2014 Fiscal Year Research-status Report
鈴木朖の養生論における儒学の受容に関する研究と関連著作の注釈書の作成
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26370231
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
趙 菁 金沢大学, 外国語教育研究センター, 准教授 (50345641)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 養生論 / 江戸時代 / 健康 / 自然 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
①「近世の養生論における養生の目的の変遷」をテーマに「“健康”の歴史性:「健康」「衛生」概念の歴史的変遷」研究会・NIHU基幹研究プロジェクト予備研究(地球研)・「エコヘルス」にて発表した。これは本研究の2014年度の研究目的の一つである養生論を支える生活・人間・自然への考え方における貝原益軒と鈴木朖の比較検討を達成するものであった。江戸時代の養生観は、現代までの健康観念の形成に極めて重要な意味を持っていることを改めて確認できた。他の研究者からの指摘及び助言を取り入れ、健康観念の推移における江戸の養生論の位置づけについてまとめている。 ②『養生要論』『続養生要論』の現代語訳・注釈書の作成については、『養生要論』の現代語訳を行った。学会・国際シンポジウムの参加を通して、江戸時代の養生論については、英訳版がある貝原益軒の『養生訓』のみが海外の研究者に知られているが、他の養生論はほとんど知られていない状況である。当初の計画にはなかったが、江戸時代の養生論の実態像・全体像を国際社会においても、その存在と重要性を認識させるために、『養生要論』『続養生要論』の英訳に取り掛かる準備を開始した。 ③シンポジウム「東洋学・アジア研究の新たな振興をめざして」PARTⅡ(東洋学・アジア研究連絡協議会)及びUnsettling Boundaries: Nature, Technology, Art, 2014 International Symposium on Literature and Environment in East Asia等の参加によって江戸時代の養生観と自然観を分析するにあたって、エコクリティシズムによるアプローチが現代の健康と環境の相互関係における江戸の養生論の歴史的重要性を考える上で十分な価値があることを認識し、エコクリティシズムによるアプローチも今後展開するつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は基本的には個人研究として進めているが、学会発表、シンポジウムの参加及び研究者同士の交流を通して外部の評価を受けて常に点検することを留意している。2014年度も日本国内、海外の研究者から得られた批判、アドバイスを参考に、研究の自己点検を行い、必要に応じて軌道修正も行った。従って、本研究の2014年度の研究目的はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度も当初の計画で研究を進行するつもりであるが、2014年度の研究を遂行した上で得られた以下の課題の解決を視野に入れながら研究を展開していくつもりである。
①養生の目的の変遷に関する日中養生論の比較検討②儒教、道教、仏教、神道における養生観の相違に関する詳細な検討③江戸時代の環境変化、環境認識と養生論の関係に関する考察④『養生要論』『続養生要論』の英訳
特に③について2015年度8月からのサバティカル研修期間において環境文学の拠点である米国の大学で、他の研究者との交流を通して、エコクリティシズムによるアプローチを究め、課題の解決にむけて前進するつもりである。
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