2015 Fiscal Year Annual Research Report
動物装着ビデオを用いた漁船と海鳥の個体レベルでの相互作用の研究
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26304029
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
綿貫 豊 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 教授 (40192819)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
依田 憲 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10378606)
南 浩史 国立研究開発法人水産総合研究センター, 国際水産資源研究所, グループ長 (20371932)
佐藤 文男 公益財団法人山階鳥類研究所, 保全研究室, 研究員 (00099996)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海洋生態学 / 海洋保全 / バイオロギング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,アホウドリ類の漁業活動との相互作用を装着型データロガーをつかって明らかにすることを目的としている.ハワイで繁殖するコアホウドリに装着回収したデータロガーから得られた画像,GPS位置,加速度を解析したところ,ハワイ諸島の北側亜熱帯水域と移行領域において海表面に死んで浮いている大型のイカを食べていることがわかった.イカとの遭遇は漁船やクジラとの遭遇とは関係なかった.イカ遭遇場所は互いに百キロ以上離れており,イカの発見は遭遇の直前であった.コアホウドリは直線的に飛行しながら偶発的にイカを発見していることがわかった.また,亜熱帯域において延縄漁船との遭遇が,船名が分かる程度に鮮明な画像で記録され,いずれも揚縄中または投縄中であった.コアホウドリは約8 km手前から漁船を認識しており,漁船を見つけると漁船に追随してゆっくり移動していることがわかった.さらに,ハビタットモデリングの手法で海洋環境を分析したところ,風が弱く,低水温の海域でイカと遭遇しやすく,クロロフィル濃度が高く,水温が低く,風が強い場所ほど漁船を追随する傾向があった.日中は水温が低い場所で,夜間は風が弱い場所で地域限定探索行動をする傾向にあることがわかった.さらに,鳥島においてクロアシアホウドリで同様の調査を行ったところ,データロガー回収率が悪かったが,回収できた2個体からは良好な位置情報と画像が得られ,いずれも日本海溝部を含む海盆域を利用し,キンメ底延縄船とイカの死体が写っていた.いずれの種においても繁殖期後半のロガー回収率は極端に低く十分なデータが取れなかった.そのため,個体レベルでの繁殖成績への影響は十分には分析できなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コアホウドリについてはおおむね達成し、画像、行動データを解析し、論文原稿を作成中である. ただし,クロアシアホウドリについてはロガー回収率が極めて低く,サンプル数が不十分であった.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の研究とりまとめをおこなう.27年度鳥島調査では,機材の作動に問題は無かったが,回収率が悪く十分なデータを得ることができなかった.そのため,実施時期を早める,回収に電波発信器を使う,など回収率を上げる工夫をし,野外調査を行う.越冬中の利用海域も含め漁業活動との関係を解析する.
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Causes of Carryover |
アホウドリの繁殖の関係上鳥島調査を年度末に行った.旅費を2人分計上していたが,都合より1名が参加できず,年度末だったので残金が生じた.研究分担者の強力により野外調査自体は順調に実施できた.また,研究分担者の転勤により予定していた解析(漁業活動のとりまとめ)の一部が十分には実施できなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画にはなかったが,サンプル数が少ないため今年度末にも再度の調査を計画しており,そのための調査機材調達,旅費などに充てる.研究分担者を交代し,27年度予定していた漁業活動の分析を28年度(最終年度)に実施し、研究とりまとめを行う.
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