2014 Fiscal Year Research-status Report
介護・治療へのフィードバックを目指した半固形化栄養剤の調製とその物性評価
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26350671
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
淺香 隆 東海大学, 工学部, 教授 (50266376)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 半固形化栄養剤 / 濃厚栄養剤 / 半固形化 / 凝固剤 / 粘度 / ずり速度 / テクスチャー / 化学反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を迎え、摂食・嚥下障害患者の増加と共に経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)の導入症例数も増加している。PEG導入患者には濃厚栄養剤が投与されるが、下痢による脱水をはじめ胃食道逆流に伴う誤嚥や誤嚥性肺炎等の合併症が問題となっている。そこで、臨床の現場では濃厚栄養剤へ増粘・凝固剤を添加し半固形態として下痢や胃食道逆流を防止すると共に、短時間投与を可能とした「半固形化栄養法」が浸透している。 本研究では、半固形化栄養剤調製時の粘度急変や離水といった問題の発生要因を探求することを目的に、「脱水加工により化学反応を停止」し、復水後の物性変化や離水状況を定量的に解析して、よりよい調製情報を患者とその家族、医療関係者へ提供・発信することを目標としている。 平成26年度は、「市販の濃厚栄養剤と増粘・凝固剤を組み合わせて調製した半固形化栄養剤の物性評価」を計画しており、まず、市販の凝固剤として多用される寒天(伊那食品工業製介護食用寒天)と増粘多糖類製剤2種類(ニュートリー製ソフティアGとソフティアENS)、濃厚栄養剤3種類(ネスレヘルスサイエンス製アイソカルRTU、クリニコ製CZ-Hi、明治製メイバランス1.0)とを組み合わせて半固形化栄養剤を自己調製し物性評価を行ったところ、(1)メーカー呈示の凝固剤濃度となるように調製しても、寒天などでは粘度20000mPa・sを満足しないため、組み合わせに応じて凝固剤の増量が必要となる、(2)今回用いた凝固剤は全て加熱が必要であり、加熱により濃厚栄養剤に含まれる成分が変質したり水分が蒸発したりすることにより、得られる半固形化栄養剤の物性にバラツキが生じたが、方法や手技の検討を図ることによりバラツキは低減できた。 一方でこの結果は、均質な半固形化栄養剤を家庭や病院等で調製・提供することの困難さを示唆することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
助成金を申請した際の装置導入に係る物品費に対し、助成金交付額が減額されたことも含め、平成26年度の購入設備である「スプレードライヤ」の導入を見送ったため、本年度はまず、市販の濃厚栄養剤と増粘・凝固剤を組み合わせて調製した半固形化栄養剤の物性評価を行ったところ、凝固剤と濃厚栄養剤との組み合わせをはじめ、凝固剤濃度、調製温度などのパラメータが物性に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。 特に、加熱型の凝固剤を用いた場合には、調製温度や経過時間、凝固剤濃度と水分量のコントロールが難しく、さらにこれら全てのパラメータが化学反応に影響することから、本研究の目的である「化学反応(ゲル化)を停止する」ことは困難であることが判明した。よって、加熱型凝固剤を用いた脱水等の加工は行わなかった。 しかし、市販品には非加熱で半固形化が可能な凝固剤が数種類存在するため、現在、非加熱型凝固剤を入手して濃厚栄養剤と組み合わせ、凝固過程や基礎的な物性に関する予備試験を進めている。さらに平成27年度の「スプレードライヤ」導入を企図し、装置メーカーと連携して装置の運転条件の策定を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように、平成27年度以降は非加熱型凝固剤を用いた半固形化栄養剤の調製を主とし、平成27年度は平成26年度には実施できなかった予備凍結後に真空凍結乾燥を行う、また「スプレードライヤ」の導入により直接乾燥を行うことにより、脱水して「化学反応(ゲル化)を停止」し、つづいて復水を行い、種々の物性評価を通して化学反応や離水等の要因を明らかにする予定である。そこで平成27年度はできる限り遅れを取り戻し、平成28年度には研究実施計画通りに研究を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
交付された物品費の範囲内で研究に必要となる装置の検討に時間を要し、結果として平成26年度内の納品が不可能であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の交付助成金と合算し、装置の導入ならびに付帯する物品や研究用消耗品の購入に充当する。
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