2016 Fiscal Year Annual Research Report
A study regarding to generation of expression in Early Japanese Literature thorough "Shosoin Documents"
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26370220
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Research Institution | Hagoromo International University |
Principal Investigator |
中川 ゆかり 羽衣国際大学, 人間生活学部, 教授 (30168877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 千鶴 (荻原千鶴) お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (20109226)
桑原 祐子 奈良学園大学, 情報学部, 教授 (90423243)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 正倉院文書 / 相手に語りかける文章 / 語法 / 用字 / 帳簿 |
Outline of Annual Research Achievements |
正倉院文書には「状・啓、解」という相手に語りかける文章(現代の手紙やメール)が数多く含まれる。それが、同時代の歴史書『古事記』・『日本書紀」、地誌の『風土記』と大きく異なる点である。そうした文書の文章の特性を語法・用語を中心に明らかにした。 具体的には、文書の文末に置かれる助字「者」が相手の注意を喚起する役割を果たしていること、職務上の用件であっても個人に訴えたい時には「啓」の書式を取ること、事務的な用件であっても、相手の心を動かしたい時には直接話法を用い、また手紙によく見える感情の高まりを表す表現を用いることもあった等について考察した。 また、帳簿はその目的に応じて用字に細心の注意を払っている。その具体的な様相を解明した。たとえば、文書のなかで日本語の「はこぶ」は漢字では「運」あるいは「漕」で書き表される。このうち「漕」は水運を表す。 物を運ぶのに陸運と水運とは手段・費用・日数すべてが異なる。帳簿の記載者にはきわめて重要な点である。それ故に、慎重に文字が選ばれることになる。 さらに、上下関係もその言葉遣いに大きく関与している。たとえば、相手側を指す「彼」(そちら)というような言い方は目上の人や組職には使われず、対等か下の相手に使われるものであった。 以上述べてきた事は『古事記』や『日本書紀」・『風土記』等の編纂物だけを見ていたのでは気がつかない言語現象である。そうした意味で、正倉院文書を読み解くことは新しい知見を得る有益な方法である。
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Research Products
(6 results)