2017 Fiscal Year Annual Research Report
Memorial art works in the Russian Revolutionary era and its influence on contemporary Art
Project/Area Number |
26370187
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
江村 公 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 特任講師 (50534062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロシア・アヴァンギャルド / 記憶文化研究 / 近代芸術 / 現代芸術 / ロシア革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画最終年である平成29年度は、海外出張での資料収集に集中的に取り組んだ。9月は、十月革命前後の芸術組織改編に携わった芸術批評家ニコライ・プーニンに関する資料を、サンクトペテルブルクの国会図書館で収集し、さらにプーニンの個人アーカイヴを管理している遺族に面会し、意見交換を行なった。この成果をもとに、日本ロシア文学会全国大会において「メディエーターとしてのニコライ・プーニンーー十月革命後の芸術組織改編の中で」と題し、研究発表を行なった。本発表はエルミタージュ美術館で最初の現代アート展を企画したプーニンの試みを現代的なメディエーターの概念から再考し、現代アートによる美術コレクションの収集とその展示が新たな記憶の形成にどのように関わっているかを明らかにしようとするものである。 さらに同9月には、ドイツでの芸術祭、カッセルのドクメンタ14とミュンスターでの彫刻プロジェクトを視察した。今回のドクメンタではキュレーターがポーランド人であったこともあり、とりわけヨーロッパ東側からの視点から、ロシア・東欧の重要な作品が展示されていた。ミュンスターでは都市におけるモニュメント的な作品だけでなく、映像作品も数多く取り上げられることで、都市の記憶のサイト・スペシフィックな表象の形式が変化していることを実見できた。 平成30年3月のロシア出張では、モスクワの現代美術館〈ガレージ〉の付属図書館で近年刊行されたロシア美術の資料を確認し、サンクトペテルブルクでは再度プーニンの遺族と研究に関して意見交換を行なった。この際、プーニンと遺族がかつて住み、現在は詩人アンナ・アフマートヴァの家博物館として一般に公開されているファンタンスキー・ドムでの、場所の記憶をめぐる講演会を聴講した。そこで語られた遺族の個人的記憶は、スターリン時代を生きた人々の集合的記憶に重なっているという意味で、非常に有益だった。
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