2015 Fiscal Year Research-status Report
高等教育機関における観光教育のあり方に関する国際比較研究
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26360064
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
山田 良治 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 理事 (00135831)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 観光教育 / 職業重視主義 / サービス経済化 / ジェネリックスキル |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度の概要において、近年の観光教育の動向を「新職業重視主義」と特徴付けた。2015年度では、こうした傾向の台頭が、PBL重視などに見られる実学重視(裏を返せば座学軽視)の傾向、理系重視の反面としての文系不要論的傾向とどのように関連しているかというテーマを中心に分析を進めた。 こうした傾向は、「すぐに役に立つかどうか」という観点の強調に集約することができるが、その背景には観光産業を初めとするサービス経済化という経済の構造的な変化が横たわっている。比較的に流動性の高いサービス業においては、深い専門性よりは様々な状況変化に対応できる汎用的能力、いわゆるジェネリックスキルやコミュニケーション能力が求められる。 このことは、本来的には物事を深く認識する学術的・科学的思考とこれを背景に持つ社会的実践の両面の教育を必要とするものであるが、蛸壺化傾向を有する伝統的な文系的教育との矛盾を深化させた前者の側面は、蛸壺化を打破する学際的教育の拡充という正しい一面として現れつつも、他方では文系教育を軽視する傾向をも生み出してきたと考えられる。好むと好まざるにかかわらず学際的教育が求められる観光教育は、このような状況を打破する大きな可能性を持った分野であると考えられる。 2015年度においては、概略以上のような検討結果を、観光学術学会のフォーラム「大学における観光教育」において、「大学改革と観光教育」と題する報告を行った。また、和歌山大学観光学部における2015年度研究報告書において、世界と日本の観光教育の歴史と現状を「観光学と観光教育」と題する論文にとりまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)国際的な観光教育の動向をレビューしつつ、日本の観光教育の位置・特徴を分析し、公表した。 2)背景として進むサービス経済化との関連において上記の到達点を解明するとともに、観光教育を初めとする大学における文系教育の課題という視点において総括した。 これらの作業は、本研究テーマの中心的課題に沿ったものであり、当初計画通りの成果であると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2016年度においては、分析の射程をこうした観光教育の動向を規定すると考えられる日本の観光発展の経緯・特質と到達点に広げ、社会・経済の実態との関連において観光教育の意義と課題を総括する。
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Causes of Carryover |
実際の決済金額が支出予定額よりも少なく、わずかながら誤差が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文具費用等に合算する予定。
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