2014 Fiscal Year Research-status Report
慢性腎不全患者の栄養管理を目的とした食品に含まれるリンの様態に関する研究
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26350132
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
伊藤 直子 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (20158158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 榮吉 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (10418923)
山崎 貴子 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (60318574)
岩森 大 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (90339961)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リン / 有機態リン / 無機態リン / 加工食品 / 慢性腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、加工食品の中から食品添加物としてリン酸塩が加えられていつ可能性の高いハム、ソーセージ、鮭フレークについて、食品添加物の有無でリンの含量がどの程度違うかを調べた。その結果、リン化合物が含まれているハムはリンの含有率が有意に高かったが、ソーセージと鮭フレークでは有意差がなかった。有意差の無かった理由を推定したところ、無添加製品には、パッケージに各種エキスが含有されていることから、エキスに含まれるリンは無視できないほどの影響があるのではないかと考えられた。エキスは食品添加物ではなく食品の扱いとなっている。そこで、単純な系として様々なだしの素に含まれるリン含量を測定したところ、食品添加物無添加として販売されているだしの素はリン量が多く、これらには酵母エキスが含まれているものが多かった。 また、リンの推定消化吸収についての検討を行った。一般に、無機態のリンは水可溶性のものが多く、吸収率は90%以上であり、有機態のリンは水不溶性のものが多く、吸収率は40-60%程度であるとされている。このことから、市販食パンを用いて、水可溶性、水不溶性のリンに分けてリン量を測定し、無機リン酸化合物を含む可能性がある食品添加物(イーストフードと乳化剤)の有無でリン量を比較した。その結果、これらの食品添加物の有無による食パンの全リン量に有意差はなかったが、可溶性リンは、食品添加物を含む食パンのほうが有意に多かった。このことから、食パンにおいてはイーストフード等の食品添加物を含むもののほうが、リンの消化率が高いと推測された。 本年度の結果より、腎臓病患者には一概に食品添加物が含まれていないものを薦めることはできない場合があることがわかった。しかし、食パンにおいては、食品添加物としてリン酸塩を含むもののほうが推定吸収率が高いことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の計画として、リン酸塩が食品添加物に含まれる可能性のある加工食品のリン量を測定し、リン量の把握をしたうえで、可溶性リンを無機リン、不溶性リンを有機リンとみなしてリン量を求め、比較検討する予定であった。当初ソーセージやハムの他、インスタントラーメンやプロセスチーズも測定の対象としたが、ハム、ソーセージ、鮭フレークで測定したところ、ソーセージと鮭フレークにおいて食品添加物を含まないものと含んだもので有意差が得られず、予想と異なる結果が出たため、その理由について検討を行った。そのため、他の加工食品のリン量の測定をすることができなかったが、この理由を調べるために、様々な市販だしのリン量を測定し、新たな知見を得ることができた。すなわち、食品添加物ではなく食品として扱われているエキス、特に酵母エキスの含まれる市販だしにはリンが多く含まれており、必ずしも食品添加物無添加と謳っている食品であってもリン含量の多いものがあり、透析患者にとって注意しなくてはならない食品であることがわかった。一方、食パンにおいて全リンと不溶性リンの含有量を測定したものでは、食品添加物としてリン酸塩が含まれているものといないものを比較したところ、全リン量は変わらないが、リン酸塩が含まれているもののほうが有意に水溶性リンの量が多かったことから、推定消化率も高いことが推測された。 これらの結果から、計画と比較し、ほぼ順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は計画通り、模擬的に食品を消化させて、リンの推定消化率を調べる。ただし、食品の消化処理に関し、変更を考えている。当初の計画では、食物繊維測定キットを使用するつもりであったが、本キットでは、強酸性でペプシンを使用する過程がない。しかし、胃の中な強酸性であり、強酸性で分解する食品成分もあると推定されるため、よりヒトの消化過程に近い形として、キットの使用をやめ、市販のアミラーゼとペプシンとパンクレアチンを使用して、食品を消化させることとする。昨年の計画にはインスタントラーメンのリン量の測定を挙げていたが、他の麺類についても測定を行う。麺類は主食としてよく食されるものであり、一度に食す量が多いため、100gあたりのリン量はそれほど多くはなくとも影響は大きい。このことから、インスタントラーメン以外の麺類に含まれるリン量を調べ、さらに、調理による変動についても同時に調べることとした。また、前年度に、無機リン酸と有機リン酸を分離する手段として、試しに分子量1000以下の分子を通過する透析膜を使用して、分子量の違いによりリン酸化合物を分離したところ、ある程度の分画はできたが、ヒトが消化することができない、有機態リン化合物であるフィチン酸は透析膜を通過したと考えられた。そのため、今年度はこの点についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
申請時の計画では、リン測定のために大容量の灰化装置が必要であり、当初学内にあった灰化装置は、処理できる容量が小さかったため、大型の灰化装置の購入を申請した。しかしながら、科研費申請申し込み後に、学内の灰化装置が故障したため、急遽新しい灰化装置の購入が検討され、その結果希望していたものと同じ処理能力のものが設置された。そのため、この分の経費が浮いた。そこで、リン測定のために必要なpHメーター及びホモジナイザーを購入した。これらの合計金額は、当初予定していたマッフル炉の価格を下回った。また、旅費、人件費、謝金等は不使用であったため、差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ガラス器具のうち、灰化に用いるビーカーの消耗が激しく、買い足す必要がある。被験食品やその他の試薬の購入に充てる予定である。また、リン抽出に用いるホットプレートは、現在家庭用のものを使用しているが、温度ムラがあるため、性能の良い理化学機器の購入を検討している。
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Research Products
(4 results)