏教遺跡:Chaitru・Bhim-ka-Tila仏塔(1BC)、古代交易路の要衝地で、カシミールHarwan遺跡を想起できる。 2)ヒンドゥー寺院遺跡調査:Barsela Monuments(1637AD)、Panchvaktra寺院(17C)、Trilokinath 寺(1520AD)、Ardhnarishwar寺(1204AD)、バジャウラ・Mahadev 寺(8-9C)]、ナガール・Tripura Sundri寺、マナリGauri Shankar寺(11-12C)、パランプール・バイジュナートBaijnath 寺(1825)、Sidhnath寺(8C)、Hidamba Devi寺(AD1553)、 3)博物館資料調査:チャンデガール博(博物館)、シムラ・Himachal州立博、Naggar城博物館、パランプール・Himachal Culture& Folk Arts博物館、Kangra Fort・Nagarkot Fort博、Kangra Art博、Tsuglagkhang寺, Namgyal寺,ニューデリ国立博、クルー、カングラ渓谷は、ヒマラヤ南麓の要衝でカシミールからタリム盆地、バクトリアで展開された仏教、密教-ヒンドゥー美術の基層をなした。その一例に、チャンデガール・国立博(博物館)収蔵品のVasudeva立像(チャンデガール博蔵no.R2043は、ガンダーラ後期の造形イメージを遺し、カシミール-ラダック山間部にかけての造形イメージを備える例を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)ほぼ順調な進捗状況にある。 平成28年度冬の調査は、ヒマルチュリプラディシュ州でチベットの亡命政府があるダラムサーラに通じるクルー、カングラ渓谷沿いにある遺跡と博物館調査をすすめた。 調査の結果、研究課題であげた「ヒマラヤをめぐり展開された密教工芸の造形と表現の研究」から造形の調査=仏教、ヒンドゥー寺院遺跡を調査した結果、仏教から密教、さらにはヒンドゥー教とが重層的に混交する現地の調査ができた。つぎに表現の調査=寺院の儀礼と祭祀をパランプール・バイジュナートBaijnath 寺におけるヒンドゥーのシバ神の祭の調査を実現できた。加えてChaitru・Bhim-ka-Tila仏塔(1BC)遺跡は、上記の南北軸、東西軸上の古代交易路上の要衝にあり、クシャン朝カニシカ王が建立したアフガニスタン・スルフコタール神殿、ならびにカシミールのHarwan遺跡との類似性を想起できる環境、立地を実際に見ることができた。 本調査の意義は、ヒマラヤ山脈南麓に位置する渓谷がインドのグプタから後期グプタ時代にかけて密教美術がパーラ朝の影響をうけたガンジス河沿いからヒマラヤ山脈南麓へ北上の南北軸に位置し、さらにヒマラヤ山脈北麓の旧グゲ-ラダック王国、ならびに天山南路、吐蕃古道へと通じる。また東西軸からは、仏像製作の端緒をになった北西インド・ガンダーラ仏教およびインドのマツゥーラ地域に通じた地域である。この要衝の地に位置する。今回冬の調査は、正月休業期間に入ったため、ダラムサーラにおけるKalachakra寺,DALAI LAMA法王庁のモンラム(祈祷祭), Tibet図書館調査は、未調査となった。 最後にヒマラヤ南麓のクルー、カングラ渓谷の遺跡、博物館調査が、インドの仏教-密教、ヒンドゥー文化の中央アジア、およびタリム盆地から天山南道、北道への影響と基層文化の形成の知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方法は、ヒマラヤ南麓一帯の土着信仰(精霊信仰もふくめ)と仏教一密教、バラモンーヒンドゥ信仰の遺跡と現存する密教工芸と芸能の文化的基層の解明を今後も基本的にすすめる。そのため北西インドからヒマラヤ山脈南麓の文化圏一帯をなす、ヒマルチュリプラディシュ州チャンバ、ジャムカシミ-ル州レー、ネパール、ブータン、パキスタン・スワートの現地調査が候補地にあがる。 ヒマラヤ山脈南麓にあって本科研の申請当初の調査予定地であるネパールは、2015年4.月25日ネパールの首都カトマンズ・ゴルカ地域に発生したM7.8級大地震で首都と周縁各地の寺院が崩壊のため調査地変更がやむをえなくなった。また密教の聖地であるパキスタン・スワート地方は、政情が安定しつつあるとの情報を得ている。ペシャワール市街地周辺は、依然として政情、治安上の不安定であるとする情報が提供されていて、依然として懸念がのこされている。28年度調査のヒマルチュリプラディシュ州のクルー、カングラ渓谷のさらに奥地となるチャンバ地方、カシミールのレー地方は、インドの文化が南北軸、東西軸ともにヒマラヤ山脈南麓に通じているため調査の必要がある。しかしながら前者のチャンバ地方の祭祀開催時期が6.月から10月と長期で、外国人の立ち入りが制限され道路事情と閉鎖性が残る。ブータンの芸能祭祀は年度末3.月にあり、雨期明けの時期と道路事情とともに現地の情報収集が不可欠であるため、今後予算内でアクセス、実現の可能性、現実的に現地調査をする。後者のカシミールからレー地方への入境は、デリーから空路、スリナガルから陸路が想定できる。 以上の地域は、雨期と乾期の期間を問わず高山の山岳路の道路事情、天候事情があり、いずれの調査該当地域は、現地の最新情報を収集中にある。
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Causes of Carryover |
調査予定地にバングラディシュをふくめていたが、現地でテロ事件が発生し危険地域回避のために現地調査を、インド。ヒマルチュリプラディシュ州チャンディガール国立博物館へ変更した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の調査に、ニューデリ国立博物館の調査に充当する。
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Research Products
(5 results)