2017 Fiscal Year Annual Research Report
Picturesque in the Development of Modern British Village-scape
Project/Area Number |
26370277
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
今村 隆男 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90193680)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ピクチャレスク / 美学 / 共同体 / 建築 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、18世紀半ばまでと19世紀以降の村やコテージの発展を調べた。村の景観を構成するコテージなどの小規模建築の実際的な歴史的変化について調べてみると、ジョンソン博士の『英語辞典』における「みすぼらしい住まい」というコテージの定義は貧困層の住居を表現したもので、その実態はゴールドスミスらのアンチ・パストラル文学が暴露していた。これらの作品から、18世紀半ばまでの村落の多くの実際の景観がおおむね想像できる。その後、その悲惨な状況を改善しようとする動きがN.ケントらによって始まった。 19世紀にはいると、バーテルが住居の改善を通して全階級の融合をはかることが国の繁栄に繋がるという考えを表明し、住居の改良を社会改革の一環として捉え出す。ガンディーは、教会を中心に円形コテージを八方向に並べた「風の村」のプランを描いているが、この村は無限に拡大しうることが想定されており、理想的コミュニティ、さらには理想国家のミクロコスモスである。これは、プライスが1798年に描いた田園部の理想社会をシステマティックに立案し直したものであるとも言え、近代に一部が実現してゆくユートピアの引き金になったと考えられる。また、ポーコックの小さな村の計画はピクチャレスクの外観にこだわったもので、ピクチャレスク美学が浸透していった様が明瞭に読み取れる。 19世紀以降、村の景観の「ピクチャレスク」さは、古典的理想を継承した定型的発想から抜け出て、その住民の生活と深く関わるものとして捉えられるようになってゆき、コミュニティのあり方をめぐる議論と結びついて、やがてユートピア観やあるべき国家像の追求に発展して行った。「ピクチャレスク」は、風景の内容的側面の持つ、ラスキンの言うところの「モラル」や「崇高さ」と関わることで、本質的に変容していったのであり、その象徴的な例が村や住居の景観だったと考えられる。
|
Research Products
(1 results)