2015 Fiscal Year Research-status Report
大谷探検隊・ドイツ探検隊収集の漢字仏典統合データベースの構築
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26370062
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
三谷 真澄 龍谷大学, 国際学部, 教授 (20411275)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / ドイツ / トルコ / 中国 / 旅順博物館 / 大谷探検隊 / ドイツトルファン探検隊 / 仏教写本 |
Outline of Annual Research Achievements |
大谷探検隊・ドイツ探検隊収集の漢字仏典統合データベースの構築に向け、既存データを精査するとともに、各地に分蔵される原資料を閲覧してデータベースに新知見を追加した。 これらの現地調査は、2012年度以降、「ゲッティンゲン科学アカデミー・ドイツ所蔵東洋写本目録編纂(KOHD)」部門の研究員であるSimone-Christiane Raschmann氏の協力のもとでおこなっている。 2015年9月1~7日の第一次出張では、暫定的データベースによって接合が推定された断片について、ベルリン国立図書館(Staatsbibliothek zu Berlin)では、既刊目録で明らかにされていなかった接合断片が10件以上存在することが確定した。「ベルリン・ブランデンブルク州立科学アカデミー(BBAW)・トルファン研究所」においても、U(ウイグル文字)に分類された資料の中に、これまで知られていなかった漢字面の含まれる1点について、大正蔵に同定される仏典の一部であることを確認した。 2016年3月19~24日の第二次出張では、既刊目録に掲載されていない『中論』や『成実論』を中心として12点を実見したほか、BBAWにおいて、Ch/U(漢字/ウイグル文字)、Mainzとして分類された資料の一部を実見し、目録作成に向けて最終段階にあることを相互に確認した。Raschmann氏との間で、既刊目録(3巻)記載データの修正が必要なものが約300件あることを含め最新情報を共有し、紙媒体での出版日時、出版方法、今後のデジタル目録の方向性等について綿密な協議をおこなった。 また、2015年度末に「大谷探検隊とイスタンブル大学図書館所蔵文書について(『大谷光瑞のトルコでの動向~「仏教」と「農業」のあいだ』pp.23-63)」を刊行し、ドイツ隊収集資料の一部である同図書館資料の一覧と新規同定情報を公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツのベルリン・ブランデンブルク州立科学アカデミー、および中国・旅順博物館関係者の協力を得て、漢字仏典統合データベースの構築のための基礎的資料を閲覧・新知見を加えることができた。 2015年度は、2回のドイツ・ベルリン出張をおこない、現物資料の調査をもとに、目録の内容について詳細な打合せをおこなった。また、大英図書館・国際敦煌プロジェクト(IDP)のSusan Whitfield氏と面談し、今後の研究や出版計画などについて意見交換をおこなうことができた。 ドイツ隊収集資料の一部であるイスタンブル大学図書館所蔵資料については、当初、漢字写本の全点閲覧、及び、同大学のOsman Sertkaya元教授、Ayse gül Sertkaya教授との全点図版を含む目録出版に関する交渉をおこなうため、トルコ出張を計画していたが、テロ事件の余波で叶わなかった。そこで、暫定目録(Osman SERTKAYA and Kogi KUDARA: A Provisional Catalogue of Central Asian Fragments preserved at The Library of Istanbul University,1987)作成後に判明した新規同定情報と全点リストを公開した(「研究実績の概要」参照)。 また、内外の研究業績の整理や研究者との研究交流や意見交換の際に利用する機材を購入したり、これまで入手できなかった古写本に関する内外の研究成果や書体の照合研究のための辞典類など、研究推進のための関連書籍を購入した。 以上のように、国外における研究の進捗状況、国内外における資料収集、およびこれまでの研究成果の公開を実現し、バランスよく進捗したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで蓄積してきたデータをもとに、漢字仏典写本の統合データベースの構築をおこない、現時点での最新情報を盛り込む予定である。データの精査や目録作成のため、専門的な職能を有する研究補助員をアルバイト採用し、ドイツ隊と大谷隊の収集した資料に関して、既刊目録や、従来構築してきたデータベースの合併・精査をおこなう。中国・旅順博物館所蔵のトルファン出土漢字資料(総断片数27,620点)、ドイツ・ベルリン市内所蔵資料(同6,040点)やトルコ・イスタンブル大学図書館所蔵資料(同200点)、出口常順師旧蔵資料(130点)などの関係資料を整理する。この他、2013年になって旅博所蔵資料と接合する断片が発見されたヘルシンキ国立図書館所蔵資料や、サンクトペテルブルク東洋研究所所蔵資料も、同系統の資料として併せて視野に入れ、研究成果をデータベースに盛り込み、大谷隊とドイツ隊収集資料の目録を完成させる。 ドイツの漢字資料については、最新目録の出版に向けた最終作業を加速し、2016年度中にChinese Buddhist Texts from the Berlin Turfan Collections, Volume 4(仮題)を出版する。第1巻(1,071件, 1965年)、第2巻(1,200件, 1975年)、第3巻(1,106件, 2005年)に続く第4巻として出版されるものので、ドイツ側研究者との共同研究による成果である。 また、最終年度にあたる2016年度には、これまでの研究成果を継承しながら、大英図書館・国際敦煌プロジェクト(IDP)のSusan Whitfield氏他の研究者を海外より招聘し、国際学術会議を開催して研究成果報告書としてまとめることを企図している。龍谷大学はIDP日本支局の役割を担っており、可能であれば、同サイトを活用して、上記目録やデータベースを公開する準備を進めたい。
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Causes of Carryover |
同時に受けていた学内資金によってアルバイトを採用して出版物の版下作成作業等をおこなったが、当該資金の学内規定および、雇用期間の問題もあって科研費の直接経費を使用しなかった。 また、大学業務等の影響で長期にわたる出張ができなかったことや、当初予定していたトルコ出張については、イスタンブル市内でおこったテロ事件によって、情勢が不安定となったため実行できなかった。さらに、今年度はこれまで購入していなかった出版物を購入したが、その中には、図録等で、次年度以降も順次刊行予定のものが含まれていたため、次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
直接経費により複数名のアルバイトを雇用し、データ精査や目録作成をおこない、最終年度に統合データベースを構築する。次年度刊行予定の古写本に関する書籍(図録)を購入費として使用するほか、最終年度に予定している国際学術会議の開催に充てる。 この会議には大英博物館・国際敦煌プロジェクトの関係者も含まれ、国内外の研究者を招聘する予定である。現時点では、「中央アジア出土の仏教写本研究とデジタル化」を中心とする国際学術会議として、11月中旬を期して、関係者と交渉を進めている。積極的にデジタル化とインターネット公開を推進してきたIDPおよびIDPの日本支局である龍谷大学古典籍デジタルアーカイブ研究センターの協力も得て開催する。また、旅順博物館関係者の招聘については学内の別経費を検討している。
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