2015 Fiscal Year Research-status Report
子どものピア関係の発達といじめ発生の関連における臨床発達的研究
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26350929
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
小林 勝年 鳥取大学, 地域学部, 教授 (30326623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 千枝 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (00412916)
田中 大介 鳥取大学, 地域学部, 准教授 (20547947)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | いじめ / 役割取得検査 / 他者視点 / 小学生 / 学力との相関 / 社会性 / 親の関わり |
Outline of Annual Research Achievements |
いじめの発生における心理学的諸問題を明らかにするためにまずはその基礎研究として他者の気持ちをいかに子どもたちは理解していくのか-という作業仮説を立て、Selman(1976)の社会的視点取得能力を参考に作成された荒木(1989)の役割取得検査を小学校3,4年生の子どもたち130名を対象に実施しその結果を分析した。結果は今から約30年前に実施された荒木の結果と比べると随分低く今日の子どもたちの社会性の未熟さを推察することができた。また他者視点の取得水準と学力検査との相関を調べてみたが有意な相関は認められずTurielが指摘したように「他者を理解する」とは算数や国語などの教科学習によって獲得される能力以上に複合的な能力として認識することができ、道徳教育による抑制効果の限界も示唆された。さらに他者視点の取得が困難な子どもたちの特徴としては葛藤場面における判断や理解を問うているのに予定調和的に平和な解決を導こうとする傾向が強くピアジェが指摘したように「矛盾を矛盾として捉えていない」反応や自己中心的な解釈・状況変化を無視した固定的視点による説明をしたがる反応が多く認められた。また、いじめが発生した場合の対応としてWalter B Roberts,Jrが示した「学校に関与していく親」と「学校に関与しない親」という2分類を参考にしながら保護者に聞き取り調査を行ったところいずれもいじめ解決という問題意識から学校への要求を高めていくとか、反対に学校を当てにしないという極端な行動に展開していく傾向が示され学校との協力的関係において計画的・生産的にいじめ解決に対処する困難さも確認することができ、今日のいじめ状況より根本的な解決に至っていない一因として考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質問紙調査による海外比較研究が遅れている。用語や表現により文化的な差が著しく生じると研究そのものの信用性を無くしかねない。そこで日本語で用意した質問が適切な翻訳されているかどうかの吟味に時間がかかっている。また研究協力校の選択・依頼にも時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
役割取得検査について学年を拡張して実施し年齢的特徴を導き出したい。できたら複数校で実施したい。保護者の学校への協力姿勢についても予備的に明らかにされた仮説を質問紙調査等で検証できないか検討していきたい。
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Causes of Carryover |
海外調査に行けなかったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外調査に行く予定である
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