2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370027
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
吉川 孝 高知県立大学, 文化学部, 准教授 (20453219)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生き方 / 行為 / 感情 / 価値 / 現象学 / 志向性 / フッサール / ハイデガー |
Outline of Annual Research Achievements |
現象学的倫理学の立場からの生き方の倫理学の意義を検討する研究を進めることで、おもに次の3つの方向において成果をあげることができた。1.『ハイデガー・フォーラム』にて、フッサールとハイデガーの比較研究の成果を発表することができた。二人の哲学者のカントの哲学の受容の相違(フッサールは批判哲学を、ハイデガーは形而上学を重視すること)を指摘することで、生き方をめぐる現象学的倫理学のさまざまな可能性を明らかにする研究となった。2.『現象学年報』では、現代の英米系の行為論を踏まえたアクラシア問題を考察することができた。そこでは、アクラシア問題を問うことがなかった現象学的哲学の伝統が、自己統制型の主体には陥らない行為者の概念を確立していることが明らかになった。ヘアやデイヴィドソンなどの現代の英米哲学のアクラシア論の古典とは異なるアプローチの意義を示唆することができた。3.『心理学評論』には、ファッションという観点から生き方の問題を研究することができた。メルロ=ポンティや鷲田清一の現象学的身体論の批判的検討を行ったうえで、ベンヤミンやジンメルなどの20世紀初頭の哲学を視野に入れることができた。ファストファッションの台頭する21世紀のファッション批評を視野に収めながら、従来の身体の哲学の限界を見定めたことは、今後の研究にとって大きな意味をもつことになる。今後は、ケアの哲学を中心とする研究をすることで、さらに研究の射程を広げることを目指すことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複数の学会誌に論文を発表できた。さらには、英米系の行為論、ファッションの哲学などの多方面との関連から、生き方の倫理学の意義を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
英米系の倫理学や行為論との比較研究、看護学との交流のなかから、生き方の倫理学の可能性を模索する試みを行う。
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Causes of Carryover |
論文の刊行が遅れたため、校正のための資料の購入を次年度に行うことにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度の早い時期に文献購入や複写代として使用する。
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