2016 Fiscal Year Research-status Report
女性大統領と女性の政治的代表性:韓国の朴槿惠を中心に
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26360042
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
申 キヨン お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 准教授 (00514291)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 女性大統領 / 朴槿恵 / 政治的代表性 / 韓国 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年の研究目的は1)大統領選で挙げた公約と比較しながら、朴大統領の政策について調査・分析すること、2)総選挙の参与観察を行うことであった。2016年度前期は在外研究のため韓国ソウル市で滞在し、フィールドワークを実施することができた。とりわけ、4月に行われた第20回韓国総選挙を観察し、女性大統領が総選挙における女性の代表性に及ぼす影響を考察した。 これまでの成果から明らかになったことは、朴大統領は「女性」大統領を強調して当選されたが、当選後には「女性」をキーワードにした政策を打ち出すことには消極的であった。また、政治分野における女性の代表性の向上についても目立った成果を出せなかった。朴大統領の与党は、第20回総選挙においても依然として少数の女性候補者しか立てなかっただけでなく、比例代表の議席を減らし女性クオータを減らす結果を招いた。その結果、クオータ制度が導入されているにもかかわらず、女性議員はわずか17%に留まり、3回連続わずかの増加しか果たせなかった。 これらの分析をまとめて、韓国語論文の発表、海外の政治学会での報告、日本国内の研究会で研究発表を行った。 さらに、2016年3月には、「なぜアメリカでは女性大統領は誕生しなかったのか」を題した国際シンポジウムを開催し、女性大統領の政治的代表性を理論的に検討した。ヒラリ・クリントンが大統領候補者として戦ったアメリカの大統領選挙をジェンダー視点から分析し国際比較研究を試みた。国際シンポジウムには140人ほどの参加者が集まり、女性大統領に対する日本初の国際学術シンポジウムとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
韓国でのフィールドワークが実現でき、データ収集や総選挙の参与観察ができた。 収集したデータをもとに研究論文、研究会発表や学会で報告を行った。 2015年に投稿した論文は、6月に海外学術雑誌「Pacific Affairs」に発表された。 比較研究のために、国際シンポジウムも開催し広く社会発信もできた。
ただし、11月から朴大統領をめぐる韓国の政治状況が急変し、国会で朴大統領について弾劾決議が採択された。3月には憲法裁判所の判決が下され、弾劾が確定した。そのため、2016年後半は朴政権が事実上業務停止状態になり、研究内容に変化が生じた。3月には朴政権が終了したので、朴政権の政策分析は3年9ヶ月の在任任期に留まり、残りの研究期間は弾劾過程におけるジェンダー政治を対象にする必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年11月から朴大統領をめぐる韓国の政治状況が急変し、2017年3月に憲法裁判所によって弾劾が確定したことによって、2017年度の研究計画を当初の計画から変更せざるを得なくなった。当初の計画によると、最終年度は、論文の執筆や研究成果の発信に努める予定であった。ただし、大統領の弾劾という未曾有の政局を経ながら、「女性の政治的代表性」はこれまで以上に議論になった。したがって、2017年度は、2016年度まで行った研究成果をまとめ論文に執筆するとともに、弾劾の過程で明らかになった「女性大統領」をめぐる言説の分析を加えたい。 夏には弾劾過程について追加資料の収集を目的としてソウルにフィールドワークを実施する予定である。
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Research Products
(9 results)