2014 Fiscal Year Research-status Report
民謡学習のためのコアカリキュラム開発とそのデジタルコンテンツ制作
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26330414
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Research Institution | Kyushu Women's University |
Principal Investigator |
城 佳世 九州女子大学, 人間科学部, 講師 (40722731)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 健次 茨城大学, 教育学部, 教授 (10274565)
津田 正之 国立教育政策研究所, その他部局等, 研究員 (10315450)
藤井 浩基 島根大学, 教育学部, 教授 (50322219)
金子 敦子 名古屋芸術大学, 音楽学部, 教授 (90224592)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 郷土の音楽 / 日本の民謡 / ICT活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①教員養成系の学生と小中学校教師へのアンケート調査と面接調査を通して、民謡学習の問題点を探り(平成26 年度)、②その整理・分析をふまえて、日本国内における民謡について、伝播と変容という視点から、民謡学習のためのコアカリキュラムを検討し(平成27 年度)、③そのカリキュラムをもとにして「学習者」「教師」「地域の民謡関係者」との協働で民謡学習のデジタル教材を開発する(平成28 年度)ことである。デジタル教材は、楽曲に関する多様な情報-すなわち楽譜やwave ファイルによる演奏音源はもちろん、地理、文化、社会、そして、他地域の民謡との関係についての情報を提供でき、それを簡便かつ自由に活用できると同時に、その情報を入れ替え可能なものとし、授業者がそれぞれの地域で民謡教材を作成できるようにする。 平成26年度は教員養成系の学生と小中学校教師へのアンケート調査と面接調査を通して、民謡学習の問題点を明らかにした。その結果、学生の日本民謡に対する認知度が高くないこと、地域性があること、また日本民謡の授業に対して教員が苦手意識をもっていることが明らかになった。 これらの調査結果については、日本音楽教育学会九州例会及び九州女子大学で開催したシンポジウムにおいて報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アンケート調査にあたっては、日本を8 ブロック(北海道、東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州、沖縄)にわけ、教員養成系に所属する学生総計780名の日本民謡に対する認知度の調査をおこなった。その結果、音楽の教科書に掲載されているか否かにかかわらず、学生の認知度が低いことが明らかになった。また、家庭や地域や学校行事、他の教科の学習等での取り扱いがある場合は、音楽の授業のみでの取り扱いと比較すると認知度が高かった。特に家庭や地域で取り扱われている場合、その曲目は地方に伝承しているものであることから、民謡の認知度には地域性が大きくかかわっていることが明らかになった。 また、全国の小中学校の教員1000人を対象にアンケートをおこない日本民謡学習の実態について調査した。その結果、授業の中では半数以上の学校が日本民謡を音楽の授業の中で取り扱っているにもかかわらず、定着していないことが明らかになった。また、日本民謡に関する授業の必要性を感じているにもかかわらず、教員の知識が不十分であること、教材の不足、時間数の不足などによりおこなわれていない現状も明らかになった。 さらに、日本民謡の学習に関するシンポジウムを開催し、現在の教育現場でおこなわれている授業実践の報告を調査し、民謡学習の課題について明らかにすることができた。また、シンポジウムではアンケート結果についての公表もおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれらのアンケート結果を基礎調査として、「伝播と変容」をキーとした民謡学習のためのコアカリキュラムの開発をおこなう。日本の民謡は地域の労働特性(農業、林業、漁業等)、神事などの地域の文化特性と関連している。そこで、それら地域の特性や文化という脈絡のなかで「伝播性」に焦点をあて、楽曲の教材化をおこなっていく。この「伝播 性」という視点を置くことにより、個別の地域の民謡が日本の中でどのように位置づくのかという理解が可能になり、自己の地域の民謡の成立が理解できるようになる。そうして、地域の民謡だけでなく、日本に現存する民謡を体系的にとらえることのできる授業を構築できるようになると考えられる。 さらにこれらのコアカリキュラムの有効性を小中学校の先生の協力のもとに検証し、デジタル教材化をおこなっていく。デジタル教材の具体化においては、先に述べたブロックに共通する伝播性のある楽曲を対象として、各ブロックで5 から7 曲程度を目標に、各ブロックの小中学校の教員と教員養成大学に所属する学生、そして地域の民謡関係者の協働によって、コンテンツ制作(楽曲の録音、文化・社会的背景の収集等)をおこなう。なお、作成するデジタル教材は、コンテンツの入れ替えが可能なシステムを採用し、今後、コンテンツを入れ替えることによって、地域の異なる楽曲をデジタル教材として用いるよう設計する。
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Causes of Carryover |
日本民謡に関する教員向けの実態調査について、アンケートを全国規模でおこない、郵送でおこなったた。その上で、地域別に集計をおこなった。そのため、ブロックごとの実施をおこなわなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケート調査の結果をうけて、各ブロックごとに聞き取りによる実態調査をおこなう。
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Research Products
(2 results)