2016 Fiscal Year Research-status Report
立体構造にもとづいた損傷乗り越え複製DNAポリメラーゼ・イータの機能解析
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26340028
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横井 雅幸 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (00322701)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 損傷乗り越え合成 / DNA損傷 / TLSポリメラーゼ / 阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
①ヒトPolηの活性を阻害する化合物の特異性を調べるため、複製型DNAポリメラーゼであるマウスPolαおよび大腸菌PolIのDNA合成活性をもつ断片であるKlenowフラグメントをコントロールとして、プライマー伸長反応を指標に化合物の濃度依存性実験を行った。結果、約30,000種類の化合物から、ヒトPolηへの特異的な阻害作用を示す10種類の化合物を明らかにした。②ヒトPolηと相互作用する因子として同定したUSP11について、組換えタンパク質同士で相互作用実験を行った結果、ヒトPolηのユビキチン結合ドメインを含む領域とUSP11のユビキチン類似配列であるUBL領域を含む領域が相互作用する可能性を見出した。また、USP11をGFPとの融合タンパク質として発現できるレトロウィルスを作成した。これを、昨年度までに樹立・解析を進めていたヒトPolη点突然変異体および欠失変異体の発現細胞と組み合わせて用いることで、DNA損傷に応じたヒトPolηの局在と損傷部位でのUSPタンパク質の局在を解析する予定である。第三として、昨年度までに行った欠失変異体発現細胞の紫外線感受性と細胞内局在の解析を基に見出されたヒトPolηの紫外線応答に重要な147-192アミノ酸と相互作用する因子を同定し、クロマチン構造変換因子やヌクレオソームシャペロンを見出した。現在、DNA損傷に応じたヒトPolηの細胞内局在とクロマチン構造変換との関係について解析を進めている。第四として、紫外線、MMS、シスプラチン、臭素酸カリウムなどのDNA障害剤で処理した細胞から経時的に核抽出液を調製し、PolηやPCNA、H2AXなどの挙動をウェスタンブロットにより調べた。その結果、紫外線照射に応答したPolηの顕著な減少、臭素酸カリウム処理後のH2AXのリン酸化細胞の感受性がPolη依存的に増すこと、などを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトPolηの立体構造にもとづいた損傷乗り越え機構の解析を目指し、様々なアミノ酸点変異体や欠失変異体を発現する細胞を用いた解析によって、DNA損傷に応答したPolηの細胞内局在と感受性について、機能に重要なアミノ酸残基やアミノ酸領域に関する知見を得ることができた。またそれらの領域と相互作用する分子の同定も進み、主にPolηの翻訳後修飾に関わることが予想される分子との関係について理解を深めた。さらに、Polηの活性を特異的に阻害する化合物の同定についても一定の成果を上げることに成功し、総合的には「おおむね順調に進展している」と評価できると考えている。一方、精製タンパク質を用いてPolηの構造と機能の関係を生化学的に解析する予定であったが、最終年度の開始と同時に所属機関に異動があったため、当該項目については当初予定の計画に比べ大幅に遅延が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
所属機関の異動に伴う遅延であることから、事業期間延長の申請をし、すでに受理されている。最終年度内の達成がかなわなかった研究計画を遂行するために必要な設備面での環境は、概ね整った。主にPolηの欠失型変異体の生化学的な解析を継続することで、当初の計画で期待した研究成果を得られると確信する。
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Causes of Carryover |
当初の計画に比べ、ヒトPolηの欠失型変異体の調製および解析に遅れが生じた。その主な理由は、欠失型変異体組換えタンパク質の可溶性の低下に求められる。この状況は想定の範囲内であったことから、組換えタンパク質の可溶性を補助する性質を持つタグとの融合を試み、これが功を奏している。一方、課題申請時の所属からの異動(研究実施場所の変更)がそれら一連の組換えタンパク質の調製時期に重なったため、現所属研究機関での研究遂行に必要な機器の立ち上げや各種施設への従事者登録等に日数を要したこと、また、異動によって研究代表者が担当する講義等の他の業務への比重が増したこともあり、当初予定の計画から、より優先度の高い研究に重心を移さざるを得なかったため、上記の項目について大幅な遅延が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画の中間年次と最終年次に実施予定であった組換えタンパク質の精製とRI標識した合成オリゴDNAを用いたDNA合成活性の測定を継続する。そのため、次年度繰越金は関連消耗品費(核酸合成費、RI標識化合物、タンパク質精製関連消耗品)の購入に充てる。
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[Presentation] Functional analysis of human DNA polymerase η harboring mutations in the palm domain2016
Author(s)
Yokoi, M., Mishima, K., Noda, C., Nishimura, J., Yang, W., Hanaoka, F.
Organizer
第39回 日本分子生物学会
Place of Presentation
神奈川県横浜
Year and Date
2016-11-30 – 2016-12-02
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