2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Impact of East Asian FDI on Industrial Upgrading and its Challenges in Latin America
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26360025
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
藤井 嘉祥 専修大学, 経済学部, 兼任講師 (30625190)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グアテマラ / メキシコ / 中米 / アパレル産業 / バリューチェーン / 産業高度化 / 社会的高度化 / 労働運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はメキシコ・中米のアパレル産業のバリューチェーンにおける東アジア企業の分析によって、産業高度化の現状を明らかにするとともに、企業中心的な産業高度化論を多様な主体の国境を越えた相互作用を基盤とする高度化論へと発展させることを目的とする。そのため、本研究は①環太平洋国際分業の再編成、②東アジア企業の輸出生産戦略、③労使関係の三つの領域の統合的な分析を行ってきた。 28年度は前年度までに得られた統計資料と聞き取り調査の一次資料の整理および分析を行うとともに、上記②との関連で東アジア企業と国内セクターとの連関の実態を明らかにするために、平成29年2月~3月にかけて、グアテマラとメキシコにおいて三週間の現地調査を実施した。調査から、グアテマラでは韓国セクターと国内セクターの間の調達・下請けの連関が希薄なのに対して、メキシコ・ユカタン州の香港企業は調達を国内セクターに頼りつつ、自社一括生産の戦略により、ローカルな下請け構造を持たないことが明らかになった。 以上の研究実績には次のような意義がある。第一に、韓国セクターに見られる調達・生産の同胞充足的なネットワーク形成はクラスターの高度化を促進しているが、香港企業に見られる調達面での国内セクターとの連関重視と自社充足的な生産は、さらなる直接投資の呼び寄せにはつながらず、クラスター形成の推進力が弱いことを明らかにした点である。第二に、グアテマラの韓国クラスター内部のサプライチェーンの複雑化が、クラスターの中核的韓国企業による下請け工場の監視を困難にしており、香港企業が自社一括生産によって地域社会貢献をも含む労務管理に注力できていることと比べると、生産チェーンの拡大は社会的高度化を妨げるリスク要因になることを明らかにしたことは、クラスターの型と労働人権の擁護を含む社会的高度化との関連の分析の視点の提供という点で意義がある。
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