2014 Fiscal Year Research-status Report
コウノトリを頂点とする食物網構造の時空間推定-豊岡盆地の景観変遷との関係-
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26340009
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐川 志朗 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 准教授 (30442859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江崎 保男 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (10244691)
内藤 和明 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 准教授 (50326295)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コウノトリ / 野生復帰 / 安定同位体比分析 / 餌動物 / 採餌景観 / ランドスケープ / 樹林化 / 河川 |
Outline of Annual Research Achievements |
a.コウノトリの絶滅前および再導入後における食物網構造の解明:死亡個体の胸筋を用いた窒素(δ15N)・炭素(δ13C)安定同位体比分析を行った結果、両分析値は、飼育個体群のものが再導入個体群のものより有意に高かった。また、再導入個体群の中でも、人工給餌に依存した個体群のδ15Nが自立採餌個体群のそれに比べて有意に高かった。これらの栄養段階の差は人工給餌物の魚類に由来すると推察された。さらに、再導入個体群と野生絶滅前の個体群の羽毛を用いて、両者の栄養段階を比較した結果、δ15Nおよびδ13Cには大きな差異が認められなかった。しかし、野生絶滅前個体群の中にはδ15N、δ13Cともに突出して高い値を示すものが出現した。 b.コウノトリの主要な採餌景観と採餌物の解明:再導入されたコウノトリの行動観察記録(2005年から2011年の7年間におけるのべ202個体のデータ)を解析した結果、採餌景観としては、水田(畦畔)、湿地、畑地、草地、裸地、河川、水路および湖沼が抽出された。餌動物としては30分類群が確認され、水田や湿地では、ドジョウやその他の魚類、カエル目成体、アメリカザリガニ、ミミズ類、ヘビ類などが周年に渡り採餌されており、河川では魚類が周年採餌されていた。特に、春期から夏期には水田や湿地においてカエル目幼生が、秋期には水田や草地においてバッタ目やイナゴ科などの陸上昆虫類が頻繁に採餌されていた。 c.コウノトリの絶滅前および再導入後におけるランドスケープ変遷の定量化:主要採餌景観の一つである河川において、1970年代と現在(2014年)の景観の変遷を把握した。航空写真判読および縦断測量調査の結果、円山川の支流である八木川および大屋川では砂州の時空的移動が認められ、土砂流出による攪乱が生じていることが示唆された。一方、円山川本流では砂州の樹林化および流路澪筋の固定化が認められ、環境が単一化してきている傾向が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野生絶滅前の羽サンプルは各地の剥製個体から入手しているが、手続き等遅延しており一部のサンプルの入手・分析が終わっていない。 採餌環境のメタ解析において、2014年度は2005年から2011年までののべ202個体の観察記録に基づくデータを解析対象としたが、2012年度以降のデータについてデータ整理・分析が終わっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
コウノトリの安定同位体比分析においてより厳密な同位体混合モデルを構築し、食物網解析を推進するためには、コウノトリの生息地である但馬地域においてそれぞれの餌動物の安定同位体比を明らかにする必要がある。したがってコウノトリの餌となる可能性の高い動物を但馬地域の水田地帯や湿地、河川といった環境から採集し、それぞれについて安定同位体比分析を実施する。また、野生絶滅前個体群の栄養段階は強毒性農薬が水田地域において使用され、餌動物が激減した戦後とそれ以前の戦前において大きく変化すると推察される。2014年度の調査で調達したサンプルでは、飼育履歴や剥製化された年代が不明であるものも多く含まれていた。そのため、主に戦前の剥製個体に着目し、明確な履歴が追跡できるサンプルの調達を実施する。2014年度の調査では、主に豊岡市周辺の剥製個体を対象としたが、絶滅前個体群の剥製は近隣の京都府や福井県、高知県などの研究機関にも保管されている。これらについて関係者と十分な調整を行い、協力が得られた際にはサンプルの調達を実施する。 コウノトリの採餌環境に関するメタ解析について、2014年度は2005年から2011年までののべ202個体の観察記録に基づくデータを解析対象とした。 この観察記録は2015年4月現在も日々更新されている。また、豊岡市周辺では毎年10個体程度のヒナが自然条件下で孵っており、野外個体の個体数は年々増加傾向にある。そのため、既存の解析結果に2012年以降の最新の結果を交えて①コウノトリの餌動物の把握、②採餌景観の選択性、③採餌景観の季節的変化と餌動物の生活史について検討する。
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Causes of Carryover |
以下についての経費が執行されなかった。これについては、2015年度に繰り越して運用する計画である(「使用計画」参照)。 ①野生絶滅前の羽サンプルは各地の剥製個体から入手しているが、手続き等遅延しており一部のサンプルの入手・分析が終わっていない。 ②採餌環境のメタ解析において、2014年度は2005年から2011年までののべ202個体の観察記録に基づくデータを解析対象としたが、2012年度以降のデータについてデータ整理・分析が終わっていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
野生絶滅前個体群の羽毛サンプルの採取は、主に豊岡市周辺の剥製個体を対象としたが、絶滅前個体群の剥製は近隣の京都府や福井県、高知県などの研究機関にも保管されている。これらについて関係者と十分な調整を行い、協力が得られた際にはサンプルの調達・分析を実施する。 コウノトリの採餌環境に関するメタ解析について、2014年度は2005年から2011年までののべ202個体の観察記録に基づくデータを解析対象とした。 この観察記録は2015年4月現在も日々更新されている。そのため、既存の解析結果に2012年以降の最新の結果を整理・分析する。
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Research Products
(9 results)