2015 Fiscal Year Annual Research Report
企業取引ネットワークを活用したストレステストシミュレーションの数理的基盤
| Project/Area Number |
26310207
|
|---|
| Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
|---|
Principal Investigator |
高安 美佐子 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (20296776)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金澤 輝代士 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 研究員 (50759256)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2019-03-31
|
| Keywords | 複雑ネットワーク科学 / 非線形輸送方程式 / 多層マルチ時空間シミュレーション / ビッグデータ / システムロバストネス / レジリエンス / 非線形相互作用 / 災害シミュレーション |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
企業取引関係のビッグデータ解析を進め、取引金額の揃った企業に関するデータに焦点を当て、ひとつの企業から企業間取引によって出ていく取引額の総額が、売上額のおよそ0.9乗に比例することを見出した。また、金額を100万円単位でみたとき、その比例定数は、0.9程度になることを確認した。さらに、ひとつの企業から複数の企業にお金が流れ出る場合、その金額は、相手先の企業の売上のベキ乗におよそ比例し、その指数は0.4程度となることを確認した。これによって、企業間のお金の流れがネットワーク構造と売上の情報から推定できるようになった。
企業におけるお金の流れとしては、これらの取引ネットワーク外からの注入と散逸の効果があるので、これらに関しては、データとおよそ整合するような簡単な関数形を想定することによって、全国レベル、およそ100万社の企業間のお金の流れを記述する方程式を導くことができた。この方程式の解は、およそ企業の売上を正しく推定し、さらに、取引金額も妥当な推定ができていることを確認した。
これらの成果を元にして、自然災害によって生じる企業活動の停止が、日本中に与える影響をシミュレーションによって推定した。災害によって受ける企業の影響としては、直接の被災により活動が停止するケース、取引相手が活動を停止することより連鎖的に活動が停止するケース、ライバイル関係の企業が活動を停止することによってお金の流れが増加するケース、などがある。試験的に、東日本大震災における津波による被災や利根川の氾濫などについて試算し、おおむね妥当な被災額が推定できることを確認した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
約100万社の企業のビッグデータから、取引関係のある任意の二つの企業間の取引金額をできるだけ正確に推定することが大きな目標であったが、まず、企業から企業間取引によって出ていく金額の総額に注目し、次に、分配の比率を推定するという手順をとることによって、おおむね良好に取引金額を推定するモデルを構築することができた。これによって、研究の中核となる企業のお金の流れを記述する数理モデルができ、それに基づいて災害の影響を推定するシミュレーションを走らせることができるようになった。
|
| Strategy for Future Research Activity |
企業間の取引金額を推定する部分はデータに基づいた確からしいモデルができたが、取引ネットワークの外とのお金の出入りの部分に関しては、今後、データから推定する方法を新たに開発する予定である。このネットワークの外とのお金の出入りをモデル化できれば、自然災害の経済的な被害の推定をより精度よく推定することができるようになる。さらに、任意の地域に関する産業連関表を構成するモデルができるので、災害に対する復興策や地域経済の振興などの政策立案に関しても、シミュレーションを通して有効性を推定するなど様々な応用展開が期待される。
|
| Causes of Carryover |
論文の投稿時期が年度末にかかったため、次年度に繰り越した。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、当初予定よりも多くの論文の執筆が予定されるので、多めの経費がかかると見込まれる。
|
Research Products
(20 results)
