2014 Fiscal Year Research-status Report
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26350979
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 学 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (10334674)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 海馬 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、海馬CA2領域を介した神経回路の担う記憶学習や社会的行動に果たす役割を解明することであり、シナプス伝達、可塑性を担う分子を標的としたCA2選択的遺伝子改変マウスの作製と解析を進めている。そのため、(1) Cre 活性およびテトラサイクリン投与依存的に、CA2領域のシナプス伝達を阻害する破傷風毒素軽鎖(TeNT)を発現するマウスを作製し、電気生理学的解析、行動学的解析を行うこと、(2)CA2で重要な機能を果たしていると予想される分子を標的としてCre/loxP 組換え系を用いたCA2 選択的コンディショナルノックアウト(KO) マウスを作製、または、(3) Cre 活性依存的またはテトラサイクリン依存的にCRISPR/Casシステムを用いてCA2 選択的にKOして(1)と同様に解析することを計画した。 (1)については、Rgs14-floxed STOP-tTAノックインマウスを作製し使用することで、TeNT発現マウスを樹立することができた。このマウスにおいて長期間のTeNTの発現が異常行動、特に攻撃性の亢進という極めて興味深い表現型を示すことが見出されたが、その行動の責任領域がCA2であるのか、現在、免疫組織化学的解析及び他のレポーターマウス等を用いることで検証中である。(2)について、S100b-, Abat-iCreノックインマウスを用いて、CA2選択的コンディショナルKOマウス樹立のための交配を継続している。(3)について、数種の標的遺伝子を対象とした変異導入条件を検証し、少なくともES細胞においてはゲノムDNAへの変異導入が可能であることを確認できた。現在、Cas9発現マウスとCreまたはtTAドライバーマウスとの交配による新規コンディショナルKOマウス作製法を開発中であり、その手法が確立されしだいCA2選択的KOマウス作製を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)Rgs14-tTA-TeNT発現マウスでは、ドキシサイクリン非投与による恒常的なTeNT発現が新生仔の致死を引き起こすことが明らかとなり、繁殖効率が下がったことで充分な解析個体数が得られず、網羅的な行動テストバッテリーを開始するまで至らなかった。また、適切なレポーターマウスが存在しなかったためにtTA及びTeNTの発現領域を確定させることができなかった。現在はRgs14-tTA-TeNT発現マウスへのドキシサイクリン投与条件を検討し、繁殖効率を高めることができている。また、tTA活性細胞を的確に標識できるレポーターマウスも入手して、活性を検証中である。 (2)S100b-、Abat-iCreノックインマウスを用いてCA2選択的コンディショナルKOマウス樹立のための交配を継続しているが、これらのマウスの繁殖効率がやや低い(原因は不明である)ため、解析には至っていない。また現在、Cre活性の詳細について検証を行っており、活性が興奮性神経細胞以外であった場合には当該研究とは利用目的が合致しないため、速やかに他のCre発現マウスとの交配を行う。 (3) Cre 活性依存的またはテトラサイクリン依存的Cas9発現マウスを入手し、さらに標的遺伝子に対し効率的に変異を導入する諸条件を決定することができた。別の研究課題により開発中である、レンチウイルスベクターを利用した新規コンディショナルKOマウス作製法によりCA2選択的KOマウス作製を進めるための準備は充分に整っていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) Rgs14-tTA-TeNT発現マウスへのRgs14-tTA-TeNT発現マウスでのtTA及びTeNTの発現領域を確定させ、社会的行動を評価するテストを含めた網羅的行動テストバッテリーを開始することができる。さらに別のCA2選択的tTA発現マウスの開発も継続している。 (2)(3) 近年のCRISPR/Casシステムの発展により、本研究の計画立案当初よりも遥かに迅速にコンディショナルKOマウスが作製可能となっている。現在までにマウス作製に使用してきた遺伝子(Cacng5, Rgs14, Abat, S100b)に加え、別の候補遺伝子(Amigo2, Pcp4, α-actinin等)も加えて、よりCA2選択性の高いドライバーマウス開発を行ってゆく。さらに標的遺伝子にもシナプス可塑性に重要なリン酸化酵素や脱リン酸化酵素等を加える。既存、新規のドライバーマウスを組み合わせ、さらに開発中のコンディショナルKOマウス作製法を適用し、CA2選択性が高いKOの系統から順次、網羅的行動テストバッテリーによる解析を進める。 さらに(1)~(3)で得られた知見をもとに、CA2 領域の機能的役割を明確にする解析を行う。具体的には、記憶の獲得、想起、記銘におけるCA2 の機能や、DG, CA3 の担うパターンセパレーション、パターンコンプリーションへの影響を検証する行動学的解析を中心に行う。一方で、CA2 と連絡する神経細胞のコンディショナル遺伝子改変マウスの作製を試みる。特にCA2 へ投射していると考えられる乳頭体上核を標的として、Cre 発現またはtTA、rtTA 発現ウイルスベクターのインジェクションにより神経細胞死誘導またはシナプス伝達遮断実験を先行して、海馬のシータ波および空間学習能力への影響を評価する。
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Causes of Carryover |
マウスの繁殖、維持にかかる動物購入費、飼育費および分子生物学的、生化学的解析、遺伝子改変マウス作製に要する試薬類を物品費190万円として計上した。電気生理学的解析、組織学的解析は、それぞれ研究協力者に依頼することとなるため、研究打ち合わせのための国内旅費と研究成果の発表のための国内外の旅費として90 万円を計上した。また、動物飼育の作業補助および実験補助1名の謝金に40万円を充てた。また、論文投稿にかかる諸経費として60 万円を計上した。 現時点で研究全体の基本計画にはほぼ変更は生じていない。従って、計上した経費総額には変更が無いが、遺伝子変異マウスの繁殖効率低下等の理由により研究の推進状況に若干の遅延が生じたため、計上した経費を次年度にて各項目においてそのまま使用することになる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額67万円の内訳として、全体の比率にほぼ従って物品費35万円、旅費15 万円、謝金7万円、諸経費10 万円を増加させて計上する予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Cdk5/p35 is required for motor coordination and cerebellar plasticity.2014
Author(s)
He X, Ishizeki M, Mita N, Wada S, Araki Y, Ogura H, Abe M, Yamazaki M, Sakimura K, Mikoshiba K, Inoue T, Ohshima T
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Journal Title
J Neurochem
Volume: 13
Pages: 53-64
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Visualization of Corticotropin-Releasing Factor Neurons by Fluorescent Proteins in the Mouse Brain and Characterization of Labeled Neurons in the Paraventricular Nucleus of the Hypothalamus.2014
Author(s)
Itoi K, Talukder AH, Fuse T, Kaneko T, Ozawa R, Sato T, Sugaya T, Uchida K, Yamazaki M, Abe M, Natsume R, Sakimura K.
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 155
Pages: 4054-4060
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] IL1RAPL1 knockout mice show spine density decrease, learning deficiency, hyperactivity and reduced anxiety-like behaviours.2014
Author(s)
Yasumura M, Yoshida T, Yamazaki M, Abe M, Natsume R, Kanno K, Uemura T, Takao K, Sakimura K, Kikusui T, Miyakawa T, Mishina M.
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Journal Title
Sci Rep
Volume: 4
Pages: 6613
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Proteasome dysfunction induces muscle growth defects and protein aggregation.2014
Author(s)
. Kitajima Y, Tashiro Y, Suzuki N, Warita H, Kato M, Tateyama M, Ando R, Izumi R, Yamazaki M, Abe M, Sakimura K, Ito H, Urushitani M, Nagatomi R, Takahashi R, Aoki M.
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Journal Title
J Cell Sci
Volume: 127
Pages: 5204-5217
DOI
Peer Reviewed
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