2014 Fiscal Year Research-status Report
ボツリヌス毒素の疼痛抑制効果の分子基盤解明と応用的研究
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26350499
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 由弥子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20403496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松香 芳三 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (90243477)
小出 隆規 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70322253)
丸濱 功太郎 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60712792)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細菌 / ボツリヌス神経毒素 / 疼痛抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
A型とE型ボツリヌス神経毒素(BoNT/A、BoNT/E)の疼痛抑制効果の分子機序を解明するため、初年度は解析ツールの開発や作製を行った。 定量的で高感度なボツリヌス毒素活性測定法の開発:BoNT/A、BoNT/Eについて、それぞれFRET基質を設計、作製した。各血清型のBoNTで切断を試みたところ、いずれの基質も型特異的に切断されることが明らかとなった。他方で、BoNTの濃縮法の検討を行い、BoNT神経細胞結合ドメイン(BoNT-Hc)の抗体でBoNTを効率よく濃縮することに成功した。 抗SNAP-25抗体の作製:これまでの研究から、BoNT/Aの疼痛抑制効果は、BoNTが知覚神経節でSNAP-25を切断、神経伝達物質の遊離を阻害することで得られると推察された。そこで、知覚神経節におけるSNAP-25の発現とBoNT投与によるSNAP-25の切断を証明するため、4種類の抗SNAP-25ペプチド抗体;①完全長SNAP-25とBoNT切断産物(N側)を認識する抗体、② BoNT/A切断産物(N側)特異抗体、③BoNT/E切断産物(N側)特異抗体、④ 完全長SNAP-25特異抗体の作製を試みた。ウェスタン解析により各抗体を評価したところ、いずれも設計どおりの抗体が出来ていた。①と②については市販の抗体が利用可能であるが、今回作製した抗体の方が特異性と感度ですぐれていることが判明した。そして、これらの抗体を用いたウェスタン解析でラット三叉神経節組織でSNAP-25が発現していることを確認した。 BoNTの蛍光標識:BoNTの動態を解析するため、BoNT-Hc組換えタンパク質の蛍光標識を試みた。E型については発現が上手く行かなかったが、A型については蛍光標識に成功したので、蛍光標識BoNT/A-Hcを用いてBoNTの三叉神経節細胞内への取り込みや軸索輸送実験の予備的検討を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
定量的で高感度なボツリヌス毒素活性測定法の開発では、BoNT/AとBoNT/Eについて、血清型特異的なFRET基質を作製することに成功した。BoNTの検出下限はいずれも1.5 ng/0.1 mlで、まだ目標値(検出下限:100 pg以下)に達していないが、FRET基質の最適化とBoNT濃縮法との組み合わせにより、目標値を十分に達成できると考えられた。 SNAP-25に対する各種の抗SNAP-25ペプチド抗体の作製を試み、すべて設計どおりの良好な抗体を得ることに成功した。これにより、知覚神経節におけるBoNTによるSNAP-25切断の解析、BoNTの中枢への作用の解析などが可能となり、次年度以降の研究が大きく進展すると期待された。 BoNT/Eについてはまだ蛍光標識に至っていないが、 BoNT/A-Hcの蛍光標識に成功して、三叉神経節細胞への取り込みや軸索輸送実験の検討を開始することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおりに研究を進める予定である。 定量的で高感度なボツリヌス毒素活性測定法の開発:FRET基質の最適化を行うとともに、BoNTの濃縮法との組合せにより、検出感度の向上を図り、目標値(検出下限:100 pg以下)を目指す。 三叉神経節でのBoNT /A、BoNT /EによるSNAP-25切断の解析:知覚神経節に到達したBoNTが、知覚神経節で機能してSNAP-25を切断していることをin vitroとin vitroの系で証明する。 BoNTの軸索輸送の解析:先ずは、BoNT/Eの蛍光標識を成功させる。そして、BoNTが軸索輸送により三叉神経節に到達するか否かを、蛍光標識BoNT/A-Hcと蛍光標識BoNT/E-Hc を用いてin vitroとin vivoの系で検証する。
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Causes of Carryover |
物品を予定していた価格よりも安く購入できたこと、当初共同実験室の使用料金を計上していたが、無償で機器を使用することができたことなどにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画どおり、三叉神経節におけるBoNTによるSNAP-25切断の解析、BoNTの軸索輸送の解析を行う。したがって、ラットや三叉神経節細胞を培養するための細胞培養関連試薬・消耗品を購入する予定である。また、BoNTの動態を解析するために、BoNTを蛍光標識するので、蛍光色素やラベリングに必要な消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)