2016 Fiscal Year Research-status Report
eラーニング学習者のニーズを反映させたメンタ育成プログラムの開発
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26350336
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
冨永 敦子 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (60571958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向後 千春 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (00186610)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学習支援 / メンタ / ティーチングアシスタント / メンタ資質 / TA資質 / 人材育成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,メンタと同じ学習支援者であるティーチングアシスタント(TA)を対象に,研修を実施した.TAを対象とした理由としては,TAに必要な資質(能力・スキル・態度など)の因子構造が,メンタのそれとほぼ同じであることが挙げられる.研究代表である冨永は,メンタに必要な資質の因子構造を質問紙調査により明らかにし(2013a,2013b,2014a,2014b),さらに同様の方法を用いてTAに必要な資質を明らかにした(2016).メンタ資質とTA資質の因子構造を比較したところ,両者の因子は「学習内容に関する専門知識」「学習者個々人への支援態度」「学習者の気持ちへの配慮」「教室全体あるいは教員への対応」から構成されており,ほぼ同じ因子構造を示していた.両者の支援形態は違うものの,これらの因子は学習者を支援する職種にとって共通して重視される資質であると言える.したがって,メンタとTAは同じ構成・内容の育成プログラムを適用できると考えられる. そこで,本年度は1年生の必修授業であるライティングのTA9人を対象に,研修(12回)を企画し,実施した.研修では,TA資質重視の因子構造をもとに作成した「TAガイドブック」を利用した.学習支援は,個々の学習者の理解度や課題の進捗状況等によって異なる.そのため,TAガイドブックは,TAが状況を把握し,その状況にあった対応を考えられるようなワーク形式とした.また,研修ではロールプレイやTA同士のピア・レビューを多く行った.学習者が実際に書いた文章を使ったロールプレイだったため,実践に近いトレーニングを行うことができた.TAを対象としたアンケートでは,「人に教えるための知識を得た.授業に関連する知識はもちろん,相手に対してどのような聞き方をしたり,どのような距離感や姿勢でいればよいかなど,傾聴に関するスキルも身につけることができた」などの感想が見られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度の計画は,1) メンタ育成プログラムのプロトタイプコースの開発,2) プロトタイプコースの実施までであったが,必要な資質の因子構造が同じことから,まずTAを対象とした研修(12回分)をプロトタイプとして開発し,実施した.参加したTAの感想はおおむね良好であった.しかしながら,TA資質の各因子の下位尺度得点について研修前と研修後を比較したところ,「学習者の気持ちへの配慮」は効果量大(d=0.80)であったが,「学習者個々人への支援態度」と「教室全体に対する対応」が小程度の効果量(d=0.32;d=0.26),「学習内容に関する専門知識」がほとんどなし(d=0.16)であった. この結果から,TAを担当したことにより,学習者に共感を示し,学習者が課題等に積極的に取り組めるように励ます態度が育まれていくと推測される.「学習内容に関する専門知識」については,TAの感想に「自分では疑問に思わなかったようなことを質問されたときに,意外とうまく言葉にできないことがあり,実ははっきりとはわかっていなかったということがわかった」なども見受けられた.TAを担当することにより,自分の理解不足を改めて意識する場合も多いと考えられる.この経験がTA自身の学習意欲向上に向かうような指導が必要である. 小程度の向上が見られた「学習者個別への対応」「教室全体に対する対応」については,「学習者の表情や反応を見ながら,自分がどう振る舞えば効果的に伝えることができるかがわかったような気がする」など成長を示すコメントがあるものの,「学生に声をかけるタイミングが難しかった」「スマホいじりに対して,どのように注意すればよいかわからない」など個々の状況への対応に悩んでいるコメントがあった.実際に困った場面を共有し,その対応方法をディスカッションするなどのトレーニングがさらに必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の計画は,今年度に引き続き,TA育成プログラムのプロトタイプコースの開発・実施・検証である.2016年度に実施したTA向けの研修において明らかになった問題点の改善を図る. また,2016年度は,1年生の必修授業であるライティングのTA9人が対象であったが,2017年度は他の科目のTAも対象とし,科目共通の研修を開発・実施する.
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Causes of Carryover |
TA育成については,公立はこだて未来大学特別研究として助成いただいている.人件費や謝金は,公立はこだて未来大学の特別研究から支出した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者は函館在住,研究分担者は東京在住のため,打ち合わせのための旅費が生じる.
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