2015 Fiscal Year Annual Research Report
野生種トマトの病原毒素感受性に基づくトマト栽培化史の解析
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26304025
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
有江 力 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00211706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 基一朗 鳥取大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00183343)
寺岡 徹 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60163903)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 野生種トマト / 南米フィールド調査 / 毒素 / 遺伝子プール / 病害抵抗性・感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. Solanum pimpinellifolium(Sp)フィールド採取株のAAL毒素感受性・Aat罹病性調査:ペルー3地域のフィールドで野生種トマトSp約60株を採集した。サンプリングの際に、Alternaria alternata tomato pathotypeによる茎枯症状を呈する株は認めなかった。海外研究協力者(国立ラモリーナ農科大学 Liliana Aragon農学部長、Heidi Huarhua助教等)の協力の下、ペルーにおけるさらなる株の追加、一部の挿芽増殖による維持を行うとともに、AAL毒素に対する生物検定を開始した。 2. Asc1遺伝子の多様性調査:ペルー由来Sp株のゲノムDNAを抽出、PCR増幅したところ、全株から正常Asc1と同等サイズのDNA断片の増幅が認められた。ゲノムDNAの採取・抽出にFTAカードが有効であることを見出した。Asc1に2塩基欠失を有するAAL毒素感受性栽培品種愛知ファースト(AF)と約400 bpの欠失を有する感受性ガラパゴス産野生種S. galapagense(Sg)を交配、F1および自殖F2集団を得た.全てのF1およびF2個体がAAL毒素感受性であったことから、SgのAsc1座は、単独でAAL毒素感受性を決定していることが示唆された.また、シーケンス解析の結果、感受性野生種S. cheesmaniae(Sc)およびSgにおいて、複数箇所で欠失や配列の相違が認められた.一方、今回供試したすべてのScおよびSg系統は、同一の400 bp欠失を保有していた.以上の結果、SgおよびScにおいて感受性を決定する本欠失は、種分化以前に生じたことが示唆された. 3. S. pimpinellifolium等野生種トマトの分子系統解析:ペルー産SpおよびSg、Sc、その他チリ産野生種等のtubulin遺伝子等に基づく分子系統樹を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 計画通りペルー産の野生種Spを約40アクション採取、研究協力者の協力を得て、その一部をペルーにて栄養繁殖維持するとともに、AAL毒素に対する感受性検定系を確立、解析を行っている。 2. 上記のアクションから計画通りにゲノムDNAを抽出、PCR増幅したところ、全株から正常Asc1と同等サイズのDNA断片の増幅を認められた。現在、シーケンシングによってその塩基配列を確認中である。ゲノムDNAの採取・抽出にFTAカードが有効であることを見出した。研究協力者による採集・アクションの増加に有効である。さらに、AAL毒素感受性栽培品種愛知ファースト(AF)と感受性ガラパゴス産野生種SgおよびScのAsc1の塩基配列を比較、その欠失などから、感受性を決定する欠失が、種分化以前に生じたことが示唆されたことは計画以上の成果である. 3. 計画通り、ペルー産SpおよびSg、Sc、その他チリ産野生種等のtubulin遺伝子等に基づく分子系統樹を作成し、2. と併せ、AAL毒素感受性の分化を議論した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. S. pimpinellifolium(Sp)フィールド採取株のAAL毒素感受性・Aat罹病性調査:ペルーフィールドにおいて、さらにSpの採集を行う。サンプル個体を対象に、海外研究協力者の協力の下、切葉を用いたAAL毒素感受性検定、挿芽増殖個体を用いたAat接種による発病試験を実施する。チリ産野生種にも対象を拡大する。 2. Acs1遺伝子の多様性調査:Sp採集株のAcs1塩基配列の多様性の有無を検定する。得た配列をアラインメント、Acs1多様性および変異の様式を解析するとともに、各個体のAAL毒素およびAat罹病性などの性状や、地域との関連等を調査する。AAL毒素感受性ガラパゴス産野生種、感受性品種「愛知ファースト(AF)」との比較解析も継続する。抽出したDNAの、ABS、MTA等に基づく東京農工大学への移転を可能とする手続きを進める。 3. Sp個体の分子系統解析:Sp等採集個体の分子系統解析を行う。AAL毒素感受性ガラパゴス産野生種、AFとの比較解析も行なう。 4. Sp生息域にAAL毒素産生A. alternataが存在するか?:Sp生息域からA. alternataを分離、AAL毒素生産性を調査する。また、海外共同研究者の協力の下、AF苗を用いAAL毒素を産生するA. alternata菌株をトラップする。併せ、トマトーA. alternariaの共進化の筋道を考察する。
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Causes of Carryover |
2016年1月に実施したペルーにおけるフィールド調査の旅費を節約することができたため、予定していた旅費を次年度以降のフィールド調査に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度のフィールド調査で分担者および研究協力者の旅費などとして使用する計画である。
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