2015 Fiscal Year Research-status Report
柔軟性生体組織の触覚性状を定量化する触診センサシステムの開発
Project/Area Number |
26330199
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Research Institution | Maebashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
王 鋒 前橋工科大学, 工学部, 教授 (80323046)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スマートセンサ情報システム / 触覚 / 触診 / センサ / 柔軟生体組織 / 乳がん / 機能性材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、将来医師に腫瘍などの触診を定量化する手法を提供し、また一般人にも在宅で乳がん等の病変の早期発見に使用可能の手段を提供することを目指して、柔軟性生体組織の触覚性状を定量化的把握する触覚センサシステムを開発するものである。 平成27年度中、前年度に行った研究の知見を元に、センサ感度の向上を目指して、センサハードウェアおよびソフトウェアの改善改良を行った。研究の結果、センサ構造上、硬い基材に挟まれた感圧ゴムの層、その上に柔軟性の基材に挟まれたPVDFフィルムの層を配置するような積層構造で、センサの感度が最も高いことを明らかにした。また、PVDF表面上ガーゼを配置することによってセンサ感度をさらに向上することができることを確認した。さらに、実験を経てセンサから対象物に印加する初期負荷条件、センサ全体の振動周波数および振幅などの加振条件を模索し、それらに基つき加振装置と振動伝達機構を再構築した。それと同時にソフトウェア面においてはパラメータや、パラメータ抽出の信号処理アルゴリズムの改良改善も行った。パラメータとしてPVDF出力の基本波の成分とその高次調波の成分を利用して対象物の粘弾性特性を表すことが出来た。改良したセンサシステムを用いて、柔軟性サンプルに硬い異物を埋め込んだ対象物に対して検証実験の結果、異物の検出が可能であることが明らかにした。さらに医療教育用「乳がん触診モデル」を用いてシステムの性能検証実験を行い、正常部位の組織と乳がん、線維腺腫や乳腺症などの病変部位の組織を定量化的に判別できたことを確認した。 研究の成果を日本機械学会2016年次大会に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に、おおむね当初計画通り研究を進展して、前年度研究の知見を元にセンサシステムの改善改良を行っていた。 (1)センサ改善改良のハードウェアの面においては、センサの構造を再考し、その形状および各層の母材の最適化を行い、センサ感度を向上できた。また実験を経てセンサ駆動部の振動周波数、振幅および初期荷重条件などを模索し、新たなセンサ駆動加振装置を再構築した。 (2)センサ改善改良のソフトウェアの面においては、対象物の触覚性状を表すパラメータを再考した。特に粘弾性特性については、対象物の変形と荷重のあいだの時間遅れに注目し、正弦波で駆動されたセンサの出力の波形のひずみからPVDF出力波形の基本波の成分と高次調波の成分を利用したパラメータを確立した。 (3)人肌ゴムを利用して柔軟性サンプルを作成し、その中に異なる深さに硬い異物を埋め込んだ対象物に対して検証実験を行った。実験の結果、本研究で開発した触覚センサを用いて異物の存在を検出することが出来た。 (4)医療教育用「乳がん触診モデル」を用いてシステムの性能検証実験を行った。実験結果より、正常部位の組織と乳がん、線維腺腫や乳腺症などの病変部位の組織を定量化的に判別できたことを確認した。 (5)しかしながら、現在検証実験を行う際、センサの初期荷重は不安定のため、センサ出力の再現性に問題があり、その改善策が目前の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に、今までの研究結果を元に、センサハードウェアおよびソフトウェアおよび検証実験の各方面において以下のように研究を推進し、センサシステムを完成させ、その実用化を目指す。 (1)センサ再現性を向上するために、リニアサーボスライダを用いて新たにセンサ初期荷重を安定化可能な実験環境を構築する。 (2)触覚性状の定量化するパラメータおよび信号処理法を再考し、その信号処理システムを構築する。 (3)実験室レベルの動物実験を行う。牛、豚などの動物の内蔵、筋肉、脂肪等の実際の柔軟性生体組織を用いて評価実験を行い、触診センサシステムを検証する。 (4)センサのハードウェアおよびソフトウェアの改善改良を繰り返しながらセンサ性能を向上し、最終的に柔軟性生体組織の触覚性状を定量化する触診センサシステムを完成させる。 (5)さらに将来医学系協力者と協力し、センサシステムの臨床検証を行い、その実用化を目指す。
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