Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から始めた, 細胞極性に関する問題で, 外部刺激に応じて極性が定まるべき位置を理論的に予測することに成功した.今年度は細胞分裂を視野に入れて, 複数の外部刺激に対する応答を考察したが, 同じ強さの複数の外部刺激に対して, 最終的な極性の位置を決定するためのメカニズムの解明に成功した.これは細胞同士の接触面が各細胞にとっての外部刺激に対応するとの考えに基づいたものであり, 最終的に分裂の方向を理論的に決定する方法につながると期待される.また, 細胞膜上の極性を考察するために, 2次元平面上の極性の存在問題についても結果を得つつある. また, 継続中の研究として, 積分核を用いた非局所項を有する方程式に関する研究がある.その有効性として, パターン形成のメカニズムをより包括的に説明できること, またより複雑なパターンも容易に再現できる, 実験との親和性が高いといった点をあげることができる.本研究ではこうしたことを踏まえ, 積分核形状と空間パターンの関係の理論的解明を目標として, 当年度において, 代謝系ネットワークから積分核形状を決定するための方法を確立した.また, それらを幾つかの複雑な代謝ネットワークに応用し, 有益な情報を抽出することに成功した.それらの成果は現在業績論文として執筆中である.更に, 離散的に表現されたモデル方程式系を積分核を用いて連続化するための一般的手法の開発にも成功した.既にショウジョウバエの視覚中枢系モデルにおいて, 従来の離散を含むモデルで示されていたすべての挙動を当該方法により再現できることを確認しており, その成果を現在執筆中である.これら方法はその汎用性の高さから, 球面上の問題への応用など, 今後様々な問題に応用されると期待される.
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