2014 Fiscal Year Research-status Report
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26370187
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
江村 公 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (50534062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 芸術 / 近代美術 / ロシア・アヴァンギャルド / 記憶文化研究 / 現代美術 / ロシア革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は8-9月の海外出張にて、ペテルブルク、モスクワ、ロンドンを訪問した。ペテルブルクでは、エルミタージュ美術館コレクション創立250年記念にあわせてロシアで初めて開催された、「マニフェスタ10」を視察した。また、モスクワでは「マニフェスタ10」に連動する現代アートの展覧会、マネージュでの第一次世界大戦の記憶に関する大規模な展覧会や、イギリスのコレクションによる第一次世界大戦時の記録写真についての企画展示を実見した。さらに、ロンドンのテート・モダンではマレーヴィチの回顧展を訪問した。《黒い四角形》が始めて公開されてから、ほぼ100年、メモリアルという観点からは、きわめて重要な企画展である。こうした現在の芸術作品やキュレーションを通して、近代と現代美術の記念の形式についての調査を集中して行なうことができた。こうした展覧会の実見と資料収集の成果を踏まえ、表象文化論学会で1917年の革命直後の記念碑をめぐる論争について口答発表をおこなった。 くわえて、ドイツの現代アーティストであるイザ・ゲンツケンへの「歴史的アヴァンギャルド」の影響を考察し、そのインスタレーションの形式とコメモレーションの方法について論じた研究ノートを京都造形芸術大学紀要に発表した。 平成27年の3月には、本年度8月に行なわれる国際学会での研究発表テーマについての資料を、おもに早稲田大学と国立近代美術館や東京都現代美術館の資料室で収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、勤務先の移動があったため、仕事の引き継ぎ等の影響で、本年3月に計画していたロシアでの文献調査を延期せざるを得なかったため、当初の予定よりも文献収集が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度8月には、東京の幕張で開催されるICCES(International Council for Central and East Europian Studies)の世界大会にて、研究発表を行なう。すでに、エントリーは完了しており、8月まではその準備に集中する。また、ペテルブルクとモスクワを中心に国立図書館や公文書館を中心に、引き続き文献調査を行なう。さらに、昨年視察したペテルブルクでの「マニフェスタ10」の実見を踏まえ、収集済みの関連文献をもとに、研究報告を発表する。戦時共産主義時代の記念碑論争と場所の記憶に関して、紀要等に論文を投稿する予定である。 また、本年度後半は、「マニフェスタ10」関連資料から明らかになった、革命期の芸術批評家ニコライ・プーニンによる、エルミタージュ美術館での現代美術展の企画や、ロシア美術館運営への関与、陶芸工房への参画などの詳細を明らかにするべく、ペテルブルクでの現地調査をおこないたい。これにより、革命期の文化行政の変革のなかで、美術館が「記憶の場」としてどのような役割を担ったのかを明らかにする。あわせて、同時期のペテルブルクの心理学者が群衆とそれを組織化する手段として、芸術作品をどのようにとらえていたのかについても考察をすすめる。
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Causes of Carryover |
昨年度は海外出張を年度末の2-3月にも予定していたが、勤務先の移動が生じ、仕事内容等の引き継ぎの必要があったため、これを延期せざるをえず、旅費を繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料整理のため、非接触型のスキャナー、外付けメモリー、また、資料記録用のデジタル・カメラを購入する。なお、残額は出張費に用いる。
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