2014 Fiscal Year Annual Research Report
タイ国産腕足動物化石の炭素・酸素同位体組成を用いた石炭紀~ペルム紀の古環境復元
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26302008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井龍 康文 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00250671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 理 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (00293720)
浅海 竜司 琉球大学, 理学部, 准教授 (00400242)
原 英俊 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (60357811)
山本 鋼志 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70183689)
高柳 栄子 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40729208)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腕足動物 / 炭素同位体 / 酸素同位体 / 微量元素 / 古生代 / 古環境 / タイ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,まず,古生代の腕足動物化石のどの部位から,炭素・酸素同位体組成分析用試料を採取するのが適切かという問題に取り組んだ.現生腕足動物殻の同位体組成に関する研究では,殻のさまざまな部位からシステマティックに分析試料を採取することが可能であるが,それは化石試料では難しく,殻の最大成長軸に沿った断面において,内側表面付近から分析試料を採取するのが最もよいと思われる.そこで,鹿児島県奄美大島沖で採取された現生Kikaithyris hanzawaiiの殻から上記の方法により試料を採取し,その同位体組成と微量元素濃度を,鹿児島県喜界島に分布する後期更新統(70 ka)湾層より産する同種の殻のものと比較した.その結果,殻の内側のうち,殻の殻頂から約20 mm前後の部位が古環境推定に適することが明らかになり,70 kaの古環境を推定した. この結果を受けて,平成26年9月にタイ国に赴き,4地域から後期石炭紀~中期ペルム紀の腕足動物化石を採取した.これらのうち,中期ペルム紀の腕足動物化石殻に対して,K. hanzawaiiに用いた手法と同様の手法で殻の炭素・酸素同位体組成分析用試料を採取し,分析を行った.分析に際しては,事前に,操作電子顕微鏡で殻を構成する方解石のファイバーがよく保存されていることを確認した.得られた炭素・酸素同位体比は,現生試料の同様,比較的よく収束していた.これらの結果は,検討した腕足動物化石殻には,初生的炭素・酸素同位体比が保存されている可能性が高いことを示唆しており,今後,これを確認するため,分析個体を増やす必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,炭素・酸素同位体組成の殻内変異を評価する研究を行う予定であったが,ほぼ目的を達成することができた.ただし,タイにおける腕足動物化石含有層の露出状況が,予想よりもよくなかったため,試料を限られた層準から採取することができなかった.また,腕足動物化石殻の表面成長軸に沿って0.2mmほどの間隔で分析試料を採取する計画であったが,採取された腕足動物化石の表面は摩耗しているものが多く,また多くの種が肋を有していたため,これらはあきらめざるをえなかった.しかし,得られた腕足動物化石が予想より保存がよかったため,殻の内側表面から試料を採取することにより,非常によいデータが得られた.以上をまとめると,研究は概ね順調に進んでいると総括される.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,同一層準から得られた同一種の殻を用いて炭素・酸素同位体組成の個体差を評価する研究を行う.平成26年の調査で試料を採取した地点の中で,保存がよい化石を産する地点から産する腕足動物化石殻に関して,SEM観察等を行い,続成作用の影響が少ない化石殻を少なくとも5個体以上準備し,内側表面から炭素・酸素同位体組成分析用試料を採取し,分析を行う.この結核をバルク分析の結果と比較することにより,Veizerカーブと呼ばれる,腕足動物化石殻の炭素・酸素同位体組成を用いて描かれた,顕生代の海洋の炭素・酸素同位体組成変化の標準曲線の収束の悪さの原因を考察する.また,平成26年~27年の研究成果をまとめ,国内外の学会で発表するとともに,論文としてまとめる.平成28年度は,clumped isotope分析とその結果に集中するとともに,全体の総まとめをレビュー論文にまとめる予定である.
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Research Products
(5 results)