2016 Fiscal Year Research-status Report
コウノトリを頂点とする食物網構造の時空間推定-豊岡盆地の景観変遷との関係-
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26340009
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐川 志朗 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (30442859)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江崎 保男 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 教授 (10244691)
内藤 和明 兵庫県立大学, 地域資源マネジメント研究科, 准教授 (50326295)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | コウノトリ / 野生復帰 / 安定同位体比分析 / 野生絶滅前個体群 / 剥製 / 採餌景観 |
Outline of Annual Research Achievements |
豊岡盆地においてコウノトリの餌となる餌動物種を捕獲し,炭素・窒素安定同位体比分析に供した(20種類,計420個体).これらのうち,ドジョウ(淡水魚),トノサマガエル成体(両生類),コガムシ(昆虫類),およびマアジ(海水魚)の4種の分析値を用い,コウノトリの野生絶滅前個体群(以降,「野生絶滅」と記載,剥製11個体からサンプル入手,飼育履歴のある個体は除外)と再導入個体群(以降,「再導入」と記載,死亡個体13個体からサンプル入手)との間で各餌動物の寄与率推定を行った.その結果,野生絶滅では再導入に比べ,マアジやドジョウの寄与率が高かった.この結果は,昨年度の代表的な餌動物の文献値を用いて行った解析結果と共通するものであった.以上より,野生絶滅は,再導入よりも海水魚も含めた魚類を多く採餌していた可能性がある. また,豊岡の野生絶滅(前述11個体)と他地域(福井県および千葉県由来の4個体)の野生絶滅前個体群との間で同様に上記4種の餌動物の寄与率推定を行った結果,他地域個体群では豊岡個体群に比べ,マアジやドジョウの寄与率が低く,コガムシやトノサマガエル成体の寄与率が高くなっていた.このように,他地域と比較しても豊岡個体群では,野生絶滅前に海水魚を含む魚類が多く採餌されていた可能性が示唆された.今回,他地域のサンプルが少数だったため,上記の可能性を立証するためには,更なるサンプルを確保する必要がある.なお,分析後の調査で,日本国内にまだ多数(少なくとも16個体)の野生絶滅前個体群の剥製が点在していることがわかった.このため,現在,各剥製標本の所蔵機関に対して,羽毛の提供を依頼している段階にある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
豊岡盆地においてコウノトリの餌動物を捕獲し安定同位体比分析を実施した.また,それらの値を用いて野生絶滅前コウノトリの食物網解析を行うことができた.しかしその一方で,豊岡盆地に生息していた野生絶滅前個体群の剥製には,自然下の採餌状況を反映しない飼育履歴を有するものがあることに加え,豊岡盆地内ではこれ以上の自然下の採餌を反映するサンプルの確保は見込めないことが明らかになった.分析後の調査で,日本国内にはまだ多数(少なくとも16個体)の野生絶滅前個体群の剥製が点在していることがわかった.このため,現在,各剥製標本の所蔵機関に対して,羽毛の提供を依頼している段階にある.
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Strategy for Future Research Activity |
国内には他地域産の野生絶滅前個体群の剥製が少なくとも16個体以上存在することが判明した.新たな展開として,国内他地域の野生絶滅前個体群のサンプルを入手し,安定同位体比分析を行い(硫黄同位体比や微量元素の分析についても要検討),食物網解析を実施する.以上をもって,現在までの分析結果の信憑性の向上や,絶滅前のコウノトリ個体群の採餌景観の解明に寄与することが考えられる.さらに,本研究からの具体提言として,コウノトリを含む健全な生態系の創出,すなわちコウノトリが自活し得る餌環境整備の進め方を示すことが可能になると考えている.
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Causes of Carryover |
コウノトリの野生絶滅前個体のサンプルの取得および必要な分析が滞ったため.また,十分な分析結果が得られないことによりその後のデータ整理・解析・取りまとめも滞ったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
他地域に存在する絶滅前コウノトリの剥製からサンプルを取得し分析に供する.また,海産魚の捕食の寄与を検討するために,硫黄同位体比や微量元素の分析を検討し実施する.これらの結果および今まで取得した結果を踏まえ,景観要素と食物網構造の関連性を明らかにし,国内全体で現在進行しているコウノトリ野生復帰事業への具体提言として,コウノトリを含む健全な生態系の創出,すなわちコウノトリが自活し得る餌環境整備の進め方を示す.
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Research Products
(9 results)