2015 Fiscal Year Annual Research Report
南アジアにおけるアメーバ赤痢の免疫学的コホート研究
Project/Area Number |
26305013
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
濱野 真二郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70294915)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 三穂子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (40336186)
中村 梨沙 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (50645801)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | アメーバ赤痢 / 南アジア / バングラデシュ / コホート研究 / 下痢 / 病原性 / 感染防御機 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の5歳未満児の死亡数は590万人であり、その20%は下痢性疾患に因る(UNICEF、2015年、世界子供白書)。アメーバ赤痢は発展途上国における小児下痢症の主要原因の1つであり、世界中の感染者人口はおよそ5000万人、同症で毎年10万人の命が失われている。効果的な対策を講ずるには、赤痢アメーバの病原性に加えて同原虫に対する感染防御機構の理解が不可欠である。本研究はアメーバ赤痢が蔓延している地域、特にバングラデシュにおいて国際的な共同研究を展開し、1) 感染の成立からアメーバ赤痢の発症・重症化までを規定する宿主因子ならびに、2) 病原体の病原性因子を同定することを目的としている。新生児もしくは乳児の下痢サンプルにおける E. histolyica、E. moshkovskii、E. dispar の陽性率に関しては既に報告しているが(J. Inf. Dis. 2012)、その過程で下痢を引き起こしうる各種病原体の混合感染が明確となってきたため、それら混合感染をきちんと判別した上での研究の展開が必要となってきた。本研究では子供たちから定期的に回収されている健常便ならびに下痢便より DNA を抽出し、赤痢アメーバに加えて、各種下痢起因性病原体を検出する。また、子供たちの免疫応答に関する研究を通して感染の成立からアメーバ赤痢の発症・重症化までを規定する宿主因子を解明する。さらに上記知見に関してモデル動物を用いてその詳細を解明する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前より追跡しているダッカのスラムに居住するコホート集団(新生児および乳児も含む子供たち)から健常便および下痢便を回収し、高純度のDNAを抽出した。赤痢アメーバに加えて、各種下痢起因性病原体を検出する目的で、タックマンアレイカードを用いた検査法の導入準備を進めた。対象病原体は蠕虫、原虫、細菌、ウイルスまで多岐に渡る。この間、ICDDR, B. 所属の研究協力者と頻繁に連絡を取り合い情報とアイデアの共有を図ると共に、今後の共同研究を円滑に進めるために ICDDR, B. に所属の若手研究者を大学院生として受入れ共同研究の調整と深化を図った。邦人の殺害や爆弾テロなど社会情勢が比較的不安定な中、これだけのことが出来たのは、ひとえにバングラデシュの研究協力者たちのおかげであり、フィールド研究はおおむね順調に進展している。また動物モデルを使用した研究では、マウス虫垂での繰り返しパッセージを通して、昨年度得ることが出来た腸管定着能の亢進した赤痢アメーバを用いて RNA シークエンスを行い、その結果を標準株と比較した。現在、発現が有意に変化している遺伝子を同定するために共同研究を推進しており、これもおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) 健常便および下痢便より抽出したDNAを用いて E. histolyica、E. moshkovskii および E. dispar の陽性率と遺伝子多型を明らかにする。2) 新たに導入するタックマンアレイカードを用いて下痢起因性の各種病原体(蠕虫、原虫、細菌、ウイルスまで多岐に渡る)の同時一括検出を試みる。3) 各種病原体の感染状況ならびにその遺伝子多型と下痢エピソードとの相関を詳細に解析する。4) 赤痢アメーバの定着ならびに発症・重症化に影響する他の腸内微生物を同定する。5) 赤痢アメーバの病態形成に関与する免疫応答を明らかにする。6) マウスモデルを通して得られた腸管定着能が亢進した赤痢アメーバと従来の赤痢アメーバに関して、その発現に有意差のある遺伝子を同定する。7) 上記知見に関してモデル動物などを用いて詳細を解明する。
|
Causes of Carryover |
複数回のバングラデシュへの出張を予定していたが、10月3日にバングラデシュ北西部のロングプール県(首都ダッカから約300キロ)において,リキシャに乗車していた日本人男性がけん銃で撃たれ殺害され、「ISIL(イラク・レバントのイスラム国)バングラデシュ」を名乗る組織が犯行声明を出すなど、安全上の懸念があったため、予定していた出張を次年度以降に延期した。それに伴い、旅費、現地で使用予定の人件費、謝金も次年度以降に繰り越すこととなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度にバングラデシュ国際下痢症研究センターから研究協力者を招聘すると共に、同センターを訪問し、昨年度実施できなかった研究を時期を遅らせ遂行する。
|
Research Products
(15 results)