2016 Fiscal Year Research-status Report
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26370277
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
今村 隆男 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90193680)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 村落 / 風景 / コテージ / パターン・ブック / ピクチャレスク |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、26年度及び27年度に研究が十分でなかった範囲を研究し、その上で計画通り、19世紀の文献などを対象に研究を進めた。また、夏季長期休暇におよそ3週間の現地調査及び資料収集を行った。詳細は、以下の通りである。 まず、最初の計画に入っていながら最初の2年間に研究できなかった農業報告書を検討した。アーサー・ヤング(A. Young)の『農業年鑑』(1784年~)や農業委員会が出していた『農業委員会通信』(1797年~)には村のあり方に関する農業家が寄せた様々な論考がある。その中で特筆すべきはホランド(H. Holland)の「コテージについて」で、これは要約すれば安さと耐久性のある練り土レンガで二軒一棟住宅を建てることを勧めているが、このように実現可能な節約型の提案でありながら美観をも考慮した主張は1790年代の傾向であることが明らかにできた。この練り土レンガは、19世紀のガンジー(J. Gandy)においては建物の斬新的なデザインにも繋がっていったことも確認した。 また、19世紀の建築のパターン・ブックを検証したところ、そこでも村を構成する建物の質素や快適さと美観の融合を目指すことが大きな流れであることがわかったが、その典型的な例がバーテル(E. Bartell)の『コテージのピクチャレスク改良のためのヒント』(1804)である。さらに1810年以降に書き進められたワーズワス(W. Wordsworth)の『湖水地方案内』でも村の理想像が追求されていたが、この詩人の描く村は、実際的な居住の場としての住居の問題よりも、住人やその共同体の生活や人生を象徴するものとしての視点から専ら捉えられていた。これは、19世紀以降の村のあり方に対する考え方の方向性を示す貴重な資料であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定した研究資料のうち、ロマン派時代の文献に関してはバーテル(E. Bartell)らのパターン・ブックは検証できたが、ロビンソン(P. F. Robinson)など19世紀が進んでからの資料を読むまでには至らなかった。また、19世紀の旅行記の他、ワーズワスのコテージ論を詳細に研究できた。実際的なパターン・ブックや農業書と、文学者の描く理想像との間には共通点が明らかに確認できる一方で、視点の違いは明瞭であり、それぞれが村のあるべき姿を探るのに貢献したと思われる。ただ、コベットやオースティンらの文学作品にまで対象を広げることはできなかった。 長期休暇の時期に行った二度目の現地調査及び資料収集においては、前回に引き続いてBritish Libraryで資料を探したほか、Victoria and Albert MuseumのStudy Rooms(Prints and DrawingsとRIBA Architecture)などにおいても資料収集をすることができた。また、現地調査においては、レプトン(H. Repton)が装飾と実用の融合を目指して実際に建てたコテージや、スコットランドとイングランド南部のエステート・ヴィレッジ(InverarayとMilton Abbas)を訪問し、前者は機能性と古典的様式美を、後者はピクチャレク美をそれぞれ重視した作りになっていることがわかった。また、それぞれの領主が村を新しく創造した事情や現在の使われ方などについての詳細も調査できた。他に、グランド・ツアーでイタリアに行ったイギリス人たちが手本にしたと思われるイタリア中部の計画都市についても調査できた。それ以外は、国内で手に入らない資料の収集に費やした。 以上のように、予定通りには進んでいない部分もあるが、計画にはなかった進展もあり、概ね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終の平成29年度は、4年間の研究計画の総括の年と位置付けている。年度の前半では、まず19世紀以降の資料の分析が不十分な箇所を残したため、その部分を補足する予定である。その上で、ピクチャレスクの時代以前の18世紀半ばまで、及びヴィクトリア時代以降の展開を概観し、近代における村やその背景の変遷の全体の流れを把握できるようにしたい。年度後半は、研究期間中の分析によって得られた成果をまとめることに集中する予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定との差額が生じた原因は、一昨年度から昨年度にかけて予想外の差額が生じたため、次年度使用金によって昨年度の予算額が当初予定よりも多くなってしまったことである。昨年度の研究はほぼ当初予定通りに行われたため、再び残額が生じた。ただし、次年度使用額は一昨年よりも昨年の方が小さくなっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度であるので、当初の計画外の文献の購入が必要になる可能性が大きい。そのため、予算は主として文献資料の購入に当てたいと考えている。
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Research Products
(3 results)