2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Comparative Genealogical Study of Seventeenth-Century Citizen Plays and Apprentice Novels of Eighteenth and Nineteenth Centuries
Project/Area Number |
26370295
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
原 英一 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (40106745)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 徒弟 / 小説 / メロドラマ / ヴィクトリア朝小説 / カズオ・イシグロ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は次の通りである。 イギリス・ルネサンス期「市民劇」と18・19 世紀の「徒弟小説」との相関関係を分析することによって、ヴィクトリア朝小説を新たな観点から捉え直すことを試みる。16 世紀末から17 世紀初頭の「市民劇」は、研究代表者が単著『〈徒弟〉たちのイギリス文学 小説はいかに誕生したか』(2012年、岩波書店刊)で詳細に論じたように、イギリス小説の淵源である。イギリス小説の底流にある演劇的性格は、小説ジャンルの誕生を経て、19 世紀にも受け継がれている。本研究では、「徒弟」を商業資本主義社会に置かれた人間の状況の普遍的なメタファーとして捉えるという視点に立って、ヴィクトリア朝小説が、16 世紀後半以降の商業資本主義システムと個人との葛藤という巨大な潮流の中にあることを検証する。さらに19 世紀のメロドラマ的小説の淵源が17 世紀初頭の市民劇に見られるロマンス性にあることを明らかにする。 本研究の最終年度である平成28年度においては、研究成果を英語により発信することを最も重要な作業とした。その準備段階として、日本語による研究発表と論文執筆を行った。これらは現代の作家であるカズオ・イシグロについてのものであるが、研究の進展の結果の必然的な発展であり帰結である。イシグロは、その小説技法において、ポストモダン的作家であると認知されているが、実際は、18・19世紀のイギリス小説の伝統を最も正統的に継承している。日本英文学会における日本語による発表は、英語による論文とするべく準備を進めているが、研究機関内部の事情により、学内の『比較文化研究所紀要』に日本語論文として掲載した。 本研究においては、その最終的成果を英文による著書としてまとめ、英国または米国の出版社から刊行することを目標としている。平成29年度以降に、その実現のための具体的な作業に入る予定である。
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Research Products
(2 results)