2015 Fiscal Year Research-status Report
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26370090
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
鷲巣 力 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (30712210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 素明 立命館大学, 文学部, 教授 (40211825)
渡辺 公三 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (70159242)
中川 成美 立命館大学, 文学部, 教授 (70198034)
福間 良明 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (70380144)
根津 朝彦 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70710044)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サルトル / 知識人論 / 全体的理解 / 百科辞典編集 / 啓蒙精神 / 話し言葉 / 日本人の思想 / 反戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は『羊の歌』を精読しながら、加藤の生涯をたどりながら、「知の世界」の形成について概要をつかみながら、各研究員の問題意識を確認した。本年度はその延長上に、いくつかの主題の研究会を催した。ひとつはフランス留学で得たフランス的なものの考え方とジャン=ポール・サルトルとの比較検討である(加國研究員担当)。加藤がサルトルの知識人論に大きな影響を受けていることを確認した。そして対象の全体的理解という視点も、サルトルだけではないが、サルトルに負うところが大きいと思われる。 この全体的理解という方法は、加藤が編集長としてかかわった平凡社の「大百科事典」編集における加藤の果たした役割に現れているに違いない、と判断して、その実際を確認するために、加藤の片腕として編集長補佐を務めた龍澤武氏を招聘して、「百科辞典編集における加藤周一」という報告を受けた。加藤の百科辞典編集の根底には啓蒙精神があることが確認された。すなわち、いかに理解させるか、という動機が強くあった。 このいかに伝えるかという問題意識は、とりわけテレビ番組における「話し言葉」の問題として表れている、という指摘を桜井研究員から受けて、テレビ番組における実際の加藤の「話し言葉」を確認し、分析した。そこには「書き言葉」とは異なる表現があった。 一方、加藤の17歳から22歳にわたって綴られた「青春ノート」8冊を読むだけではなく、これをデジタルアーカイブ化することによって、加藤の思想の原点を知ることを目指した。このデジタルアーカイブ化は、思いのほか、時間と労力がかかる作業であったが、28年4月に開設する「加藤周一文庫」の目玉商品として、研究者のみならず、一般の読者にも公開することとした。この「青春ノート」を精読したが、加藤は早くも、20歳前後で、生涯にわたる主題「日本人のものの考え方」に強い関心を示し、反戦の姿勢をもったことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度には加藤自身が「蓄積の時代」と呼んでいるブリティッシュ・コロンビア大学で、加藤の研究がどのように進んでいたかを図書館蔵書から確認する予定であった。しかし、「加藤周一文庫」を28年4月に開設することとなり、研究チームが素材としている「青春ノート」をデジタルアーカイブ化することが焦眉の急となり、この作業に忙殺されることとなり、ブリティッシュ・コロンビア大学に調査研究に行くことができなかった。そのために日本文学史研究の基礎作業が行われないままに時間を費やした。 同じく、加藤がフランスに行った時代が、フランス第四共和政の時代であったが、この時代にフランス留学をしたことは加藤に大きな影響を与えたと思われるが、その研究を担当した渡辺研究員が副総長の仕事に多大の時間を費やすこととなり、フランスへの調査研究をすることができなかった。 主としてこの二つの調査研究が進まなかったことが遅れる要因となった。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は三年の科研費の最終年度であり、研究の社会的発信もおこなっていく。そのための具体策として、27年度に加藤研究の基礎となる手稿ノート類のうち、加藤が17歳から22歳の時につづった「青春ノート」8冊のデジタルアーカイブ化を行なったが、28年度はその延長線上にある二つの冊子型ノート「Notes on Arts」と「1946、1947 Journal Intime」のデジタルアーカイブ化を推進する。 第二に、27年度中に準備を進めた「土曜講座」を5月に開催する。ただし、そのうちの14日に予定した樋口陽一氏の講座が、爆破予告事件により延期になったので、同氏の講演を10月もしくは11月に延期すると同時に、延期された土曜講座を第一回として、「加藤周一記念講演会」を定期的に(1年に一回程度)開催するように企画立案する。 第三に、加藤周一文庫開設記念講演会を軸に、これまでの研究会の記録を単行本もしくは報告書として刊行する計画を進める。 第四に、前二年と同様に、研究会を開催する。28年度はまだ発表していない研究員を中心にして行っていきたいと考える。 第五に、加藤周一と丸山眞男を比較研究するためにも、丸山文庫との提携を模索し、展示や合同の講演会なども企画する。
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Causes of Carryover |
国際的知識人加藤周一の思想史的研究を進めるには、加藤が長く滞在したカナダのブリティッシュ・コロンビア大学やフランスでの調査が必要だと計画していた。そのためにカナダへの旅費、フランスへの旅費を想定していたが、研究がそこまで進まなかったことが第一の理由である。 第二の理由はその前に加藤の思想と行動の原点である手稿ノートの、とりわけ17歳から22歳までにわたって書かれた「青春ノート」の精査が必要であるという認識に達した。同時に、加藤周一文庫を開設するにあたり、この「青春ノート」を社会的に発表し、研究者や広く市民にも利用できる形にする必要性を考えた。そしてこの「青春ノート」をデジタルアーカイブ化することの急務を認識した。こうして若い大学院生らの手によってデジタルアーカイブ化の作業を急いだ。その人件費は膨らんだが、旅費の予算ほどには達しなかったために、差が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の直接経費と次年度使用額とを合算するとおよそ120万円ほどになるが、これを使って、さらに戦後初期に書かれた手稿ノートの精査と、そのデジタルアーカイブ化の推進をすることが、加藤研究にとって必要不可欠な作業であると認識している。少なくとも「Notes on Arts」と「1946、1947 Journal Intime」という二つのノート。これは加藤の美術論の基本となるノートと戦後初期の日記について精査することを方針として決めている。そしてこれらのノートについて、デジタルアーカイブ化の作業を進めたい。 カナダのブリティッシュ・コロンビア大学への調査旅行とパリへの調査旅行については、規模を縮小し、かつ他から得た寄付金を使って、行なう予定である。
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Research Products
(3 results)